Malagasy Guitar Masters『聖なる木』余談:亀井岳
vol. 31 2018-04-20 0
先日、アオラ・コーポレーションより発売されましたCD、Malagasy Guitar Masters『聖なる木』ですが、実は解説原稿と合わせて、タイトルと曲名の確認をしてほしいと依頼がありました。アオラ・コーポレーションにはフランスの販売元から英語の曲名が届けられていましたが、これがどうも怪しいというのがその理由でした。
マダガスカルではPCは高価なため持っている人は多くありません。さらにネット環境が安定していないので、メールでのやり取りも時間がかかることが多く、連絡を取るのにあまり有効な方法とは言えません。現地の携帯電話はチャージ方式での課金のため、チャージ切れ、バッテリー切れ、電波不良などのハードルはあるにせよ、結局最も確実なのが電話することです。最近ではスマートフォンの普及が拡がってきて、Facebookのメッセンジャーなども有効な方法になりつつあります。
Malagasy Guitar Mastersはマダガスカルを代表する三人のギターリストで構成されるユニット。その中でも交流があるのは『ギターマダガスカル』に出演したテタ。ちょうど一年前にマダガスカルの首都アンタナナリヴで再会し、一緒に食事をして彼のスペクタクル(ライブ)も楽しんだところです。彼とのやりとりはFacebookでのメッセンジャーですが、これもこの一年ぐらい前からで、それまでは全く連絡をつける方法がありませんでした。
というわけで、まずはテタにメッセンジャーで連絡をして見ましたが繋がりません。上記の理由のように、しばらくすればなんとかなると楽観していましたが、その後も全く音沙汰無し。現在マダガスカルに滞在中のプロデューサー文さんに頼んでも打つ手無し。指定された締め切りが迫り、ちょっと焦ってきて、何か手がかりがないかと探した末に、ほかの2人のメンバーであるクリサン・ザマとジョエル・ラベスルをFacebookで見つけました。
何度もコンタクトを試みましたが、まったく返事が来ません。そんな中インターネットで情報をかき集めていると、ようやく彼らの消息が判明しました。なんとこの三人、ちょうどフランスツアー中で、全員まとめてマダガスカルにいなかったのです。彼らの持っている携帯電話はおそらく海外では使えないモデル、これが誰も連絡が取れなかった理由でした。その後、なんとかクリサン・ザマと繋がることができました。
クリサン・ザマは、今回の映画『ヴァタ 箱あるいは体』の舞台に近いチュレアール州のアンタニムラ・スッド出身。出演者の一人であるレマニンジと同じアンタンルイ族の出身です。とても乾燥した厳しい自然環境の地ですが、彼の音楽からは、その誠実な人柄からくる正調な品格と、伝統をベースとした豊かな彩りを感じます。実はすでに一枚ソロアルバムがありますので紹介しておきます。この中にはMalagasy Guitar Masters『聖なる木』にも収録されている“Sarombaho”という曲が収録されており、“秘密の恋”と訳したこの曲、彼の代表曲ですので、是非とも聴いてみてください。
http://elsurrecords.com/2015/07/09/chrysanto-zama-...
さて、クリサンと連絡が取れて、件のタイトルと曲名の確認ですが、自分の曲しか本当の意味は分からないとのことでした。ただ、タイトルの『聖なる木』(原題:Volo Hazo)はしっかりと意味を聞いたので、この静かな追跡劇も意義があったと思います。