マダガスカルから帰国して・2 / 現地録音CDの編集:高橋琢哉
vol. 21 2017-09-23 0
9月も後半に近づいた今になってやっと、マダガスカル滞在中に、定点と長回しを基本に録音してきた音源群を聴き返しては並べ替えてみたりしながら、なにかが頭の中で整理されるのを待ってみたり、気分や印象が様々に入れ替わるのを観察したりしています。
記録されている音は、
深夜の凄まじい蛙たちの声(前に書きましたね)
くり貫き船ラカナで川を渡る間の水の音
朝の市場の騒がしさ
日の出前から夜明けの鳥が鳴くようになるまでの変遷
スタッフたちとの食事のときに録音スイッチを入れたままほったらからしにしておいたもの
夕食を終えたミュージシャンたちの息抜きのセッション
ライブシーンの演出とリハーサル
日曜日のカーラジオから聞こえたスプリングリバーブが深々とかかった賛美歌
午後ののんびりした集落での子供たちの声と杵を突く音
ゼブ牛たちの延々と続くような足音
などなどなど。それぞれ5分や10分(か、もっと)くらいの長さ。録ってるときに、十分かな、と思っても意識的にできるだけ長めに録音しました。自分の感覚がいつも信用できるわけではないですからね。
なんとなく珍しいような面白いような音をカタログ的に集めるのではなく、マダガスカルでの我々の現場にあった温度や匂いが伝わるような音の在り方をディレクションしようとして、勢い余って監督たちとのミーティングやトラブル対処中の声や、ひどい悪路を移動中にラジオに合わせて合唱する出演者たちの歌などまで記録したり(まあガッタガタですが)。これらのいくつかは映画の中でコラージュしたり、シーンに当てたりするための素材として。一部は、クラウドファウンディングに参加してくれた人たちへの返礼(…なんて言ってますが映画と平行してこういう音源作品をどっちみち作りたかったのです)の、ぼくの企画ディレクションによる現地録音CDのためです。
このCD、非売品のリターン用ですが、応援してくれる人たちにだけ渡る作品、というのも良いものだな、と。作る方も嬉しくなります。
そういえば、今年の初めだったでしょうか。この映画の音楽監督・作曲家としてオファーをもらったときに、亀井監督から「自然音は音楽のように聞こえてほしい、音楽は自然音のように聞こえてほしい」というサウンドイメージを伝えられました。これを聞いて亀井さんがどんな映画を作りたいのか、なぜ音楽監督としてぼくを誘ってくれたのか、そしてマダガスカルでの撮影にも一緒に来て欲しいと言う意味などが一気に了解されたことを思い出しました。
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写真は録音した場所やシチュエーションを記録したiPhoneメモ。8/2の記録ですね。豪雨に悩まされてはいたものの、その後の苦難をまだ知らない時です 笑