6/26 映画『Catch Me if You Can』レビュー
vol. 10 2020-06-26 0
『Catch Me if You Can』(2002)
監督:スティーヴン・スピルバーグ 脚本:ジェフ・ナサンソン
あらすじ
社長の息子として裕福な家に育ったフランクだったが、父親に脱税の疑惑がかけられ暮らしは徐々に転落していく。そんな生活に嫌気がさしたのか、母親は他の男に心移りしてしまい、両親は離婚することとなった。唐突にどちらの親についていくか決断を求められたフランクは家を飛び出してしまう。
とはいえ、まだ16歳のフランクがまともに食っていけるはずもなく、小切手を偽造する詐欺を繰り返すようになった。FBI捜査官のカールはそんなフランクの犯行に目を付け、逮捕に向けて追跡を始める。
パイロット、医者、検事と巧みにその身分を変えて捜査の目をかいくぐるフランクと、逆境に負けず絶対に逮捕を諦めないカール。それぞれの悲喜こもごもと、追いかけっこの中で芽生える二人の独特な情を描く、実話を元にした物語。
正直者がバカをみる、といえばかわいそうにも思えるが、バカ正直は損をすると言ってしまえば自業自得の様な気もする。かくいう自分もバカ正直の部類である。
バイト等の面接で不利になるようなことをわざわざ正直に申告する。とりあえず働いてみて都合が悪くなったらとんでしまえばいい、というようなことが出来ないのだ。不採用になったら元も子もないのに。いい加減なことを言っていい加減に働きいい加減で辞めていく他のバイトが、憎いというより羨ましかった。
人との会話でも、ふられた話に愚直に答えることしか頭にない。もっと自分の発言に無責任になって、時には大げさに、瞬発力よく話すことができれば人と接するのも楽しいだろう。そもそも何に対する責任なのか。
詐欺師がすっかり様になったフランクは、金も女も名声もたやすく手に入れてしまう。器用なイケメン、完全無欠である。そのフランクを追うのが、我らが代表バカ正直な捜査官のカールだ。真面目を馬鹿にされたカールが意地で放つジョークは呆れたものである。観客からすればそんなカールよりも、主人公であり同情すべき境遇の嘘つきに肩入れするのは自然だ。
ところが物語がすすむにつれて、フランクに逃げ切ってほしいという思いと、カールに見事逮捕してほしいという思いがせめぎあってくる。次第に嘘つきの弱さ、バカ正直の尊さが目に見えてくる。そうして物語は納得の結末を迎えるのだ。
思うに、バカ正直には遅れて得がやってくる。損するだけじゃないはずだ。バイト先で一番の信頼を得て、おかしいくらい優遇されていたのは当のバカ正直であったように思う。要領がいいやつにはそれなりの、バカ正直にもそれなりの対価はあるのだ。ないものねだりはほどほどにしとこ。
髙野亮太郎