なぜ、今、世界に和太鼓を広めなければならないのか?
vol. 4 2016-05-18 0
なぜ、今、世界に和太鼓を広めなければならないのか?
もうすでに、「WADAIKO」は広まっており、世界中の人を喜ばせているではないか?
そのような疑問を持たれるかもしれません。
この点について、数回に分けて、少し詳しく書かせて頂こうと思います。
このプロジェクトを立ち上げたきっかけは、二つあります。
一つ目のきっかけ
2011年から3年かけて、東日本大震災被災地(岩手、宮城、福島の三県)で
「祈りの太鼓」を捧げる「不二プロジェクト」を行ったことが一つ目のきっかけです。
「祈りは、響く」というテーマの元におこなった、このプロジェクトを進めていく日々で、
たくさんの現地の方と交流しました。
「明日から頑張れます」
「さまよっていた霊が天に昇るのが見えた」など、
地元の方々に、さまざまなご感想を頂きました。
私はそこで、「和太鼓の響きが、人々の力になる」ということを、強く確信したのです。
特に私の心に残っているのは、福島公演での初老の女性の言葉です。
「公演よかったよ・・・・ 震災で息子を亡くしてね・・・ 」
「・・・・祈ってくれてありがとう。」
と、声を掛けて下さいました。
この時、私は、ハッとしました。
彼女は、これまで息子さんを亡くした悲しみを、同様の思いをしている周囲を気にして、
口に出せなかったのかもしれない。
しかし、和太鼓の響きによって、この女性の〝なにか〟が、動いたのだ、と。
和太鼓の響きは、目に見えません。
しかし、この響きには、「見えるものと、見えないものを、交感させる力」があります。
つまり、和太鼓の響きは、本当の意味での「祈り」そのものなのであり、
その力が、「人間の〝魂〟を呼び覚ます」のだと、
この「不二プロジェクト」をおこなったことで、こころの底から分かったのです。
二つ目のきっかけ
「響くことが生きること/Hibiki: The Sound of Life」という題で、スピーチ番組「TEDx」に、
昨年の2015年11月、登壇したことが二つ目のきっかけです。
和太鼓は、打ち手や年月、温度や湿度、その他、周囲のあらゆるものによって、
絶え間なく響きを変化させる、「生きた楽器」です。
そして、つい忘れてしまいがちですが、
私たちも同じように、常にこの世界すべてと響き合っているのです。
その響きは「留まることなく流れ変化する、私たちの“生”」そのものです。
大自然、大宇宙。
見える世界、そして、見えない世界。
その響きは「根源の場」、「いのちの満ちあふれる場」へと、私たちを誘います。
私は、和太鼓に向かう時、いつも自分の全部を投げだします。
それは、和太鼓の響きが、日々、凝り固まっていく“自分”の枠を取り払い、この世界を、
より活き活きと感じさせてくれるからです。
和太鼓の響きは、より大きな世界へと魂を誘いながら、枠を打ち破り、切り拓いていく力を持っているのです。
いい知れない“不安感”に覆われている、“いま”という時代に、
「“生” そのものである和太鼓の響きは、未来を変革する一つの大きな希望になりうる。」
以上の骨子で、「TEDx ShinshuUniversity」にて、世界に発信しました。
・・・次回のアップデートに続きます。