【取材報告】TURNフェス5
vol. 22 2019-08-30 0
【取材報告】カテゴリでは、アートプロジェクトラボのメンバーが取材・参加したアートプロジェクト・イベントの様子をクラウドファンディングや本の制作とは直接関係がないものも含めて、ご紹介していきます。
“違い”を超えた出会いで表現を生み出すアートプロジェクト「TURN」の参加アーティスト、福祉施設などが集結し、その世界観を体験できるイベント「TURNフェス5」に参加してきました。
TURNフェス5ーPathways 身のゆくみち
会期:2019年8月16日(金)~18日(日)、20日(火)
会場:東京都美術館 第1・第2公募展示室(東京都台東区上野公園8-36)
https://turn-project.com/timeline/event/5610
TURNは、東京2020オリンピック・パラリンピックの文化プログラムを先導する東京都のリーディングプロジェクトのひとつとして2015年に始動。アーティストが、福祉施設や社会的支援を必要とする人のコミュニティへ赴き、出会いと共働活動を重ねる「TURN交流プログラム」などを継続的に展開しています。
会場では、展示・ワークショップなどいつでも体験できるものだけでなく、日替わりでトークやパフォーマンスなどが同時多発的に行われていました。
会場に着くと、サポーターの方がすぐに声をかけてくださり、私が事前にチェックしていた岩田とも子さんが参加するトークプログラムが行われる場所まで案内してくださいました。
TURNには、障害のある方、高齢者などが通う福祉施設なども多く参加していますので、来場者も多様です。手話通訳・文字支援等のアクセシビリティサービスもうたわれていますが、来場者が会場でどのような時間を過ごしたいのか、困っていることはないか、それにシンプルに応えようとするホスピタリティを感じることができました。
TURNとBIENALSUR~人とみちの巡り会い~
登壇者:岩田とも子(アーティスト)、布下翔碁(工芸作家)
司会:日比野克彦(TURN監修者)
私が参加したトークは、国際南米現代芸術ビエンナーレ「BIENALSUR(ビエンナーレスール)」にTURNから参加したアーティスト・岩田とも子(2017年)、布下翔碁(2019年)の活動を紹介するという内容でした。
岩田さんは、アルゼンチンのブエノスアイレスにある知的障害を持つ人たちを対象にした「カミノス」に2週間滞在。日本の文化を携えて交流するというプログラムの方向性があるなかで、伝統的な礼法「折形(おりかた)」の折る、包むという行為に注目。施設や周辺に落ちている小さなものを採集して、集めたものを丁寧に包むという作法を通じて交流したそうです。
施設の方が、自分が自然観察や採集が好きだという情報を知ってくれていて「ここを普段歩いている山のような場所だと思って過ごしてください」と迎え入れてくれたことが嬉しかったこと。スペイン語が喋れないけど、施設にいる方もそれぞれに障害を持っていたりするので、自分はただ言葉が喋れないだけの人、という感じで言語に頼らないコミュニケーションができたのがよかったこと、など岩田さんは滞在時の感想をお話ししていました。
展示会場には、2年前の滞在の後も何かしらの形で交流を続けたいというスタッフや利用者の間でその象徴となった「俳句」に関するテキストと映像も見ることができました。
また、別の空間では「意識の散歩」と題したワークショップも実施。今年から交流しているという特別養護老人ホーム「グランアークみづほ」で実施したものが元になっているそうです。
岩田とも子 「意識の散歩」手に入れたくしゃくしゃの地図の上
白い紙をくしゃくしゃにして広げたものを地面・地形に見立てて、ペンで自分の歩く道を破線で記していくというもの。スタッフの方のサポートに従い1枚の紙にペンを走らせていくと、目の前に山があるような空間の広がりを感じることができたのが不思議でした。せっかちなので数十秒で書き終えてしまいましたが、「歩くのに何分くらいかかりましたか?」と聞かれると時間の感覚もずれていくようで、面白い体験でした。
布下さんも、アルゼンチンの北部「キルメス」地区での体験をトーク。その報告展示も見ることができました。キルメスは先住民が迫害されたり、そうした人たちが移住を強いられたりした歴史があるそうです。その記憶や先住民の魂を辿るように道中で土を採集。それを用いた土で陶芸のワークショプを行なったそうです。
会場では他にも、TURNが普段交流している施設の様子をそのまま会場に持ち込んだかのような「出張TURN LAND」コーナーがあったり、板橋区立小茂根福祉園で大西健太郎らが取り組む『「お」ダンス』のパフォーマンスなどを見ることができました。
出張TURN LAND(クラフト工房La Mano)
「お」ダンス
EDIT LOCAL LABORATORY 橋本誠
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