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英国の作曲家ディーリアスの晩年を愛弟子フェンビーが描いた伝記の翻訳出版をクラウドファンディングで実現!

英国の作曲家ディーリアスの晩年を描いた伝記の日本初の翻訳出版&ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会を成功させたい!

英国の作曲家ディーリアスの晩年を愛弟子フェンビーが描いた伝記が、ロンドン在住のヴァイオリニスト小町碧を中心とした万全の態勢でついに翻訳出版されます。記念リサイタルなども含めた「ディーリアス・プロジェクト」をご支援下さい!

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このプロジェクトは、2017年9月25日23:59に終了しました。

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PRESENTER
林田 直樹

音楽ジャーナリスト・評論家 1963年埼玉県生まれ。「音楽の友」「レコード芸術」編集部を経て独立。オペラ、バレエ、古楽、現代音楽、クロスオーバーなど自在な著述活動を行う。著書「クラシック新定番100人100曲」(アスキー新書)、「ルネ・マルタン プロデュースの極意」(アルテスパブリッシング)他。インターネットラジオ「OTTAVA」プレゼンター、「カフェフィガロ」パーソナリティ。月刊「婦人画報」他に連載中。音楽之友社・社外メディア・コーディネーター。

小町碧×林田直樹×オヤマダアツシ 「真実のディーリアスを語る」最終回を公開!

vol. 17 2017-12-07 0

※Part5からの続き

●ディーリアスとニーチェ

林田 それと二つ目のご質問で、《高い丘の歌》の話をされましたよね。それでひとつ思うのは、この本の中にも、映画の中にも出てくるエピソードなんですけれども、ディーリアスがパーシー・グレインジャー[1882-1961。オーストラリア生まれのピアニスト、作曲家]たちに車椅子のまんま担架で山の上まで運んでもらって、日が沈む前の最後の輝きを自分の網膜に焼き付けようとするとても印象的なシーンがありましたよね。《高い丘の歌》を聴くと、ぼくはあれをいつも思い出すんですね。ディーリアスにとって、山の頂に太陽が沈むときに見せる最後の輝きというものが、そんなにもだいじだったという。この『フレデリック・ディーリアスの音楽』というCDのジャケットも、ちょっとそういうイメージがありますけれど、やはり自然の中で太陽が沈んでゆく瞬間に、なにか大きな光であるとか宇宙自然の営みの中に自分を感じるというか、何か自然に包まれるというか、そういう体験がディーリアスにとって重要だったんだろうと思うんです。それを支えているのは、たぶんニーチェの永劫回帰という考え方だろうとぼくは思っています。ニーチェは、ある岩の前に立ったときに永劫回帰という哲学、考え方に打たれるわけです。自然の中にいるということと、その時その場で体験することがすごくだいじだということとつながっていると思うんですけど、ぼくはディーリアスの音楽はニーチェの哲学とすごく深くかかわっているものとして聴いてしまうんですが、そのなかでもいちばん重要な作品のひとつが《高い丘の歌》なんじゃないかなと考えてます。

オヤマダ 《高い丘の歌》のほかにも声楽付きのオーケストラの曲がたくさんありますけども、聴き終えると何かそこにはまり込んでしまう……落とし穴じゃないですけど、そういうところがあるなと思っていて。でもたしかに、その永劫回帰という考え方は、もしかすると日本人にはわかりやすいかもしれないですよね。禅的な考え方かもしれないし、はかなさへの憧れがあるのかもしれませんし、マーラーなどとはちょっと違った捉え方なのかもしれません

林田 まあ、マーラーもニーチェのテクストで書いてますし、リヒャルト・シュトラウスも書いてますけれど、やはりニーチェの圧倒的な影響っていうのは当時の音楽のさまざまなところに出てるんだろうと思います。

オヤマダ きっとね。

林田 ニーチェの思想を、たぶんリヒャルト・シュトラウスよりもはるかにはるかに真剣に、全身で受け止めたのが、ディーリアスだろうとぼくは思ってるんです。ニーチェという人は「神は死んだ」と言っているわけですけど、ディーリアスはあるときからニーチェにすごく心酔した方なんですね。ある種の生の輝かしさとか、儚さであるとか、それから俗っぽいものに対する嫌悪感──もっと高みに、もっとノーブルでありたいという──、そういう点で自分に大きなエネルギーを与えてくれるのがニーチェなんですけれども、ぼくはニーチェつながりでディーリアスにもすごく関心をもっていたんです。ディーリアスの音楽の優しさや柔らかさやまぶしさや哀しさ、そういうものってどれもやはり少しニーチェの哲学の香りがするんですよ、ぼくには。《高い丘の歌》はとくにそういう感じが、イメージとしてあります。

オヤマダ あと、《高い丘の歌》についてぼくから言えることは、今回のCDに入れてなくてごめんなさいねっていうことですね(笑)。あれ長いから、30分──CDの半分いっちゃうんですよ。

林田 ビーチャムの演奏すごく良いんですよ、あれ。まあ、ナクソスでも──

オヤマダ 聴けます、ちゃんと。


●死にものぐるいになること、後世のために種まきをすること

── 《コアンガ》[1897年作曲のオペラ]について訊きたいんですけど、《コアンガ》は「ラ・カリンダ」しかたぶん演奏されませんよね?

オヤマダ そうでしょうね、きっとね。

── 結婚式のシーンということだけしか知らないんですけど、イギリスではオペラ全曲が上演されたりすることはあるんでしょうか。

小町 まだ過去に数回しか、指で数えるくらいしか上演されてないんですけれども、でも数カ月前に、ロンドンのカドガン・ホールという中心部にある人気のホールで、コンサート形式で《コアンガ》が演奏されました。その前は2015年、アイルランドのナショナル・オペラ・ハウスでも上演されてるそうなんですけれども、でもそれもほんとにめずらしいことで、ディーリアス協会からわざわざアイルランドへツアーを組んで行くという企画もあったりして。やはりすごくまれなことだと思います。

── 上演しにくいところがあったりするのですか?

小町 やはり、出てくる登場人物が黒人ということもあって、出演者を集めるのもけっこうたいへんなんじゃないかなと思っています。あとは音楽的にもやはり、演奏家にとってむずかしい部分もあると思います。でも、このオペラももっと演奏されるべきだと思っているので、今後も日本でも機会があればいいなと思いますけれども。

── 日本では「ラ・カリンダ」はとっても人気があって、幼稚園で流したら子どもたちが「この曲好き」って言うという話を聞いたことがあるんですね。もっとアマチュアでも演奏する機会があったらいいなと思うんですけれど。

オヤマダ 話じたいはひじょうにわかりやすい話なんですよね。ディーリアスの楽園讃歌というか、それこそゴーギャンの絵かなんかを背景にしてやってもいいくらいの話だと思うんですが、やはり熱意だと思うんですよ、やる人たちの。誰かが何かを動かして、みんなを説得するのにはひじょうにすごいエネルギーが必要だと思うんですけど、だからそのたとえば新国立劇場なんかで、《ピーター・グライムズ》[1945。ブリテン作曲のオペラ]をやれたのはやはり尾高忠明さんの熱意があったのだと思いますし、そういうキーパーソンが、これやりましょうと声を上げることがいちばんだと思うんですけど。

林田 やはり誰かが死にもの狂いになることだと思うんですよ。やりたいなあ、では実現しなくて、必死になることが必要。今回、『ソング・オブ・サマー』という本が出たことは、いまでも奇跡だと思っているんです。出版界の常識からすれば、ぜったいに出るはずのない本が出たわけで、もちろんそれに賛同してくださった方がたくさんいらっしゃって、なんといってもアルテスの木村さんが出したいという気持ちを強く持ってくださったからなんですけど、企画を通すこともそれからクラウドファンディングでお金を集めることも、必死にやらなければぼくはぜったいに成就しないと思ってるんです。必死じゃないプロジェクトは共感を集めることもできないし、お金も集まらない。どれだけ必死になるかにクラウドファンディングって完全にかかってるんですね。《コアンガ》がやれるかどうか、《村のロメオとジュリエット》ができるかどうかも、けっきょく誰かが死に物狂いでやりたいと思って、じっさい行動しないことには、実現しないだろうと思う。これはおそらく他の作曲家、それから他のあらゆることについてもぼくは言えるんじゃないかと。少数派の音楽が、こうやってひとつの大きな結果を残せたっていうことは、それはまず第一に小町さんが動いてくださったということが大きいんですけれど、それ以外にもやはりその必死であるっていうことがですね、連鎖反応を起こしたということなんじゃないかなと。ぼく自身、原稿としては今回帯に2行書いただけなんですけど、クラウドファンディング・サイトの文章を何回も更新したり……あと、いまだから言っていいと思うんですけど、じつは帯はケイト・ブッシュに書いてもらおうと思ったんです。今回けっきょく実現しませんでしたが。ケイト・ブッシュは昔、「ディーリアス」って曲を歌っていましたから、彼女が推薦文を書いてくれたらなと思って、じっさいぼくが原稿依頼状書いて、小町さんも動いてくださって、ケイト・ブッシュはたぶんぼくの文章を読んでくれているはずなんですけど、そんなことも含めてかなりいろいろ必死になったんですよね。少数派の音楽が何か脚光をあびるというか、なにかことを起こすためには、やはりそういうことがだいじなことなんじゃないかなと思います。

オヤマダ 誰もが信頼する、しかもお金を持ってこられるカリスマ的なミュージシャンがやるといえば動くところもある。これ、笑い話になってしまうけど、サイモン・ラトルがもし「ベルリン・フィルを辞めたから新国立劇場に客演するよ。でもディーリアスの《コアンガ》をやらせてね」って言ってきたとしたら、実現するんだろうか(笑)。でもおそらくマーラーの交響曲なども、最初はそうしたカリスマ性のある使徒的な指揮者が、いろんなところでマーラー、マーラーって騒いで、そのおかげでマーラーはいまみたいに聴かれるようになったということがあると思うんです。ディーリアスだってビーチャムという人がいなかったら、もしかするとここまでやれなかったかもしれない。そういう人を日本から作るっていうことが、長い命題というかね。だからぼくは、こういうの全部種まきだと思ってます。この本を読んだ音楽学を勉強している学生さんなどが、「こんな面白い作曲家いるんだ」と思ってくれて、イギリスに留学をして、大英図書館なんかに入り浸って、本を書いて──ということを期待したいですし、その人と同じ学校で勉強していた指揮者や演奏家がタッグを組んでディーリアスを積極的に紹介してくれるとか……そういうふうに広がっていって何十年後かでもいいから実を結ぶことを夢見ていますね。

林田 本が素晴らしいと思うのは、それから録音制作物が素晴らしいと思うのは、われわれが死んだあとも残るってことなんですよね。さっき必死って言ったんですけれど、必死にこの音楽すごく良いからって思って行動を起こすじゃないですか。それがこの本なり、録音制作物なりに固定されるわけですよ、必死な思いが。でも自分の体の中では必死な思いっていうのはだんだんだんだん肉体が衰えるとともにやがては消えてしまうわけです。でも、すごく必死だったときの気持ちがここに固定されているから、50年後にその必死な気持ちが残ったまま誰か別な人を動かすことができる。それが出版なりレコード会社の仕事なりの素晴らしいところだと思うんですよ。

オヤマダ 本やCDが出たら、ぼくらの手は離れるわけじゃないですか。そこから栄養をため込んで、少しずつ増殖させていくのは、やはりみなさんなんですよ。ここに集まって質問をいただいた方々は、ディーリアスたくさん聴いてらっしゃるんだなって伝わってくるし、そういう方たちがたとえばブログで何か書くとか、ラジオにリクエストを送るとか、ひじょうに古典的な話なんだけども、そういうことによって知らない人が知ることができる。おそらくみなさん、ここにいらっしゃった時点で、共犯者です(笑)。ですから、よろしくお願いしますね!

(構成:アルテスパブリッシング)

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    • 本「ソング・オブ・サマー~真実のディーリアス」(予価2200円)を1冊プレゼント
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