デコ屋台デザイン会議編
vol. 5 2015-12-04 0
デコ屋台をどんなデザインにするのか。
設計担当の佐野文彦さんと装飾担当の高橋理子さんとの打ち合わせで、まずそれぞれの考えるデコ屋台のイメージについてお聞きしました。
佐野さんは「デコ」の現代的解釈。高橋さんは「デコトラ」の存在意義について考えたとのこと。打ち合わせでは、日本の装飾について、あらためて話す時間となりました。
佐野「プロポーションがとても大切だと思うんだよね。デコっていったときにそのままデコトラや日光東照宮のような意匠を持ってくるのか、そのメタ的なことを考えるのか、どちらかかなと」
そうやって見せてくれたのがこちらのデザイン。
佐野「小さな提灯が屋根の中にずらっと並んでいて、ねぶたのような感じかな。光源をどう見せるかも重要だなと思って。全体が光っていながら、中に納まっている提灯自体にもいろいろな色がついていたらデコになるのかなと」
佐野さんの案を受けて、高橋さんが提案してくれたのがこちら。
(一同笑)
高橋「絵のクォリティは無視していただいて…。佐野君が光源について気にしていたので、屋根が半透明で、内側にネオン管で文字を入れるアイデアです。佐野君の数寄屋大工の技術を活かして木造で、木の質感を見せつつ、ネオン管でポップさを加える。白熱球で温かみを出して、提灯を加えれば、一般的な屋台のイメージに近付けるのはそんなに難しくないですよね」
「あと、実は最初に考えた案があるんだけれど、それは違うかなと思って」
そういって高橋さんが見せてくれたたのがこちら。
(一同驚)
これは宮大工さんにお願いしないといけないですね。
高橋「佐野君ならできると思って。電飾のカラーバリエーションはたくさん考えていたんだけれど、色合いが統一されていて、これが一番シックかもしれない」
佐野「これは、さすがにこの予算ではできないかなー。予算削減しつつも、デコトラのメタルパーツ感を出すのに、あえてチープな使い捨てのステンレス風の皿をたくさんつかって装飾するのも面白いかも」
高橋「日光東照宮のような装飾過多な感じが、私のデコトラのイメージなんですよね。シンプルですっきりした雰囲気とはかけ離れた、今の感覚からいうと少し野暮ったいというか。やりすぎというくらいやりきっていると、それはそれでかっこいいんですよね」
佐野「日光東照宮もそうだけど、お寺とかみたいに屋根のボリュームがあるほうがいいですよね。一般的な屋台みたいに薄い屋根ではデコ感を感じにくい気がするし」
あとは、クラウドファンディングで資金提供していただいた方に、参加していただける部分があると良いですよね。
高橋「タイのお寺で、仏像に金箔を貼っているのを見たことがあるんですが、ご利益があるとか。日本でも同じことをやっているお寺があるけれど、ほかに、絵馬がたくさんかかっている感じとか、おみくじがたくさん結ばれている木の感じはどう? 参加型で装飾性が少しずつ高まっていくのは面白いかもしれない。 名前を書いたお札のようなシールをどんどん貼っていくのもいいかもしれないですね」
「そういう参加型の部分はつくりましょう。変化していくのは、人の関わりの痕跡だし、みんなが愛着を持つきっかけになりそう」
そもそも、デコトラも屋台も、日本の文化であるような気がしますが、その辺りは意識してますか?
高橋「日本生まれ日本育ちで特殊な家庭環境でなければ、意識しなくても日本らしさは自然とにじみ出るはず。でも、今の日本では、一生懸命『和風』を表現しようとしたり、日本の伝統とか手仕事がブームみたいになって、凄く不自然に感じる。日本人であることをを自分で自分にすりこまないと、アイデンティティーが認識しづらくなっているんじゃないかなと思う」
自分ですりこむ?
高橋「海外ではあまりない状況かもしれない。例えば、フランス人のデザイナーがフランス風のデザインにしてみましたっていうのはあまり聞かないかな。昔の文化や感性を踏襲してっていうのはあると思うけど。つまり、和風っていうのも過去の日本ってことなんですよね。今ではない、昔の日本の感性」
昔の日本といえば、伝統技術にも装飾的なものがたくさんあって、そこにはいろんな意味があると思うんですけれど、なぜ人は装飾するんでしょう。
高橋「わたしは自分のことはあんまり装飾しないかな。柄の服はほとんど着ないし」
佐野「今日のシャツとか、同じ服が30枚づつあったら、毎日それでいいかなと思う」
高橋「スティーブ・ジョブズファッションね。わたしもそう思う。わたし自身は、実は目立つのが嫌いだから地味。作品とは真逆だから驚かれるけれど。着飾る人、つまり自分を装飾する人にはそれぞれの理由があるし、みんなで自分のデコについて考えるのも面白そう」
例えばどんな理由?
高橋「ある人は、人を遠ざけたいが為に過剰に着飾ってる。またある人は、相手に何だろう?と思わせて、縁をつかむ話していました」
装飾は人との距離感にも影響を与えるんですね。今回のデコ屋台も、何か行動につながるきっかけを生むのではないかと思うんですが。
高橋「わたしが装飾と聞いて、一番最初に思い浮かべるのは花。自分の花粉を運んでもらうために色鮮やかに咲いて、目立つ姿をしているんですよね。表面的には、キレイとかカワイイという言葉で終ってしまうようなことにも、実は本質的なものが隠れている。デコ屋台も、その外見とは裏腹に、屋台に座った人たちの中ではシリアスで深いトークが繰り広げられるような、そんな状況がつくれたら良いですね」
そうですね。デコがきっかけで、人が集まったり、物事を発信したり。ここにいろんなものが出入りするような、いつも動きがある感じが、屋台らしいし、装飾が成せる技かなと思います。