ラップによる〈塀の中と外〉の授業
vol. 20 2025-11-23 0
クラウド終了まで1週間を切りました。すでに120%を突破!みなさん、ありがとうございます!いよいよ第2ゴール(1300万円)に近づいています。
今回は、ラッパーのFUNIさんに依頼した〈塀の中と外〉の授業についてシェアします。
ある少年院でのワークショップ中に、こんなことがありました。翌朝、少年たちのラップを収録する予定だったので、リリックを書いてくることを課題に出したのです。日が明けて、短編小説のような長いリリックを書いてきた少年、何度も書き直してぐしゃぐしゃになった紙を握りしめてきた少年、どうしたら思いを言葉で伝えられるのかとFUNIさんにぶつけてくる少年......。収録した彼らの歌は、いずれも熱く、魂にうったえかけてくるものでした。
終了後、法務教官の一人が興奮気味に、私たちに語りかけてきました。「リリックを書く紙が足りない」「もっと紙をください」と要求してくる少年たちの様子を。少年院では日々、日記や作文を書かせるけれど、そんな様子をいまだかつて見たことがないと。
それから数年経った先日、私は非常勤先の大学の授業(人権をめぐる社会学で、移民・難民についての回)にも、ラッパーをゲストで迎えることにしました。今回の映画にも登場するFUNIさんです。50人近い受講生がいるのでワークショップは断念し、ラップによる講義です。正直、大学生には受けないかも、と不安を抱きつつだったのですが......
「今日はラッパーがゲストです」とアナウンスしたとたん、教室の最後部列にはりつき、けだるそうに携帯を覗き込んでいたり、おしゃべりしたりしていた女子軍団が、一斉に顔をこちらに向けました。「ラップ好き!」「ちゃんみな好き!」と満面の笑顔で声をあげ、身を乗り出して授業に没頭しているではありませんか!いつもは堂々と机につっぷして寝てしまう男子学生らも、口をぽかんと開けて、FUNIさんによる「ラップ講義(1時間、ほぼ歌で講義!)」に聞き入っています。やがて教室に、イェーイ!の声が響き渡り、大興奮。
ニューカマーのお母さんと、在日コリアンであるお父さんから生まれた「2.5世」と自分を名乗っいるFUNIさんは、この日、アイデンティティをめぐる葛藤、在日に対する差別と偏見などから、関東大震災での虐殺、国際結婚をめぐる差別、投票権の問題、ガザでの虐殺に至るまでをラップに乗せて、学生たちに語ってくれました。20分程度の質疑応答では、外国にルーツを持つ学生たちが真っ先に手をあげ、気持ちを高ぶらせて語りました。オンラインで募った授業に対するコメントは、締め切りまで1週間もあるのに講義直後からどんどん寄せられてきて、その熱量に圧倒されました。
大学の教室でも、少年院と同じことが起こったわけです。私にとってはちょっとした驚きと発見でした。改めて、相手の「言語」を見つけ、アクセスしていくことの大切さを、実感する機会となりました。そして、若い人にこの映画を見てもらうためにどうしたらいいかを、改めて考えさせられています。
11/28の最終日まで残り数日となりました。第2ゴール(1300万円)の到達を目指して奮闘中です。コレクターを迷っている方は、ぜひ、この機会に。すでにコレクターの皆様は、情報拡散や口コミにご協力くださると嬉しいです。最後まで、どうぞよろしくお願いします!
(c)Kaori Sakagami
坂上 香 監督/プロデューサー
- 前の記事へ
- 次の記事へ
