【3月】月次報告 | しんちゃん、ぶんじ寮で1ヶ月暮らしてみて、いかがでしたか?
vol. 23 2021-04-05 0
ぶんじ寮のゲストルームに2月中旬から約1ヶ月間滞在した「しんちゃん」こと、家庭医の進谷憲亮さんにお話を伺いました! しんちゃん、ぶんじ寮で1ヶ月暮らしてみて、いかがでしたか?
■進谷憲亮さん
NPO法人地域医療連携団体Needs. 代表理事 家庭医、総合診療医/にしこく編集室 病院での診療を通して「病院の中で患者さんとしての一面だけを診ていても、その人に十分な医療を提供することはできない」という思いを抱くようになり、武蔵国分寺公園クリニックの家庭医に。人の生活者としての一面に寄り添い、地域で暮らす人の困りごとに対して何ができるかを、人とのフラットな交流と地域活動を通して模索している。地元貢献のため2021年3月から福岡へ拠点を移す。 |
.........................................................................
- 皆でおしゃべりしていると、何かが始まる
- ありのままで生活していることの価値
- 外に出て行こう
- 長期滞在、おすすめです
.........................................................................
皆でおしゃべりしていると、何かが始まる
(しんちゃん)
今朝は6時半から、皆で朝ごはんを頂きながら、8時半くらいまでわーっと色々な話をしていたんです。終わって、あと1時間後にこの取材で。「ああ、今来てくれれば! これを記事にしてくれればいいのに! 」ってみんなと言って。
(ぶんじ寮)
取材時間の設定を間違えましたね、大変失礼しました。笑
(しんちゃん)
毎回そんな感じなんですよ。僕いつでも食堂にいて、だいたいみんなでしゃべっている。
今週末もイベントがあるのだけれど、だいたい、会って話していたら一つ企画が生まれる。それ面白いね、じゃあ次この件のミーティングしようか、という感じに進んでイベントになっていってますね。
先日、胡桃堂喫茶店のすずきひろきくんが焙煎しているのを見て、僕も焙煎やりたいです! って。そうしたらひろきくんが、 焙煎した人の名前を銘柄にして出したら面白いね、と言って。どこ産じゃなくて、誰が焙煎したっていうので並べようと。今度焙煎して、屋台で行商することになりました。
ぶんじ寮を知ってもらうには外にいこう!という会話から、屋台を引いて行商をすることにした寮の仲間たちと。コーヒーを焙煎し、焙煎した人の名前を商品名に。
(しんちゃん)
先日も、ぶんじ寮でまちの保健室を開いている日に僕の友人たちが来てくれて、その中にたまたま管理栄養士の方々がいらっしゃり、自分たちご飯作りますよと言ってくれて。皆でご飯を作りながらしゃべっていたら、横澤さんが実家のお米がたくさんあって悩んでいる、じゃあどうしようか、みんなに聞いてみよう、と。
(ぶんじ寮)
ぶんじ寮で活動する際に皆で使っていいお米のしくみ(通称:横澤米)がここから始まったんですね。3月20日の「死について語るイベント」も、会話の中で生まれたのですか。
(しんちゃん)
その時ちょうど僕が12歳ぐらいの子のお看取りを経験したことを話したんです。
それで死生観の話が出て、「死は世間ではタブーになっているよね」「じゃあぶんじ寮はタブーを無くす場にしてみよう」「taboo 持ち寄りぶんじ寮だね」「そういうイベントいいよね」という話になり。それで、僕がいる間に一回やりましょうと、死について語る回を開くことになりました。
何をするというのはなく、交流の中から生まれたものが自然に形作られていくのがいいなと。だから、ぶんじ寮でありのままに生活をしていくことそのものに価値を感じてしまった。
もしも僕が外側から「これをしたいんです」と持ち込んでいたら、イベントも全く違ったものになってしまったかもしれないなと思います。
ありのままに生活していることの価値
(しんちゃん)
ぶんじ寮は、みんながやりたいことを持ち寄ってごちゃまぜにできる場ですね。
それぞれの時間で暮らして、交わったその時その時の会話の中で、何かが生み出されていく。フラットに喋れるからこそ、そこで何をしたいかが生まれていく。
初めてぶんじ寮に来て自己紹介しあった日も、自分が今やっていること、やりたいことを自分ごととして自己紹介する方が多かったですね。仕事であり生活でありがこの場にあって、寮という枠組みの中でごちゃまぜになっているので、フリーに、皆で見られる。
一方でプライベートも守られているじゃない。個室があるから、自分の部屋に引き込もることもできる。それもあり。一緒に暮らす上でとてもいいなと思いますね。
あえて寮という枠組みがあることで、必然的に交わらなければいけないことと、それでいて今ルールを決めすぎていないのがいいですね。
(ぶんじ寮)
そうはいっても寮の中でも日々、ルールを作るか作らないかといった点でも、いろんな考え方が対立することもあったりします。
(しんちゃん)
そう。その「バトる」、 すなわち 対話する、理由とプロセスを共有する過程が大切で。
価値観の違いがあったとしても、違いを認めた上で落とし所をつけるか、考え方が違うからと跳ねのけてしまうのか。ぶんじ寮がもし違うと排除してしまう場なら、こうはなっていないとは思う。
対話をしながら作っていけるのがいいですね。
外側に出ていこう
(しんちゃん)
昔の家には縁側があって、 狭間の空間が人と地域のコミュニティになっていたと思うんです。現代はマンションで暮らしていたりするとなかなかそうならないですからね。
住んでいる人、関わっている人は、ぶんじ寮から外に開こうと目を向けています。もっとぶんじ寮の外にいる人が中に入って来やすいように。ぶんじ寮から外にどんどんと開放していくことは、社会、外側を変える意味になるんじゃないかと思っています。
いい意味で寮が地域の縁側になっている。だからなるべく寮の中に閉じこもってほしくないですね。
11月、ぶんじ寮蚤の市で中庭に登場した「こどものおみせ」
(ぶんじ寮)
外側に出ていく点では、しんちゃんも診察室から地域に出ていくお医者さん、の印象があります。
(しんちゃん)
僕自身は、地域に出ていく医者とは思っていなくて。生活と仕事の区別がないんです。僕もこの地域で生活していますし。でも、医療者が診察室から外に出た時、例えばにしこく編集室が屋台をひいたらなぜか反響した、みたいなことってたくさんありますよね。そういう肩書・役職・価値みたいなことを壊して行っちゃうのがいいな。
(ぶんじ寮)
肩書き、役職、価値を壊す。
(しんちゃん)
診察室って、初めからこう、ルールというか枠組みが決まっているんです。
「あの、先生なんて呼ばずに、しんちゃんでいいですよ」と言っても、患者さんと医師で。
診察室での話も症状ベースじゃないですか。情報を出してくれても、その方のことは、その方の生活は一向に見えない。外に出たい!って思って。
一度出てみたら、僕の中でも診察室の外に出るハードルが崩れました。
例えばある患者さんが、お昼は毎日あそこで食べているんだ、夕方は駅前の何とかって居酒屋に行くんだと話してくれる。じゃあ僕行きますわ、と。
診察室に閉じこもっている限り、僕は人を診られないなと思っています。
だからと言って、外に出ていきなり知らない人に「こんにちは!」って声かけてもね。笑
(ぶんじ寮)
ちょっと怪しいですものね。笑
(しんちゃん)
それでにしこく編集室で屋台を引きました。屋台、ちょっと可愛いじゃないですか。コーヒーは、僕が出したかったから、淹れることにして。
(ぶんじ寮)
目的を持たない、というのが大事なんでしょうね。
(しんちゃん)
僕も患者さんと関わる中で日々感じるのですが、 こっちが目的を作っちゃうと、目的に応じて場が成り立ったときに、成功のように捉えるけれども、その反面でそこから落ちている人を見えなくする。できているなって思っている時は多分あんまりできていない。
できている感覚を持った瞬間に、自分自分のやったことを疑った方が良いと個人的に思っています。
ある日のまちの保健室
長期滞在、おすすめです!
(しんちゃん)
ぶんじ寮ね、住んでみる価値はめちゃめちゃあると思います!
一泊、二泊では分からないかもしれない。タイミングによっては全く他の方と会わないこともあるので。僕は約1ヶ月間いたんですけれど、このひと月で色んな価値観が変わりましたね。自分の中に潜在的に持っていたものの言語化にも変わっている。
貴重な機会に滞在できたと感じています。
これが一年後だと、いやもしかしたら来月だったとしても、全然違う景色があるかもしれませんね。色々なことを寮の中の人たちが混ぜてくれたから、とても楽しかった。寮のみなさん、ありがとうございました。
(ぶんじ寮)
最後に、今後の予定を教えてください。
(しんちゃん)
4月から北九州の病院に勤務します。これからは故郷である地域に貢献していきたいですね。
(ぶんじ寮)
国分寺にもぶんじ寮にもいつでも遊びに来てくださいね。しんちゃん、ありがとうございました! また再会できるのを楽しみにしています。
(聞き手: ぶんじ寮プロジェクト 吉村千晶)