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長編アニメーション映画「哀しみのベラドンナ」の失われた美術原画復元をクラウドファンディングで実現!
1973年に劇場公開された虫プロ最後の長編アニメーション映画『哀しみのベラドンナ』の失われた美術原画を原画作者の監修のもとに復元、アート作品として甦らせます。クラファン第一弾で原画復元、第二弾で豪華画集制作を目指します。
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編集家の竹熊健太郎です。私は21歳から40年近くフリーランスのライター・漫画原作者等を経験してきましたが、本業は自分のことを「編集作品」を制作する編集者だと考えており、そのため肩書として「編集家」と称しています。この肩書はなかなか世間に通らないのですが、今回の「哀しみのベラドンナ失われた原画復元計画」によって、復元原画セットと豪華画集を編集・制作することで、ようやく編集家の肩書にふさわしい仕事をしていると実感しています。このクラファンと画集販売が成功したら、実現したい企画がたくさんありますので、何卒よろしくお願いします。
1973年に劇場公開された虫プロ最後の長編アニメーション映画『哀しみのベラドンナ』の失われた美術原画を原画作者の監修のもとに復元、アート作品として甦らせます。クラファン第一弾で原画復元、第二弾で豪華画集制作を目指します。
皆様のおかげで無事目標金額の300万円を大きく超え、これを書いている現在、478万円に達しています。
正直申しますと、この企画は作品の日本国内での知名度の問題もあり、今回の原画セットをリターンとするためには300万は最低限の金額でした。これを大きく越えることができましたので、さらにプロジェクトを充実させるため、ストレッチゴールを設定し、集まった資金はリターン製作物の高品質化に使い、さらには豪華画集製作の資金に充当させたいと考えています。
ストレッチゴールは600万円です。
原画復元クラファン(このクラファン)終了後に豪華画集製作の国際クラファンを開始しますが、開始の告知は全ての参加者様にメールで告知するほか、SNSでも告知します。
資金が集まってからの制作になりますので、完成までの進捗状況は随時SNS、公式サイトで発表していきます。また豪華画集製作は、同時に価格を抑えた普及版画集の製作、そしてベラドンナに関する資料やインタビューを豊富に掲載し、豪華執筆陣による解説書「哀しみのベラドンナ研究」(150ページ前後予定)を刊行する予定です。
また調達額によっては4kによる映画上映会、その他のイベントも追加したいと考えてます。
『哀しみのベラドンナ』原画復元計画の竹熊です。
今から半世紀前、1973年に公開された虫プロダクション製作の劇場長篇アニメーション『哀しみのベラドンナ』(山本暎一監督)は、中世ヨーロッパを舞台に、魔女狩りの嵐に翻弄される若い娘(ジャンヌ)の愛と悲劇を描いたシリアスな作品です。同時に、作品全体をエロスとバイオレンス・サイケデリック映像が覆い尽くした、大人向きのアニメーションでもあります。
この映画の最大の特徴は、アニメーションであるにもかかわらず、全体の7割を画家・深井国が描く美術(静止画)が占めるという、アニメ史上にまれな制作手法にあります。
深井の絵は耽美的であまりにも美しく、一度見たら忘れられない強烈なものですが、作品完成後に虫プロダクションは倒産、深井国の美術原画の大部分が散逸・消失してしまいました。そのためこの映画美術を画集にするのは永遠に不可能かと思われましたが、2016年にアメリカでこの作品が奇跡の4Kリマスター化されたことで、「フィルムからの原画復元」という新たな可能性が生まれたのです。
このプロジェクトは、『哀しみのベラドンナ』のオリジナル35ミリフィルムデータから、米国のCINELICIOUSPICS社が4Kリマスターした動画データを、最新のデジタル技術と深井国自身の監修によって美術原画を可能な限り復元し、作品に新たな光を当て、再評価の機運に結びつけたいと願って開始されました。
過去に例がほとんどないフィルムデータからのオリジナル原画復元は、少数精鋭で取り組むにしても、少なからぬ人件費がかかります。また、復元するためのPC機材も、可能な限りハイスペックなものを揃えなければなりません。さらに復元原画セットや画集を作るにあたっては、グラフィックデザイナーの協力も不可欠です。これらの資金を捻出するため、皆様のお力添えをお願いしたい次第です。
また皆様のリターンによって得られた資金は、今回のリターン制作費だけでなく、次のプロジェクトである豪華画集を制作する準備金に充てたいと考えています。
まずは『哀しみのベラドンナ』の次の場面を見てください。
村の結婚式の日、この地方の習慣に従って新郎(ジャン)と新婦(ジャンヌ)が領主の城まで結婚の報告に来ると、領主は婚姻税として雌牛十頭を税として納めよと通告します。
貧しい若夫婦の家には一頭の雌牛しかおらず、とても支払えません。新婦のジャンヌは領主の奥方様の足元にひざまずき、なにとぞ減免を、と慈悲を乞います。カメラがジャンヌからパンアップして、貧しい村娘を冷たく見下ろす奥方のバストアップになる場面です。
この場面、2016年に出た米国版画集では次の写真のようにレイアウトされています。
▲米国版画集は、ある程度映画のストーリーを追うように編集されている。
左ページの下段の場面と、右ページ上段の場面は、本来は一枚の絵として描かれているのですが、この画集では下段と上段を分割して左右のページに配置しています。なぜ、こうなるのかというと、この本は基本的に3:4のスタンダートサイズのフィルムから画面キャプチャしただけの素材で構成されているからです。つまりこの本は基本的に映画の画面をそのまま収録しているだけで、「原画復元」という手間のかかる作業がされていないのです。
あらためて、はじめの場面の動画をフィルムのコマごとに取り込んでパソコン上で再構成すると、次の一枚の絵になります。
▲これが深井国のオリジナルに限りなく近づけた美術原画。絵の全体が見られる画面は映画には存在しない。
データからコマ単位でつなげて再構成し、紙に出力してはじめてオリジナルの原画を見ることができます。
さらにこの作品の特徴として、果てしなくどこまでも続く横移動のパンニングがあります。作品の冒頭シーンが典型的です。
これを復元したものが以下の写真になります。『ベラドンナ』には、こういう異様に横に長い美術原画が多用されているのです。いま動画で引用した絵は、スタンダードサイズの8画面分、B4サイズの紙で再現したら横幅が2メートル76センチ。3メートル弱の原画です。これは、ロール紙に実物大で印刷した復元原画にしたいと考えてます。アニメーションの原画集はたくさん出ていますが、これほどの長尺が掲載されることはまずありません。
▲どこまでパンするのか、見ていて不安すら覚える横長原画。ベラドンナにはこういう長尺の絵が沢山使われています。
また冒頭シーンの後には、ジャンとジャンヌを祝福する縦長動画が三連続で続きます。動画に続けて、復元した原画を掲載しますから御覧ください。
▲絵の輪郭線はHの鉛筆で描かれている。深井国はHとHBの薄い鉛筆でベラドンナの原画を描いた。撮影したカメラマンはライティングにかなり苦労したのではないだろうか。
私たちの言う「原画復元」の意味がおわかりいただけたでしょうか。
このプロジェクト最大の困難事は、4K化されているとはいえ、オリジナルの35ミリフィルムの小さなフィルム面積から鮮彩な画像を取り出し、可能な限りオリジナルに忠実に紙に出力することです。フィルム1コマ当たりは72dpiの解像度しかありません。これをAI技術によって300~600dpiに画像をアップスケールし、色調や輪郭線などの各種補正を加え、オリジナル画家の監修を得る必要があります。深井国氏がNOと言えば、復元作業はやり直しとなります。
AIというと自動生成のいかにもな画像を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、この作業は最終的にオリジナル作者の監修を得ることを強調させてください。いま私達が挑戦していることを、修正や複製ではなく「復元」としているのは、オリジナル作者の承認によって新たな原画を作り出すからです。場合によって、それは北京原人の頭骨の破片から北京原人の顔を復元するような作業かもしれません。
ですが、オリジナル作者の承認を得た時点で、それは失われた原画を再創造することになるのです。
なお、今回のプロジェクトはコンセプトファンディング(All or Nothing型)での挑戦になるため、目標金額未達となった場合は、『哀しみのベラドンナ』の原画復元およびリターンの履行は行われず、支援者の方々にご返金となります。プロジェクト成立を目標に、奮ってご参加ください。
『哀しみのベラドンナ』の 美術を動画から復元するに当たって、どうしても解決できない、最大の懸念点となった問題をこれから書きます。クラウドファンディング参加を考えている人は、よくお読みになり、内容を理解されたのちにご参加ください。
今回の復元計画は、2016年の『哀しみのベラドンナ』4K上映に当たり、米国CINELICIOUSPICS社が高額な予算をかけてオリジナルフィルムから作成した劇場上映用4Kデータを著作権者から入手できたことで、一挙に実現性が高まりました。
当初、米国や英国で市販されている4KマスターによるUHD(ウルトラハイビジョンディスク)から原画復元しようと思い、まずUHDを入手(品切れだったので中古のプレミア価格で購入)。ここから原画が復元できないかを探りました。
もちろん、画集を作るに当たっては、オリジナル画家の深井国氏とは別に、映画の著作権保有者に許諾を得る必要があります。ある程度原画復元の見通しが立ったところで、映画業界に通じた知人を介して『哀しみのベラドンナ』の現在の著作権者と会うことができました。
お会いして開口一番、先方が言うには、「劇場上映用の4Kデータがありますので、お貸ししますよ」。ずっこける思いがしました。これなら高いプレミア料金を支払ってUHDを入手するまでもなかったからです。
劇場上映用の4Kデータは4テラのハードディスク6台に分割して入っていると聞きました。4テラ6台! すると24テラバイト? 聞くと、それぞれのハードディスクには容量にかなり余裕があり、10テラあれば足りるのではというお話なので、念のため12テラのハードディスクを送ってみました。
それから2週間ほどでデータが到着。コピーになんでこんなに時間がかかるのだろうと思いましたが、届いたディスクから作業用にもう1台コピーを始めて納得。
…重い! 鬼のようにデータが重いのです。作業用にもう1台のハードディスクにコピーをとったのですが、ハードディスク間のコピーだけで約3日を費やしました。何度も故障を疑いましたが、ジリジリと亀の歩みのようにコピーはされています。コピー終了時のデータ量は9テラと少しでした。3DCG制作を日常業務にしている人なら別でしょうが、一介のフリーライターである私は、これほど重いデータを扱ったことがありません。
次に掲載した写真がデータの中身です。データは6つのフォルダに分かれており、その中に.dpxという見慣れぬ拡張子のデータがズラッと並んでいました。
▲ベラドンナ4K上映用のデータの中身。.dpxという見慣れない形式のファイルがズラリと並んでいる。
1つのフォルダに約15分の映像が入っていて、.dpxファイルは各2万1600個あったので、つまり1秒間24コマのうちの1コマが独立して1ファイルになっているデータ形式のようです。90分で9テラバイトになるのも納得。
しかしこのファイル、どうやって開ければいいのでしょうか。
検索すると、dpxファイルはPhotoshopと Premier Proで開けるというので、早速開いてみました。これまでのBlu-rayやUHDと比べても格段の画質で、これはイケる!と思ったのですが、コマあたりの解像度を見て愕然。
72dpi。 何度見ても72dpiしかないのです。
一般的に雑誌のカラーページは350dpiの解像度で入稿します。モノクロ原稿では600dpiでの入稿が一般的です。それが72とは、印刷用としては、いかにも解像度が足りません。オリジナルの原画サイズ(B4)に近づけて印刷するためには、もっと解像度を上げる必要があります。
ところがデータ容量となると話は異なります。1コマあたりの解像度こそ72dpiですが、容量は1コマあたり70メガあるのです。90分の映画なので、これが約13万ファイル。なので全体で9テラバイトのデータ容量になるわけです。
この解像度ではたして画集は作れるのか? 私達の作業はここから始まったのでした。
現在のAI技術を使えば、元データの解像度を上げたり画質を補正することができます。すでに多くのAIがあり、毎月のように新しいものが出てくるので、適切なAIを探すことが一苦労ですが、いくつかを試しながら決定していくしかありません。
とりあえず72dpiから300dpiにアップスケールしました。もちろんさらに600や1200、2400に解像度を上げることは可能なのですが、実際に試してみて、やみくもにアップスケールしても意味がないという結論に達しました。
数値的に解像度を上げることは可能なのですが、細部のディテールが足りない状態で解像度だけが上がるのです。細部が欠けた古代の彫刻を高解像度カメラで撮影したようなもの、と呼べばよいでしょうか。例えるならこんな感じです。
▲ヘレニズム期ペルガモン様式の彫刻。経年劣化でディティールが剥落しているが、これをいくらでも高解像度で撮影することは可能。だがいかに高解像度で撮影しても、細部は剥落したままである。(Wikipedia「彫刻」より。)
細部を推測で描き込んで密度を上げるAIもありますが、それはそれで原画には無いディテールをコンピュータが勝手に描き込む危険性があります。
それ故、どうしてもオリジナル画家(深井国)による監修が必要になるのです。このプロジェクトでは、最新AIの技術を借りつつも、オリジナル作者が「違う」と言った復元原画は採用しないルールを貫いています。
復元過程ではAIを存分に使いましたが、当然、使用したアプリはAI系だけではありません。最終的な微調整は通常の画像補正アプリ(PhotoshopやLightroomなど)によって、人間の手で調整しました。
▲複数の色味で出力した原画プリントに、オリジナル作者の深井国が気になる部分の補正指示を出している様子。
AIを使ってみて感動したのは、たとえば次の画面を復元したときです。動画なので、再生して見てください。
このアプリを使用した時は感動しました。かすれて途切れがちな輪郭線がクッキリとし、ボヤけたように見える暗部の水彩の筆跡もはっきり出ています。AIをかける前の元画像と、かけた後の画像が、曇った窓ガラスを拭いたように目視できる見せ方も良いですね。もちろん欠落した細部を勝手に描き加えることもありません(鶏の顔など)。そのうえで、復元の「絵としてのまとめ方」が巧みなのです。
サンプルにした画面は明暗差が激しく、輪郭線が鉛筆で描かれているので、普通の画像補正アプリでは限界がありました。深井国の原画はとにかく繊細なのです。上の場面はおそらく一番復元が難しい画像の一つだと思います。
最後に残る懸念点は「グレイン(粒状ノイズ)」の問題です。
グレインはフィルム映像には宿命的に付きまとうノイズで、細かいザラザラとしたノイズが必ず画像に乗るというものです。例えばスタンリー・キューブリック監督『フルメタル・ジャケット』(1987)の次の一場面をご覧ください。
▲『フルメタル・ジャケット』写真集より(「FULL METAL JACKET」Alfred A. Knopf, 1987。
▲上の写真を拡大したもの。フィルム特有のザラザラした粒状ノイズがグレイン。キューブリックはフィルムのカットしか使わないため、作品のどの写真にも盛大にグレインが乗っている。
どうでしょうか。全体にザラザラとした粒状のノイズが乗っていることが分かると思います。このザラザラがグレインです。グレインは、アナログのフィルム画像には静止画(スチル)写真を含めて必ず乗っているのですが、動画のそれはスチル(静止画)写真より甚だしく目立つのです。
なぜ我々が映画を見ていてグレインを気にすることがないのかというと、グレインはフィルムのコマごとにランダムに現れるノイズなので、1コマごとの現れかたがすべて違うのです。これを映写すると、1コマ1コマが高速で人の網膜を通過するので、人間の視覚ではほとんど感知できないのです。問題になるのは、フィルム1コマだけを抜き出して静止画として印刷に使う場合です。
これが十分な照明下で撮影された高解像度のスチル写真であれば、グレインが気になることは、ほぼありません。
ですから、ほとんどの映画には「スチル(スチール)カメラマン」と呼ばれるスチル担当のスタッフがいるのです。映画本編のカメラマンとは別に、撮影現場で監督が「カット」と言った瞬間に、スチル写真専門のカメラマンが本編と同じ背景、同じ照明で素早く役者の写真を撮影するのです。
その写真をどこに使うのかというと、主に紙媒体の宣伝記事や、広告などです。ポスターに使われる場合も多いです。なぜ本編のフィルム画像ではなく、わざわざスチルカメラで別撮りするのかと言いますと、印刷原稿として、本編動画からのコマ複写よりスチル写真の方がグレインが少なく、遥かに鮮明な画像が得られるからです。
スチルカメラマンの写真を嫌ったのが冒頭に述べたスタンリー・キューブリックでした。たとえグレインが乗っている「汚い写真」でも、それは自分の演出で役者が演技しカメラマンが撮った写真なのであり、自分の演出ではないスチルカメラマンが撮影した写真は、たとえそれがグレインが少ない綺麗な写真であっても「自分の作品ではない」という理由で宣伝にも使わせなかったのです。
キューブリックの話を長々と述べたのは、今回のクラウドファンディングによる画集制作も、まさに「本編映像を使うしかない」状況に置かれているからです。キューブリック作品が監督の意図として本編映像しか使わせないことに対し、ベラドンナは「本編映像以外の素材(原画)が最初から存在しない」という差があるわけですが。
もともと『ベラドンナ』のために描かれた深井国の原画にグレインはありません。今回の企画は「オリジナル原画を再現する」ことにあるので、グレインが残っていては、原画の忠実な再現とは呼べないのではないか? 当初そう考えた私は、作業の初期段階で、AIによってグレインを消す実験も行いました。
グレインは見事に消えましたが、そうすると、のっぺりとした、面白みに乏しい画面になってしまうのです。深井先生に見せても、原画にはないはずのグレインが乗った画像の方を好まれました。どうも、適度にグレインが乗っている方が、人間はそちらに空気感・リアリティを感じるようなのです。面白い傾向だと思います。
▲グレインを残したままの画像。
▲グレインを除去した画像。
上の二枚の写真は映画から取ったグレインが盛大に乗った画像(上)と、グレインを完全に消した画像(下)を対比したものです。一見して上はグレインノイズで汚く見え、グレイン除去後の下の画像が綺麗に見えますが、完全に消してしまうと、全体にのっぺりし過ぎて絵が物足りなく見えます。グレインをどの程度残すかは、画面ごとに判断するしかありません。
ちなみに、今回の復元原画では、同じ場面内の、なるべくグレインが少ないフィルムのコマを使い(グレインが現れるパターンは、1コマごとにすべて違っている)。AIによるグレイン低減は切り出した画像ごとに除去率を判断しつつ作業を進めています。
アナログフィルムのグレインは写真集を作るときには必ず問題になりますが、これをフィルムの「味」として肯定的に捉える人もいます。グレインはアナログ写真特有の現象なので、近年のデジタル写真にグレインはありませんが、わざわざグレインを生成して昔のアナログ写真のように見せるアプリすら存します。そのほうが「味がある」と考える人もいるからです。
私は私の出版事業の第一弾として、深井国先生を選びました。深井先生は60〜70年代の売れっ子挿絵画家で、今でも根強いファンがいますが、そろそろ90歳になろうというのに、何故か画集が一冊もありません。深井国は、その才能と、長いキャリアにもかかわらず、不遇な扱いを受け続けてきた作家(画家)だと思います。
そこで深井先生が30代後半の3年間を費やし、誰もが深井国の代表作と考える「哀しみのベラドンナ」の画集を出そうと考えました。この作品、調べると日本よりも海外のファンが圧倒的に多く、画集を待望する読者が世界中にいるとわかりました。しかし、この作品と深井国に目をつけ、出版しようと企画した出版社はこれまで一社もありませんでした。
もちろん、「もはや原画が存在しない」という事実はあります。しかしデジタル技術が発達している現在、動画からの原画復元が可能であることを、私たちは実証したいと思います。そのうえで、画集制作のためのクラウドファンディングを国内外で行い、SNSで宣伝・販売をすることで、私が30年前、初めてPCを購入してインターネットに触れたときに直感した夢想(既存の出版流通システムに依らない個人出版社)をなんとか実現したいと考えています。
今回は、画集を作る最初のステップとして、まずクラウドファンディングによって原画を復元する費用を集め、実際に原画を復元するプロセスになります。これを経た後に豪華画集作成のプロセスに移ります。今回のクラファンのリターンはバラの復元原画セットですが、次のクラファンのリターンは豪華画集です。画集は紙を綴じた本ですから、原画そのものを手に入れたい人は、今回のクラファンで入手するしかありません。綴じていない原画なら、額に入れてアートとして楽しむことができます。これも、印刷した「紙」を販売するという意味では、私にとって「本」の範疇に入ります。
電子データは、結局紙にプリントしない限り、額に入れて壁に飾ることはできません。綴じていないバラの原画を手に入れたい方には、今回のクラファンが絶好の機会です。
なお、今回のプロジェクトはコンセプトファンディング(All or Nothing型)での挑戦になるため、目標金額未達となった場合は、『哀しみのベラドンナ』の原画復元およびリターンの履行は行われず、支援者の方々にご返金となります。プロジェクト成立を目標に、奮ってご参加ください。
●お気持ちだけ/深井国描き下ろしイラストメッセージ(PDF)+スマホ壁紙
今回のクラウドファンディングにご参加くださったすべての方に、深井国先生が「ありがとうイラスト」とメッセージを描き下ろしてくださいました。スマホ壁紙用に厳選した場面とともにメールでのPDF添付でお送りします。
※以下のリターンにはすべて印刷された「深井国ありがとうイラスト」が付いています。
●復元B2映画ポスター2種 [金版/銀版] 各1枚
『哀しみのベラドンナ』1973年オリジナルポスター復元B2版2種です。一枚は魔女となったジャンヌの背景に金インクが敷かれ、もう一枚は愛し合うジャンとジャンヌの背景に銀インクが敷かれています。どちらも70年代深井国の代表作と呼べる、リッチなポスターです。
●復元原画【Aセット】276cm x 23cm 1枚 / 33cm x 23cm 9枚
冒頭の非常に長いパンニング場面で使われた美術原画と、B4原画9枚セットです。長尺画は2メートル76センチあります。スペースの関係で見本写真は上下に分割していますが、現物は切れ目のない一枚の紙に印刷されています。林静一が描いた油絵アニメの一場面と、杉井ギサブロー担当のペストで滅びゆく街の原画も入れています。
●復元原画【Bセット】94x23cm 1枚 / 61x23cm 1枚 / 33x23cm 9枚
ジャンとジャンヌの結婚を祝福して縦にスクロールする原画1(94センチ)と空を見上げるジャンヌ(61センチ)、B4原画9枚セットです。児玉喬夫によるサイケ場面の原画が一枚含まれます。
●復元原画【Cセット】107x23cm 1枚 / 96x23cm 1枚 / 33x23cm 9枚
結婚式祝福縦スクロール原画2(107センチ)と、夫が寝ている間に悪魔の囁きを聴くジャンヌ(横96センチ)、B4原画9枚セットです。林静一担当の油絵場面も一枚含まれます。またジャンヌの胴体が真っ二つになって赤いコウモリが飛び交う場面は、コウモリを含めて作画監督である杉井ギサブローが自ら描き、作品を象徴する名場面となっています。
●復元原画【Dセット】117x23cm 1枚 / 63x23cm 1枚 / 33x23cm 9枚
結婚式祝福縦スクロール原画3(117センチ)と夫の寝ている間に悪魔に迫られるジャンヌ(横63センチ)、B4原画9枚セット。林静一担当の油絵場面、児玉喬夫のサイケ場面も各1枚含まれています。
●深井国サイン入り復元B2映画ポスター2種(金版/銀版)
ポスター2種それぞれに深井国先生がサインを入れたものです。
●復元原画【フルセット】(A/B/C/D全部入り)
AからDまでの復元原画セットの全部入りです。
●深井国サイン入り復元原画【Aセット】276cm x 23cm 1枚 / 33cm x 23cm 9枚
復元原画Aセットを収納した外箱に深井国先生がサインを入れたものです。
●深井国サイン入り復元原画【Bセット】94x23cm 1枚 / 61x23cm 1枚 / 33x23cm 9枚
復元原画Bセットを収納した外箱に深井国先生がサインを入れたものです。
●深井国サイン入り復元原画【Cセット】107x23cm 1枚 / 96x23cm 1枚 / 33x23cm 9枚
復元原画Cセットを収納した外箱に深井国先生がサインを入れたものです。
●深井国サイン入り復元原画【Dセット】117x23cm 1枚 / 63x23cm 1枚 / 33x23cm 9枚
復元原画Dセットを収納した外箱に深井国先生がサインを入れたものです。
●ベラドンナ描き下ろし新作イラスト複製原画A(A3判)
●ベラドンナ描き下ろし新作イラスト複製原画B(A3判)
●ベラドンナ描き下ろし新作イラスト複製原画C(A3判)
●ベラドンナ描き下ろし新作イラスト複製原画D(A3判)
今回のクラウドファンディングのために、深井国先生がベラドンナをテーマに新作イラストを執筆中です! 完成しましたら、最高級のアートプリント(ジークレイ印刷)各限定10点で制作します。
イラストはA3で描かれ、すべてアクリル装、背面に壁掛けワイヤーを付けた状態で発送します。額装が不要の場合は発注時のコメント欄に「額装不要」と書いてから発注してください。
クラファン期間中に完成する予定。絵が一点仕上がり次第、このクラファンページでイメージを順次公開します。
<これまでの経緯>
2023年8月/企画原案策定、チームづくり開始
2023年9月/第一回チーム内打合せ(3名参加)
2023年10月/多摩美術大学校内の掲示板で学生スタッフ募集(4名採用)
2023年10月〜2024年6月/リサーチと仕様検討
2024年7月〜8月/技術検証、試作開発、仕様確定
2024年8月/公式SNSアカウント運用開始、WebX2024 IPエリアに出展
<これからの予定>
2024年9月18日(水)~10月31日(木)/第一弾・原画復元クラウドファンディング期間
2024年9月下旬~10月下旬/原画復元作業、リターン原稿制作
2024年11月/リターン製作
2024年12月上旬~/リターン順次発送
2024年11月~/第二弾・豪華画集クラウドファンディング開始予定
今回集まった資金を元に、原画復元費とリターン製作費、クラファン第二弾の豪華画集製作の準備金とさせて頂きます。
私が『哀しみのベラドンナ』を初めて見たのは、製作から10数年を経て発売されたレーザーディスクを購入したときでした。鑑賞して、「よく映倫の審査をパスしたな」と思えるエロティック描写とバイオレンス描写に驚きました事実、山本暎一監督のインタビューによると、監督は映倫からの修正指示を覚悟していたが、なんの指示もなかったので逆に驚いたそうです。現代のアニメでもちょっとできないような、過激なシーンに満ちています。
同時に、深井国が描く、美しいキャラクターと美術に酔いしれました。深井国は美人画を得意とする画家で、70年代に人気を博し、89歳の現在も絵を描き続けています。深井国先生がご存命で、お元気でおられるからこそ、私たちはこの無謀なチャレンジを思いついたのです。
しかし年が明けると先生は90歳になられると聞いて、今こそやらねば、との思いを強くしております。先生はパソコンを所有されておりませんが、お身内の協力で先日SNSを始められました。初めて触れるパソコン、初めて開設したSNSアカウントで先生が見たものは、国内外のファンからの熱いラブコールでした。
▲ファンの声に励まされながら、深井国は今日も絵を描き続けます。
一度でいいので自分で出版社をやってみたかったのです。出版界の片隅で雇われ仕事をしてきてほぼ40年が経ちますが、私は、ただの一度も「これが自分の仕事だ」と思える仕事ができていません。
私は自分のことを「何かのプロ」と感じたことが一度もありません。私は17歳で自分のミニコミ(一般的にはコミケの漫画同人誌を思い浮かべるかもしれませんが、私の場合は文章主体の個人誌でした)を始めて以降、ずっとその延長で仕事をしてきたので、雇われ仕事では、自分の中で多少は売りになる雑文を版元の依頼に応じて書く程度で、普通はそこで自分の仕事を文章書きと定めて「プロ」としての覚悟を固めるものですが、自分はもともと文章が書きたかったわけではないのです。
これは説明が難しいのですが、私は本当は、「本」というものを中身の文章や絵だけではなく、デザインや装丁を含めたトータルな本作り、そして流通や販売を含めた、「読者に届けるまでの全体」を自分のコントロールで行いたかったのです。ある意味では「作品としての本作り」をずっとやりたかったのです。
自分の趣味に特化して、作りたいものを作るということは、アマチュアにだけ許されることです。なので私は、自分をアマチュアだと規定しています。アマチュアのまま40年以上生活できてしまったので、こう呼ばせてもらえるなら「プロのアマチュア」です。そして「作品としての本作り」をする人を、作家でも編集者でもない「編集家」と私は呼んでいます。私はプロのアマチュアで、編集家です。
こういう願望を抱いた人間が、出版界で雇われ仕事をしたとしても、満足することはできません。もし満足できるとしたら、自分で出版社を作って、人を使って一冊の本を作り、取次の口座を取得して取次コードをもらい、作った本を書店で流通させて読者に購入してもらわなければなりません。それはアマチュアには、とても敷居が高いのです。まずもって資金がありません。
ところが90年代に入って初めてパソコンを購入し、インターネットに出会い、私にとって一筋の光明が見えてきました。出版にとってある意味本作り(コンテンツ制作)よりも重要な、文章を自由に書いて自由に発表し、それを理論的には世界中の人間に届ける可能性が見えたからです。
出版の場合、コンテンツ制作はもちろん大変ですが、コンテンツを多くの読者に届けることはもっと大変なのです。それに取りかかるには、最初に業界人となり、さまざまな「業界のしきたり」に従わなければなりません。そして私は「業界のしきたり」が大嫌いなのです。しきたりを守るうちに、初心をどこかに忘れてしまうからです。
90年代にインターネットと出会った私は、お金にもならない趣味の文章を、おそらくは仕事としての文章の何倍も書いてきました。一銭にもならないのになぜ大量に書いたのかといえば、仕事として文章を書くよりも楽しかったからです。
そして2000年代に入ってからブログが現れ、ネット書店や電子書籍が現れ、アマチュアでもお金になる手段が増えて来ました。しかし、インターネット内だけで消費されるコンテンツで得るお金には限界がある、と私は考えています。まれに電子書籍で大儲けする人が現れますが、少しその世界を覗いただけで、コンテンツを書く人よりもそれを載せるプラットフォームを作って運営するほうが、はるかにお金になります。そうして、タダ働きに近いコンテンツ制作者の「やりがい搾取」の構造が生まれてきます。
そうしたものを見るにつけ、私の中ではまたしても白ける気分が生まれてきました。私は本という作品が作りたいのであって、プラットフォームを運営したいのではないのです。
そもそも電子コンテンツでお金を得ようとするのが間違いなのでは? と私は疑念を抱くようになりました。それよりも、電子では絶対に味わうことができないものーーそれは売れないと言われている「紙の本」ではないのか。この事に気がついたのが、第一歩です。
一方では、ここ十年ほど「出版不況」が深刻の度を増しています。そもそも「紙の本」が売れないのです。そこで、大手出版社は紙の本の「次」を睨んで、電子書籍出版(配信)に舵を切っています。紙と電子の売上比率に最初の逆転現象が起きたのが、2018年でした。
そうして紙の本離れがどんどん加速して行くのですが、ちょっと待て、と私は思ったのです。
紙の本が電子に敗北した理由は、出版界がドグマとして信奉してきた「薄利多売」の商法にあるのではないかと。そして薄利多売は電子にこそ当てはまるものなので、紙は、もとから勝ち目はないのだと。そして、紙の本に変わる薄利多売ビジネスの活路として、出版界は電子出版に舵を切り、その結果、紙の本がますます売れなくなって、パブリッシャーは電子で大儲けしているが、個々の作家は電子書籍の時代になって「売れたぶんだけしか収入がない」状態になって、ますます生活が疲弊しています。
「売れたぶんだけしか収入がない」のは当たり前じゃないか、と思われる人も多いと思います。しかし出版においては必ずしもそうではないのです。物理的な紙の本は、それまでの業界の取り決めによって実売印税ではなく「刷り部数印税」ですので、電子書籍よりも何倍もお金が入り、それで作家は生活を維持できている実態があります。
なので、版元は電子書籍の薄利多売で得た収入をそのぶん作家に還元するべき(原稿料を上げる、印税率を上げるなど)なのですが、そう考える出版社はまず存在しません。
つまり、業界の利益の分配構造に、根本的な問題があるのです。
一方、紙には「物理的実体がある」という一点で、電子では到底太刀打ちできない利点があると、私は思います。実際に手にとって本の重みを感じながらページをめくる感触は、紙でしか味わえないのです。
薄利多売のシステムが駄目なら、高利薄売ーーつまり、高価な本を少部数売る戦略なら、紙に勝ち目が生まれてくるのではないか。そして紙の本は千年以上の歴史を持ち、さまざまな物理的実体を持った、工芸品のような書物を生んできた歴史があります。たとえば重さ1キロの書物があるとして、その重みを電子書籍では与えることはできません。重さがないーー物理的実体がないことは、逆に電子の利点でもあるのですから。
私は実態がある、重みのある書籍をこれから作っていきたいと思います。そして、それをクラウドファンディングで資金を集め、インターネットで宣伝し、インターネットから通信販売をするというビジネスを始めてみたいのです。それはもしかすると、まったく新しい出版になるかもしれません。
1000円の本を1000冊売って100万円にするのと、1万円の本を100冊売るのとでは、売上は100万円で変わりません。このビジネスが成り立つには、本1冊に1万円支払っても満足できる内容があればいいわけです。そして、日本国内でこれを100冊売るのが困難であっても、全世界で100冊売るのは、それに見合う内容があるなら、不可能ではないと私は考えます。
今回のクラウドファンディングは、私個人にとっては、35年前にパソコンを手に入れたときから、頭で考えていた夢想を実現する第一歩になります。理想の「紙の本」を作るためにデジタルの力を使うのは、面白いことだと思いませんか?(竹熊健太郎)
ベラドンナ原画復元計画
公式サイト https://mavo.pub
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