震災から14年 “愛子さん”のこと ①出会い
vol. 5 2024-12-06 0
①出会い
「風に立つ愛子さん」の劇場公開にあたり、私と愛子さんの軌跡を少し振り返りたい。 そして私なりの14年間、石巻に通い愛子さんのそばにいて感じたことを整理してみようと思う。
2011年4月末。震災から1ヶ月半経っていた石巻市立湊小学校避難所は、騒然としていた。避難している方がおよそ500人。自衛隊、ボランティア団体、各自治会の職員などを入れたら1000人以上の人が、小学校で動き回っていた。その時の避難所はびっくりするほど明るかった。皆さんが挨拶を交わし、笑顔も見られた。今思うと、それは災害ユートピアだった。思いもかけない被害に遭った者同士が協力し合い、一致団結しているような状態だった。特別な時間だったように思う。
そんな中で、僕は愛子さんに出会った。愛子さんはひときわ身長が高く、声が大きかったので目立っていた。声をかけると「私は妖怪なのよ」と笑うので、不思議なことを言う人だと思った。愛子さんのいる教室に行ってみると、愛ちゃんの周りには人が集まっていた。教室の皆さんの気分が沈んでいる時に、率先して「私はハラワタ曝け出します!」と宣言して、暗い空気を明るく変えたという。教室は家族のようになった。
私は、愛子さんに興味を持って色々おしゃべりしたら、あっという間に仲良くなった。そして、そのまま避難所で一緒に生活しながら撮影をすることになった。
映画「石巻市立湊小学校避難所」は、そうやって作った。
※避難所の映画は、2012年に公開。愛子さんも主要な登場人物として出演してもらった。