「旅のトークショー」出演者からの応援メッセージです
vol. 3 2020-09-11 0
イランとイラクの狭間にて 〜JIM-NETハウスを訪問したサヘルさん〜
JIM-NETは1991年湾岸戦争、2003年のイラク戦争で使用された劣化ウラン弾や大気汚染に起因にすると言われている小児がん患者増加を受け、がんの子どもたちを支援するために設立され、今日までその支援は続いています。戦争の爪痕は未だに消えることなく、医療・保健分野におけるサービスの劣化は改善されず、慢性的な医薬品不足や医師不足も深刻です。またイスラム過激派組織IS(イスラム国)の出現やシリアからの大量の難民の流入も医療現場や医療制度に大きな影響を与え、とりわけがんの子どもたちは大きな組織からの援助もなく、安心して治療を受けることさえも脅かされ続けています。
なかなか支援が行き届かない小児がんの子どもたちを一人でも多く助けたい、そんな思いでJIM-NETでは毎年チョコ募金(*1)という冬季限定の募金活動を行っているのですが、2018年のチョコ募金に関連したイベントでサヘルさんがトークセッションに参加してくれました。その中で、僕はずっと心のどこかにあった疑問をぶつけてみました。「イラン・イラク戦争でご家族を失ったサヘルさんにとって、イラクを支援する団体への関わりは複雑な想いもあるのではないですか?」そう聞いたところ、「戦争の相手国を恨むのはやめて。(中略)許すことを学びなさい、許すことで未来に光を差し込むことができるから、とにかく許せる人間になりなさい」という母の教えが大きく人生を変え、現在は自らの経験をもとに国や地域に関係なく困難な状況にある人たちを支える活動を行っていると語ってくれたことを覚えています。その1年後、サヘルさんはイラクを訪問しました。
JIM-NETハウスやヤジディ教徒を支援する団体を訪れ、正面からその想いや声を汲み取り、時に自分を重ね、時に家族のように現地の人と繋がりを作っていた様子は先の放送でも映し出されていました。実際にJIM-NETハウスで出会ったイランから来たがんの治療中であるシャハワンさんとその一家との交流は今でも続いているそうです。シャハワンさんの妹であるアレズは現在、一家を彼女だけの収入で生活を支えています。新型コロナウイルスの感染拡大で2ヶ所を掛け持ちしていた仕事も片方は解雇となってしまいました。しかし、サヘルさんは彼女たち「だけ」への支援に留まらず、同じような境遇にあるJIM-NETハウス利用者への支援にも繋げてくれています。シリアから難民として逃れてきた人々や治安の悪化で国内避難民となった人々の利用者も少なくありません。皆様から頂いたご支援は、通院するのも困難な患者さんやそのご家族、また医薬品支援に大切に使わせていただきます。
また、ヤジディ教徒の女性と施設に通う子供たちへの支援金も弊団体を通し、Harmanのスタッフにお渡しいたします。世界中が大変な状況にありながら、皆様からの温かい応援に改めて感謝いたします。ありがとうございます。
JIM-NET 海外事業担当 斉藤亮平
(*1)チョコ募金は今年は11月中旬のスタートとなります
▼アルビルにある小児がん総合支援施設「JIM-NETハウス」/ 子どもたちが学んだり、絵を描いたりして過ごしている。また患者家族の宿泊も可能となっている。
▼患者やそのご家族とコミュニケーションを密に取るソーシャルワーカーたち。小児がん支援は社会心理的サポートも重要だ。
▼JIM-NETハウスでフラワーブーケを作る患者の子どもたち。笑顔溢れる時間。