生きている言葉たち。パート2
vol. 20 2024-08-30 0
アップデート記事をご覧の皆さま、昨日の投稿、今作品各場のクレジットと場の象徴的な台詞&舞台写真をピックアップしたせいか、どうかは別として、昨日の夜に目標金額を達成致しました。
ご支援くださった皆さま、本当にありがとうございました。そして達成後もご支援、本当にありがとうございます!目標金額を越えた場合は東京公演の補填、今後の広告宣伝費、活動費にさせて頂きます。
次回のTOKYOハンバーグ公演は11月にサンモールスタジオで『できないなんていわないで。』を上演致します。引き続きご支援の程、よろしくお願いします。
折角なので前回の続きを頑張ります!最後まで楽しんでください。
5場(私たちを、誰も)
香織 『育児放棄です。お母さんも意図してじゃなかったと思うんですけど。それから児童相談所に通報があって。』
伊室 『誰から?』
香織 『悠太君の通う学校から。』
伊室 『(哀しい溜息)あいつ、なんも話さないからさ。』
香織 『殆どの子がそうですよ。』
伊室 『え?』
香織 『人って誰でも誰かに知ってほしい自分と、隠したい自分がいるじゃないですか。大人だって。』
千沙 『じゃあ、ほっとけって言うの?』
悠太 『限界があんだろ、そんなもん。』
千沙 『やってもない奴が言うな。』
悠太 『そんなもんやんなくてもわかるわ。』
千沙 『何でよ!』
悠太 『母さんがそうだったろ!』
千沙 『・・・』
悠太 『好きで俺らを施設に入れたと思うのかよ?』
千沙 『・・・』
悠太 『限界だったんだよ、母さん。だから、だから・・・』
愁子 『(過去と違う雰囲気で)知ってたよ。』
悠太 『え。』
愁子 『悠太が人参嫌いだったのも・・・悠太が喋ったのも。』
悠太 『どうしようもなかったじゃん!』
愁子 『どうしようもなかった。誰も助けてくれなかったから。私たちを、誰も。』
悠太 『だからだよ。母さん、俺と千沙の面倒見るの大変だったでしょ!いつも夜中に泣いてたでしょ!三人で死のうとしたこともあったでしょ!だから俺が先生に言ったんだよ!』
愁子 『ありがとうね。』
悠太 『なんでありがとうなんだよ!俺は母さんを売ったんだぞ?』
愁子 『ううん。それは違う。悠太は千沙のことも、自分のことも、母さんのことも助けたのよ。』
悠太 『そんなんじゃねぇよ!』
愁子 『(微笑みながら)ごめんね。』
悠太 『俺はさ、俺はさ・・・』
愁子 『なに?』
悠太 『大好きだったんだ、母さんのこと。』
愁子 『ありがとうね、悠太。』
6場(初めての子ども食堂のあとに)
千沙 『美月先生が言ったみたいに、優奈ちゃん家に帰ったらどうなんだろって。そんなことを考えてたら、ここでご飯を美味しそうに食べてる優奈ちゃんが、昔の自分に見えてきて、幼い弟さんを見てると、いつかの兄に思えてきて。ふたりを微笑んで見てる優奈ちゃんのお母さんが私のお母さんに・・・』
美月 『それで良いじゃん。』
千沙 『え。』
美月 『やってみて、頑張って、その先に子どもたちの笑顔が溢れて、だから笑顔じゃない時の生活を想像して、嗚呼、これが私たちの限界なんだなって感じて、じゃあこの先、私たちに出来る事って何?ってなって。本当の本当にこういう問題と向き合うって、そういうことなんじゃないかな?わかんないけど。』
千沙 『私、生まれ変わったら・・・今とは違う人生を歩みたい。』
悠太 『・・・』
千沙 『今できないことを生まれ変わったらやってみたい。』
悠太 『・・・』
千沙 『兄ちゃん、そう思わない?』
悠太 『思わなくはないよ。でもさ・・・』
千沙 『でも、なに?』
悠太 『お前が結婚すんのかどうか知らねぇけどさ。』
千沙 『なに、いきなり。』
悠太 『まあ、まあ。知らねぇけど、もしな、もし、そん時にさ、千沙が子ども授かったら、その子どもにそうさせてやればいんだよ。』
千沙 『え・・・』
悠太 『そうとしか出来ないだろ、俺ら。』
千沙 『・・・』
悠太 『負の連鎖つうの?そいつを、そこで断ち切んだよ、今は変わらない、変えられないから。だから未来のさ。』
7場(気持ちだけじゃ何の足しにもならない)
伊室 『あ、もしもし。前園さんの携帯でしょうか?あ、私、川崎イムロモーターの伊室と申します。』
悠太 『実は、社長に相談がありまして。』
伊室 『相談?』
悠太 『はい。』
伊室 『俺に?』
悠太 『はい。』
伊室 『なんだよ、この仕事、嫌になったか?』
悠太 『いえ、そうじゃないっす。』
伊室 『いくら。』
悠太 『え?』
伊室 『いくら貸して欲しんだよ。』
悠太 『いや、金じゃないっす。』
伊室 『なんだよ、怖いな。お前に相談されたことなんて、この5年で一度もないぞ?
悠太 『そうっすね。』
香織 『じゃあさ、悠太君が子どもの頃、まだここに入る前の頃ね。』
悠太 『はい。』
香織 『お母さんに何をしてほしかった?』
悠太 『え、なにを・・・』
千沙 『こういうのはさ、言い出しっぺが考えるもんでしょ。』
悠太 『ちょ、ちょっと待ってよ。そんなのやったことねぇよ。』
千沙 『だからいいんじゃん。やったことがない人にはやったことがない人にしか作れない何かがあるって。』
8場(あの頃の自分たちと一緒に)
悠太 『はい、みんなのお兄ちゃんです。今日は一緒にご飯を食べてくれてありがとうございました。カレーに入ってたジャガイモの皮、お兄ちゃんが剝きました。拍手!』
子どもたちのざわめき。
悠太 『・・・』
千沙 『兄ちゃん。』
美月 『悠太さん!』
悠太 『(意を決して)今から、みんなに観てもらいたいものがあります。』
9場(笑顔の花)※影絵
街並み。色んな人が行き交うなか、家族が目立ったりしている。するとそこに二人の幼い男の子と女の子が手を繋いで寂しそうに登場。
行き交う幸せそうな家族を気にしたりしていると女の子の方が泣き出してしまう。それを励まそうとする男の子もついに泣いてしまう。二人、泣いているが男の子の方が涙をぬぐい立ち上がる。それを見た女の子も涙をぬぐう。
音楽
ふたりはやがて少年少女から大人に成長してゆく。社会で営み、人と接して、楽しそうな一日もある。然し、どことなく寂しそうでもある。すると彼らと同じように寂しそうな子どもたちが現れる。
大人になった二人は子どもたちを見ていると、子どもたちに何かをしてあげたくなる。そして子どもたちに食べ物を与えたり、楽しそうに話したり、かけっこしたりしている。その姿たちは皆、子どもも大人も楽しそうである。
やがて二人も年老いてゆき、子どもだった子どもたちが大人になる。二人は天国に旅立ってゆく。それを惜しむ大人たち。そしてその大人たちの周りには沢山の子どもがいる。やがてみんな円になってゆく。円は花になってゆく。やがて一面の沢山の花が咲き誇る。
10(おかえり)
悠太・千沙 『お疲れ様です。』
香織 『どうしたの、二人そろって。』
千沙 『なんかお兄ちゃんが行きたいって言うんで。』
香織 『そうなの?』
悠太 『・・・まあ、たまには。』
以上です。最後なので舞台写真も台詞も多くしました。本当に沢山の人に観てもらいたい作品です。本当の本当に。そして、本日23:59までクラウドファンディング挑戦中です。
もう一枚だけ。僕らがTOKYOハンバーグです!
■出演者
鈴木暢海/関谷悠太役
小林風生子/関谷千沙役
吉本穂果/北原美月役・東香織役(16年前)
山本啓介/伊室達也役・石崎鉄平役
槌谷絵図芽/関谷愁子役・東香織役(現在)
■スタッフ
作・演出/大西弘記
音楽/清見雄高
照明/吉嗣敬介
舞台監督/松嵜耕治
舞台美術/小池れい
音響/香田泉
宣伝美術・宣伝PV/martrie
イラストレーション/さいとうりえ
宣伝写真・舞台写真/ありせさくら
WEB宣伝/西谷竜太
制作/J-Stage Navi(島田敦子・早川あゆ) 祖父江桂子
企画・製作/一般社団法人TOKYOハンバーグオフィス
■協力
京浜協同劇団
零´sRecord
anemone
人形劇団ひとみ座
牛島祥太
一般社団法人シアター&アーツうえだ
菜の花ダイニング(子ども食堂)
喫茶ホットライン
宿 行政事務所
いせソーラー
※順不同
■協賛:Go-on