元カントク・佐藤の独り言7
vol. 34 2019-09-27 0
こんちゃー。
元カントクの佐藤です。
今日から「元」になりました。
というのは、今まで隠してましたが、私はもう「監督」ではないのです。
えっ!じゃあ他に監督がいるの!?
と思われる方もいるかもしれませんが、そうではありません。
昨日までと実質変わりはありません。
誰に指示をすることもなくほとんど一人で映画を作っている私は、15年前から「監督」ではありません。言うなれば「映画作家」でしょうか。それもなんだかスノッブな香りが微かにしますが。
【監督】と言うとなんだか偉そうですが、じつは大したものではありません。
もちろん、才能の有無・器の大小などの要素はありつつ、たいていは周りに取り巻き(スタッフ・キャスト)がいて様々なお膳立てに対して「良い悪い」と勝手な事を言っているので偉そうに見えるだけです。独りになってしまうと、ほとんど何もできません。
実際今の私は、ただカメラを持った腹の出たオッサンでしかなく、権威や尊敬などとは無縁です。
しかも専門職ではないので撮影自体も下手くそ。自慢になりませんが。
昔関わった作品の撮影現場を思いましました。
当時私はまだ三十そこそこ。セカンド助監督でした。沖縄の石垣島で撮影した少年少女が主人公の映画のロケ現場です。
アメリカ帰りのほとんど素人のような女性監督のプランに従って、鬱蒼とした林の木々に足場が据え付けられワイヤーが張られロープで子供たちがぶら下がったりして移動できるように数日かけて現場が作られました。
その現場を見た監督ちゃんは「オー、ノー!どうしてこんなに酷く環境を破壊するの?」などと言い、現場スタッフは困惑しました。
「だって、監督がイメージすることをやるにはこうすることが必要ですよ。子どもたちが木に登るには足場が必要だしキャストスタッフの安全も確保せねば」
「私の持っていたイメージとは全然違う。もっと自然の中で環境に配慮して…」
またある時には、河原に並ぶ大きな岩を少年少女がぴょんぴょん飛び跳ねて走って行きたい、と監督が言うので、スタッフ総出でデッキブラシを使って岩の上の苔をこそげ落としだしました。
すると監督ちゃんは「どうしてそこまでやるのかしら。今の子はひ弱なんだな〜」。
ムッとした私は「苔で滑って危ないからみんなでやっているんですよ。なんなら監督、あの上を走ってみますか?」
一事が万事、その後の撮影で石ころだらけのガレ場を激走した女の子が足を捻挫してしまい、撮影スケジュールが変更になったこともありました。
つまり、プロの映画監督とはそういった裏方の役割や危険性を熟知し、それを解ったうえで演出しなければならないのです。
あれ?なんでこんなこと書いているんだっけ…?
明日は、蓮沼から蒲田に場所を移した「新生colors」のオープニングパーティーです。
5年続いたcolorsの閉鎖とほぼ同時に撮影も終わりました。
わずかにしか関わっていない私ですが、終わりの時に立ち会えたのも、なにかのオボシメシかと思います。
映画の中で一部でもそれが残せれば、それも多少は意義のあることかもしれません。
今更アピールするのも飽きてきましたが、クラウドファンディングはあと4日だそうです。
どうぞ夜露死苦お願いいたします。
(ほとんど他人事)w