改めて御礼
vol. 13 2022-12-20 0
このたびは、ヴォーン・ウィリアムズ生誕150年記念プロジェクトにご支援くださいまして、誠にありがとうございました。
写真は、高額支援者向けの特製本(すでにご送付)、そして特製絵葉書(遅くなりましたが、すでに発送しました)です。
12月9日、10日にサントリーホールでおこなわれた日本フィル定期演奏会では、下野竜也さんの指揮で交響曲第6番が演奏されましたが、詳しい人の話によるとこの曲が日本で演奏されたのは30年以上ぶりのことではないか、とのことでした。
そんなに滅多にしか演奏されないということが信じられないくらいに、実際に生演奏で体験する交響曲第6番はすさまじい迫力で、明らかに戦争の恐怖、開戦になだれ込んだ時の何か決壊したような感覚、破壊の後の虚無、そういったものを、決して感情的になり過ぎずリアルに伝える音楽でした。
10月31日に出版記念リサイタルで小町碧さんと加藤昌則さんが演奏したヴァイオリン・ソナタも、単なる田園風景的なイギリス音楽というイメージを完全に打ち砕く、晩年の作ながら非常にエネルギッシュで挑戦的な作品でした。CDで何度も繰り返し聴きたい音楽です。
生誕150年をきっかけにヴォーン・ウィリアムズの人生と音楽への理解と共感は確実に進んだと思います。これからもそれを広げ、深めていくためにも、今回の伝記翻訳出版は未来に向けた礎となるのは間違いありません。それくらいの名著、名翻訳、名編集だったと確信します。
本とはそもそも、かつてヴォーン・ウィリアムズより38年早く生まれて英国の生活と美意識に絶大な影響を与えた社会思想家・美術家・デザイナーのウィリアム・モリスが考えていたように、建築のように堅牢でなければならないのかもしれません。
モリスはその晩年を本づくりに費やしました。書体の創案(言葉への愛)、装丁へのこだわり、それは芸術と生活をつなぐ工芸家としての信念の表れでもありました。
柳川貴代さんによる特製本が伝えてくれるのはそういった時代の美意識と信念なのだと思います。
本と音楽を愛し、これからの私たちの未来につなげていく気持ちも、ぜひ皆さんに共有していただければと思い、写真を掲載いたしました。
日本フィル定期演奏会では、本の売り場に熱心なお客さんが訪れては購入していく姿も目撃しました。この上ない喜びでした。
今回のプロジェクトをご支援くださった皆さま方に、改めて御礼申しあげます。(林田直樹)
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