見えないけれど、視えている
vol. 9 2022-06-21 0
皆さんこんにちは。
いよいよ公演とクラファンの期日までカウントダウンが始まりました。
SOUND HUGを抱いて耳が聞こえない人にも演奏を楽しんでもらいたいと思って始めたこのクラファン企画。公演のテーマと同じくこの企画も挑戦の連続でしたが、最後までこの姿勢を崩さず進み続けたいと思います。
今回も引き続き、稽古の様子をお届けしたいと思います。
作曲・演奏を担当する白井崇陽さん。書き上げた曲に込めた想いを語ってくれました。
椅子に腰掛ける白井さん。
―ある夕方、たうとう、鷹がよだかのうちへやって参りました。
「おい。居るかい。まだお前は名前をかへないのか。ずゐぶんお前も恥知らずだな。お前とおれでは、よっぽど人格がちがふんだよ。たとへばおれは、青いそらをどこまででも飛んで行く。おまへは、曇ってうすぐらい日か、夜でなくちゃ、出て来ない。それから、おれのくちばしやつめを見ろ。そして、よくお前のとくらべて見るがいゝ。」― (宮沢賢治「よだかの星」より)
(白井)
個人的に鷹について思うんですけど、いじめようと思っているのとは全然違うと思うんです。
ただ、冷静では絶対ない。ものすごくはらわたが煮えくりかえっている状態だけど、仕方がないから猶予を持たせてやっているというだけで。立場的に対等だとは全く思っていなくて…王様か、貴族くらいの階級の存在が、奴隷や農民に同じところを歩くとは何事だと、平然というような感じ。嫌がらせではなく、本当に許せない。そういう感じなのかなと思います。
鷹としては当たり前のことを言っているのになぜわからない?というような感じで、こっちからすれば同じ空気を吸うのもおこがましいくらいなのに、生かしてやっている分優しいくらいで。当たり前のことを怒りを抑えながら言っている感じ。
よだかにはそれはわからないから、鷹に対してなんでそんなこと言うんですか!?と反論している感じだと思うんです。でも鷹としては当たり前に、自分の権利を主張しているだけなんだと思います。
(彩木)
そうなんですよね、住む世界が違う。立場が違うから、両方とも正当な主張なんですよね。
白井さんが言うように、生かしてやっているのに名前も変えずに反論してくる。はらわた煮え繰り返ってると思う。だけど抑えてる。抑えているけど出てくるものがある。
(白井)
そう言うイメージで曲をつけているので、それがそもそも殺すつもりがなくてきているのだとしたら曲の付け方も変わる。殺されるか殺されないかで、なんとか今日は殺されずに済んだ、帰ってくれたと言うようなギリギリ感。鷹が来た時には「やばい、殺されるかも」と言う空気感なのかなと思って僕は(曲を)つけたので。
(彩木)
だから「おい。居るかい」と言うのも、バシッと空気をかえて出てきた方がいいんですよね。
語りも手話も。このシーンはそれをベースで、白井さんはそう言う思いで作曲をしたと言うことを踏まえて、我々は表現を考えましょう。
鷹には鷹の主張があり、これ以前に出てくる鳥たちのような単純な嫌がらせではない。
正当な権利を主張している鷹。という方向で互いにすり合わせしました。
バイオリンを演奏する白井さん。
(彩木)
(河合さんに)白井さんの作曲した曲、音は、地の底をずっと這っている感じの、暗~いイメージなんです。
音の高低っていうのがあまりなくて。激しく責めるよりも、ジリジリ迫ってくるような、陰湿な感じなんです。
(白井)
とにかく重くて、暗くて(笑)
(彩木)
聞いている側は、暗い気持ちになってくる。
だけど鷹の表現は、それに引っ張られずに派手な方がいいんですよね。
(白井)
そうですね、これはあくまで「よだかの家に遂に鷹が来てしまった」と言うBGM。
鷹はもう、これが最後通告だというか、今すぐ殺してやるみたいな感じできてほしい。
それに対してよだかが、立ち向かっているんだけど不安みたいな感じ。
理不尽なことを言われているのはわかっているんだけど、理不尽が故に殺される可能性があるから、恐怖は常に感じている、みたいな。
じゃないと多分この後かわせみにお別れを言いにいかないと思うんですよ。
本当の意味で立ち向かっているなら鷹に攻撃できるわけですから。
―よだかはまっすぐに、弟の川せみの所へ飛んで行きました。きれいな川せみも、丁度起きて遠くの山火事を見てゐた所でした。そしてよだかの降りて来たのを見て云ひました。
「兄さん。今晩は。何か急のご用ですか。」
「いゝや、僕は今度遠い所へ行くからね、その前一寸お前に遭ひに来たよ。」―
(宮沢賢治「よだかの星」より)
(彩木)
別れのシーンって、河合さんどう作ってらっしゃいますか?よだかの表情というか…やはり自分の中で悲しくなったりします?
(河合)
いえ、これは悲しいと言うよりも…普通ですね(笑)
寂しくなったり悲しくなったりと言うよりも、その気持ちは内にあっても気持ちをあまり表に出さないと思うんです。
(彩木)
私も全く同じです!心配をかけたくないから笑顔で語りかける。本当に辛い思いはあるんだけど、でも表面にはそれを見せない。
最後の「さよなら」だけは決意を持っているんです。
で、白井さんが唯一明るい曲を作ってくれてるんですけど、でも全然明るくないんです(笑)
白井さんはどう作ってるんですか?
(白井)
思ってることは一緒ですよ(笑)
外向きにはお互いに普通に接しているけど、内面では別れだということで悲しみでいっぱい。
なんですけど、お二人が顔に出さないのなら、僕は音楽で内面を表したい。
僕はむしろ悲しさとか、寂しさとか、悔しさとか…でもちょっぴり、今は前向きにお別れを言わなきゃ…とかね。そういった内面のところを音楽で表現すべきかなと。
音楽はむしろ、どっちかと言うとかわせみの方の気持ちを出してますね。
かわせみも最初は普通に挨拶するけど、どこかおかしいことをわかっている。でもそれを隠し通そうとしている兄さんと、隠せなくなってくるお兄さんをみて途中から感情が出てくるかわせみとで…その心情の方を拾っている感じですかね。
椅子に腰掛けバイオリンを手に持つ白井さんと、台本をめくる河合さん。
白井さんが意見を語る間、河合さんは真剣な顔つきで手話通訳に目をむけ、台本にその言葉を書き取ります。
【公演案内】
日時:2022年6月29日(水)
【昼公演】13時30分開演 【夜公演】19時00分開演
会場:ルーテル市ヶ谷ホール
料金:一般 前売 4,500円 当日 5,000円
U25 前売 2,500円 (前売オンライン販売のみ・要身分証明書)
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