今野裕一郎×松本一哉 対談①
vol. 6 2019-07-09 0
バストリオ・今野裕一郎×音楽家・松本一哉 対談
場所の力、関わる人々との中で更新し続ける『黒と白と幽霊たち』
7月6日に『黒と白と幽霊たち』(以下:黒白)ツアーのチケット予約が始まりました。いよいよ本番が差し迫る中、バストリオ主宰・今野裕一郎さんとソロでも活躍中の音楽家・松本一哉さんの意気込みを伺いました。お二人が出逢ったきっかけや2019年のツアー先への熱あるお話を、ぜひ一読くださいませ。お話は、去年黒白公演でお世話になった日比野克彦さんからメッセージが届いて、はじまります。 編集/バストリオ秋良美有
ー唯一の野外公演2018年『黒と白と幽霊たち』@新潟県(莇平)
今野:ぁぁ日比野さんね、嬉しいね、メッセージ。
あざみひら演劇祭審査員 日比野克彦さんより応援メッセージを(雲の中)いただきました。
「去年はいろいろ莇平でお世話になりました。今年もこの季節がやってきました。応援しています!HIBINO」
松本:はやいね、もうあれから1年経つんやね。死ぬ間際に思い出す思い出の1つやもんね。
今野:伝説のロックフェスみたいだった。フジロックの1回目みたいな。雨降って台風きちゃって。昨日ばんちゃん(萬洲通擴:今回黒白の衣装を担うメンバーの1人)と話してた時に「莇平の写真を見たんですけど、すごいみんなの衣装がタイトになってて!」って言われて、でもただ濡れてるだけだった。
一同:笑
松本:あの現場で雨降ってるなんて…。公演決行したのは、タイミングやったね。雨降りだしたのが、これから本番って時だったから。
今野:もっとね、前だったらやめてたかも。ちょうど俺らの本番になって大きな雲が出てきて。
松本:あー降るねこれは!!!ってのが。俺、三国志好きやけど、なんかね、東南の風が吹くじゃないけどね、戦国時代で言うなら桶狭間とかあんなかんじやったんやろうね。
今野:贅沢な時間を過ごしてるってことですよ。昔の人って。
松本:ままならない、絶対コントロールできないことの上でなんとかしようとしとるからね。
今野:ね。だからあのときに、コントロールできないことに抗うとかじゃなくて…、みたいな状態がわかったのはよかったっすけどね。
松本:バストリオと関わるっていうのはそういうことだから。俺が自然の中でいろいろやってて、人と一緒にやることよりも自然の中で向き合ってやることの方が俺にとっては豊かだと思う、風なことを言ったときに今野君から「人間も変わらないんですけどね。僕はむしろ人間とやることも自然だとも思いますし、そっちのほうも豊かだと思います。」って、言われた。ま、それが大きくてね。黒白もそうだけど、それ以降なにかやるときには、それが割と念頭にあって…。自分からしたら自然のほうがコントロールしやすいみたいなところがあるから。人間の心だけは自分でコントロールしようとすることが難しいから。
今野:ま、できないしね。カオスだからなあ。
絵が飾ってある素敵な喫茶店で対談しました。(上から松本さん、今野さん)
ー音楽家・松本一哉がバストリオと関わるきっかけ
「人(他人)との関わりの中、黒と白との間のグラデーションを意識する。」
松本:きっかけはまあ、安永哲郎さん(アコーステッィクユニットminamoの電子音奏者)の紹介なんやけど。
今野:安永さんですよね、そう、安永さんだし杉本さん(杉本佳一 同じくminamo奏者)かな。また杉本さんとやってたってのが結構でかいんすよ。
松本:黒白に関しては、俺が『水のかたち』(松本一哉1stアルバム)をリリースして、リリースのツアーファイナルを今野君と橋本っちゃん(バストリオ橋本和加子)が観にきてくれて、で、ライブ終わりに、今野君に「今日の演奏を軸に話をつくるんでやりましょう。」って誘われた。だから、黒白の中でやってる俺の一連の流れってたぶんその、あ、これ俺の観方やけど、
今野:うん。
松本:俺のソロライブにいろいろ演出が加わっているっていうか、バストリオが加わっている。
『黒と白と幽霊たち』初演 宗林寺(左から稲継さん、松本さん、中野さん)
6年8月東京・宗林寺 萩フェス)、人数あんま気にしないでそのとき信頼しているメンバーでやろうってなった。そんなかで出来ることってなったときに松本さんがツアーでやってた演奏に触発されてるのがあって、生まれてるのがある。ま、肉付けしたり、全然違う部分ももちろんあるけど。基本的には、あのとき感じていた時間に自分の想像力が足されている。あとは出演者の力量によってね、変わっていったり。
松本:うん。
今野:ほんまに制作時間も少なかったから、自然にみんなのできる範囲のことをどこまで引き延ばせるのかっていう、ことでしたからね、あれは。
松本:うん、なんかさっき話してたように、一人でやることと、人と一緒になにかをやるっていうことが、黒白をやる上では、っていうかバストリオとなにか一緒にやるとき、自分はそれがテーマになってる。
今野:そうすよね、ま、僕自身もそれが実はテーマなんですけど。
松本:ま、そだね、おれも一人でやるときやっぱ考えてしまうテーマだから。また、そこは…タイトルがさ!『黒と白と幽霊たち』っていう、幽霊!グレーというかさあ…
今野:間のグラデーションですよね。
松本:やっぱりそういうこととかを強く意識するのがやっぱり、バストリオと一緒にやることだなって思ってるから。
―「音楽家、役者としてではなく、その人であることとして関わりを更新していく。即興性の強い作品。」
今野:ちなみに、黒白ツアーの中で印象に残ってる回とかあります?
松本:あ~~。…。いやこれといって、体験としてずば抜けていたっていうと屋外でやった莇平になっちゃうけど、自分にとって、なんていうのかな……あーでも…う~ん、簡単に言えないけど、黒白だけじゃないことがさ。
今野:うん。
松本:これまで関わってきた全てのことがあったからやっぱり、あの行動(水に濡れたらNGな機材を使用して演奏した)に自分が出れたってのがあると思うから、その、なんか超越してるものがあるじゃん。どう考えたって。言葉悪いけど、割に合わないって思いが頭ん中にあるのに、それも超えて。
今野:ま、実際に、自分たちがイメージしてやろうとしている音が鳴らないですからね。
松本:も、そうだし、やってみなきゃわからないっていうのもあるから。はじめて黒白やってから、今の黒白の間にも『TONTO』(2017年バストリオ作品)があったりして。プライベートでもよく会うし、カタン(バストリオが本気で遊ぶボードゲーム)とか!
一同:笑
松本:俺がそんなにプライベートで人と付き合って、心ゆるして自分の内面を話すってあんまないから。1回1回本番というものは特別なものだと思うというか。前回とかこれまでを超えてゆこうと思ってやってるから。ま、ゆったらたぶんそういうルール、じゃん?
今野:うん!そう、更新ですよね。
松本:たぶんそのへんって、そこまで別に話してないかもしれないけど、そういうものだっていうもんがあるからやれてる。
今野:うん、そこはたぶん、この作品がもった運のひとつでしょうね。みんながそういうタイプだってことも。
松本:各々がちゃんと独立しているっていうイメージがある。なにしてるかとか、そのときだれがどこにいるかとかって、ま、正確にはわかってない時もあるんだけど、毎回ちょっとずつ違うとこに気が付けるか、みたいのがあるし。そういう意味では、やっぱ即興の部分が強くてさ。決まり事で動いているっていう意識があんまなくて。自分がはずしちゃいけないシーンとかは仕方ないんだけども。
今野:まあね。
松本:でもそれはその緊張感がうまれる。別の、真逆の、それはそれでいいと思ってる。
ま、そうだな、質問の答えをいうと、全部記憶にある。悔しい回とかもあったし、あーそれ(本番で起こっていた事に)俺気が付いてないな、って。
黒白メンバーでは自分だけ音楽家だから、やっぱり知らない世界ってこともあって、そこはすごい勉強しようって気持ちがある。回を重ねるごとに信頼が増していって、なんやろね、わからんけど、年数重ねてきた漫才師みたいな。
今野:いやあそう、ほんとそうなんですよねー。やりだすとネタが出できちゃうみたいなかんじですからね。これは普段演劇やってるだけだと体験できないでしょうね。これだけ同じ演目を重ねるってこと…しかも毎回違う場所でやっているなんていう体験をしてる人たちが他にいっぱいいるかといわれたら、いないですから。
松本:どこでもできてしまうっていうのはやっぱ強みですよね。
今野:得れない体験をし続けているんだなっていうのはありますよね。もうセリフ覚えないでも出てきちゃいますからね、ネタみたいにセリフが出てくんのが、こわっ!って思うくらい。やってるときは、からだに刻まれてんのを感じるんですよね。だから本番前に本(脚本)をみたことがない。本とかじゃなく、更新していけるかのほうが気になっています。
松本:マイナーチェンジじゃないけど、四六時中「あ、これ黒白に使えそうやな」とか考えてしまう。
今野:わかります。ばんちゃんが街歩いているときに「これ、松本さんと稲継さんに似合いそうだ!」って、黒白のこと毎日考えてるって聞いて、俺、けっこうテンション上がりましたよ。
松本:笑
今野:そういう人いるのって、すごい大きくて。「しんどくない?」って一応聞いたんすけど、「いや、なんか調子いいんすよね、ほんと」、みたいにばんちゃん言ってたから。クリエイティブに考えている状態になれる作品があるってけっこうでかいですからね。
松本:……たしかに。
今野:そうそう、考えちゃう。
松本:ほんと、そうやねえ。あー、あれいつやったかなあ、たぶんあの、大分県のフェスの時に、鼻焼いたじゃん、橋本っちゃんの。
今:うん。
話題の黒白ワンシーン
松本:それを俺がみてなくて…あーそれ俺気がつけなかった。みたいな。
今野:んわはは(笑)ま、気づいた人はみんな俺が敵だったからな。
松本:あと、たぶんやりはじめて間もないころに、稲継さんとかしほみん(中野さん)が、お客さんの目を完全に1人1人ロックオンしてその人に向けてやるって言ってて。そのへんの差とかが、けっこうおもしろくて。それこそはじめの話に戻るけど、人と一緒にやることが自分の中であーそうか、って腑に落ちて。こういう1人1人の違いとか。ま、自分はゆったらさ、変わってない部分もあるから、もちろん。
今野:そう、みんなそうだと思います。
松本:ひとりひとり、俺に対してこういう動きするんや、とか。
今野:うん。
松本:こういう関わり方してくるんや、とか。この人はなんもからんでこないなとか。これには反応するんやな、とか。たぶんそれぞれの役割もあるんだろうけど。おもしろいポイントなんじゃないかな。場所でも変わるから。
今野:そうですね、まったく違うから。
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対談②へつづきますっ→→→