ヒマラヤ物語-5 花青いケシを追い求めて
vol. 9 2024-04-12 0
かつて青いケシは伝説の花として語り継がれてきました。
それはヒマラヤの標高 5,000m付近に咲くため、高峰を目指す登山者しか目にすることができなかったからです。現在でも私が撮影した青いケシの咲く場所へは徒歩で10日かかります。
ヒマラヤの青いケシと言えば通常「メコノプシス・ホリドゥラ(Meconopsis horridula)」を指します。この花は青く透き通り、標高が高くなるとともにその青さを増します。青いケシは標高 4,700m付近から 5,200mを超す高地まで咲いています。そこでは7月でも雪が降ることがあり、自然環境は植物にとって過酷です。ヒマラヤの夏は短く、あっという間に過ぎていきます。しかも夏は雨期なので開花に必要な日照時間は更に短いのです。
【写真1】メコノプシス・ホリドゥラ(Meconopsis horridula)Cho Oyu BC.5200m
そんな環境に適応した植物たちは短い夏を謳歌するように咲き競います。背丈のわりには花が大きく色鮮やかなのは昆虫を呼び寄せるためでしょう。私は標高 5,000mを超えるヒマラヤの高地には植物はほとんど生育していないと思っていましたが、それは間違いでした。それだけに植物たちの生命力と色鮮やかな美しさを見たとき、その姿に感動したのです。
【写真2】ヒマラヤに咲く色鮮やかな植物
これまでゴーキョ周辺に咲く植物を撮影してきましたが、今年からランタン山域の花を撮影することにしました。新しい花との出会いに心が高鳴ります。牧野富太郎博士が花たちに寄せた愛情はこのようなものだったのでしょう。7月12日に出発、8月3日に帰国する予定です。撮影の成果はクラウドファンディングの写真展でご覧下さい。