【イベントレポート】2月13日開催 山田洋次監督・犬童一心監督マスタークラス
vol. 13 2024-02-14 0
みなさん、こんにちは。
本日は、昨日開催されたイベントの様子のお届けします!
昨日 2月13日、タル・ベーラ監督を敬愛する山田洋次監督が、犬童一心監督と共に、FUKUSHIMA with Béla Tarrの会場となっている福島県双葉郡葛尾村のみどりの里せせらぎ荘を訪れ、受講生に向けた公開マスタークラスが開催されました。
左から:山田洋次監督/ 犬童一心監督
二人飛んで:福永壮志さん/大浦美蘭さん/シュ・ジエンさん/ ロヤ・エシュラギさん
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【FUKUSHIMA with Béla Tarr /福島映画教室 2024 山田洋次監督・犬童一心監督マスタークラス】
【日 程】2 月 13 日(火)
【場 所】みどりの里せせらぎ荘(葛尾村落合菅ノ又6−5)
【登壇者】タル・ベーラ監督/山田洋次監督/犬童一心監督/ロヤ・エシュラギ/大浦美蘭/シュ・ジエン/福永壮志
【時 間】
15:00 「たそがれ清兵衛」上映
17:30 山田洋次監督マスタークラス 聞き手:犬童一心監督
18:45 終了
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昨日のイベントには、屋外で撮影中の3人を除く4人の受講生、福永壮志さん、大浦美蘭さん、シュ・ジエンさん、ロヤ・エシュラギさん、そして近隣住民の方を含めた約50名の参加者が会場に集まりました!
監督作『たそがれ清兵衛』(2002)の上映に続き、始まったマスタークラス。
地元・浪江出身で、震災当時 16 歳だった大浦さんは「福島のことをドキュメンタリーとしてどう扱ったらいいのか、年々、わからなくなってきていた。新しい表現が見つかるのではと応募した」と語ってくれました。
また、今回が4度目の来日となるエシュラギさんはタル・ベーラ監督との縁を振り返り、会場に向けて制作中の映画への出演者を募る一幕も。
犬童一心監督からは、今回のイベント開催までの経緯が語られました。「ハマカルアートプロジェクト」が芸術家の滞在型制作を支援する「アーティスト・イン・レジデンス」プログラムを開始し、その採択プロジェクトの中にかつて山田洋次監督からその作品のすばらしさを教えられた「タル・ベーラ」の名前を発見して驚いたこと、さらに、タル・ベーラ監督の訪日を知った山田監督の「映画魂に火がつき」今回の出会いが実現したと語ってくれました。
そこからは山田洋次監督も加わり、本格的にマスタークラスが始まります!
左から:山田洋次監督/ 犬童一心監督
まずは山田監督が「タル・ベーラ監督は謎めいた伝説の人物。こんな素敵な機会はないと思い、やって来ました。こういう人とは深い話をしなくても会うだけで意味がある」と、直前の会談を振り返っていました。
さらに、タル・ベーラ監督の『ニーチェの馬』(2011)について、学生時代に見たフェデリコ・フェリーニの『道』(1954)を見た際の驚きと感動に重ね「映画の技術を華麗に使うのではなく、モノクロームで描く地味な親子の話で、こんなにも深い感動を与えることができるのか、こんな映画ってあるんだ」と感じたと、当時の印象を語ってくれました。
犬童監督は92歳の現役監督である山田洋次監督のキャリアを振り返るには時間が足りないとしながら、「若い監督たちのためのマスタークラスなので若い頃のお話を聞きたい」とトークをスタート。
山田監督が松竹撮影所の助監督時代の思い出や、小津安二郎作品への思いの変化などを振り返るシーンもありました。
自身、監督には向いてないのではと思った時期もあったけど、助監督としてついていた野村芳太郎監督が実力を認めてくれていることを知って力を得たこと、また、同じく野村監督の勧めで、黒澤明作品などで知られる脚本家の橋本忍と共同作業した際のエピソードも披露してくれました。当時の撮影所ではすべての助監督が監督に昇進できたわけではなく、山田監督の同期8人のうち、監督になれたのは2人。ようやく監督としてデビューが決まったものの、デビュー作のクランクインを前にどう撮ればよいかわからなくなってしまった際にも野村芳太郎監督を訪ね、「スタッフが寄ってたかって教えてくれる。スタッフを信頼できるかどうかが大事だ。映画監督にとって信頼というのは道徳ではなく、才能にかかわる」とアドバイスされたそうです。
最後に犬童監督からこれまで数多く作ってきたコメディへの思いを尋ねられた山田監督は「絶望している人に対しては励ましの言葉というものがあるが、本当の絶望を感じている人はなかなか立ち上がれない。しかし、大笑いをすると、明日も生きていこうと思える。ただ、笑いは人間を勇気づけるけれど、とても難しく、演出家、俳優には才能がいる」と語ってくれました。
終了後の質疑応答では、受講生の福永壮志さんが「いつ自分が監督としてやっていけると思えたか」と質問
山田監督は第3作の『馬鹿まるだし』(1964)を例に挙げ、スタッフが集まった試写で誰も笑わず、自身も面白いと思えなかった作品を、劇場でお客さんが大笑いしながら見ていると知って自信を得たと当時の気持ちを教えてくれました。
山田監督に質問をする受講生の福永壮志さん
大浦美蘭さんからは「もし、学生時代に自由に映画が撮れたらどんなものを撮りたかったか」と聞かれると、学生時代は観念にこだわりがちだったと回想し、「映画は映像だから形がないといけない」回答。
タル・ベーラ監督も、日々のワークショップの中で受講生たちに「あなたがなにを撮りたいのか『見せて』ください」と繰り返し声をかけています。山田監督の回答は、そんな二人の巨匠の言葉が重なった瞬間でした。
また、初めての長編作品のシナリオを執筆中というロヤ・エシュラギさんがアドバイスを求めると、黒澤明の『生きる』(1952)を例に、構成の大切さを丁寧に説明してくれていました。
昨日、みどりの里せせらぎ荘で行われたマスタークラスは、まだ雪が残る山間の村に、山田洋次監督の映画に対する情熱が温かく伝わる貴重な機会となりました。
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【FUKUSHIMA with Béla Tarr】は、2月19 日(月)まで続きます!
次の一般公開イベントは2月18日(日)に行われる【成果報告会・上映交流会】です。
ありがたいことに、イベントの参加チケットは完売となりました。
ご参加くださる方、会場でお会いできるのを楽しみにしています!
また、ご参加いただけなかった皆さんにも、こちらの活動レポートで当日の様子をお伝えできればと思っております。
今回のレポートは長文でしたが、最後まで読んで頂きましてありがとうございました(^^)
皆さま、引き続きご支援よろしくお願いいたします。