辻信一より、ラダックでの「しあわせの経済」国際フォーラム
vol. 8 2019-09-29 0
みなさん、昨日、標高3500〜3600メートルのインド、ラダックでの「しあわせの経済」会議から戻ったばかりの辻信一です。カイくんも、アメリカでのスタディツアーから戻ったかな?
ラダックでの集いは素晴らしいものでした。敬愛するサティシュ・クマール(イギリス)、マニシュ・ジェイン(インド)、アシッシュ・コタリ(インド)、レベッカ・マルタサベッジ(US)をはじめとしたラダック外からのゲストスピーカーたちもさることながら、ぼくが特に強い感銘を受けたのは、何といっても、ラダックからの多くの発言者たちの言葉だった。自然保護、教育、ドキュメンタリー映画、宗教、農業といったそれぞれの分野で活躍する30代〜50代の発言は、みな、深いエコロジー思想とスピリチュアリティにしっかりと支えられた、ラダックの空気みたい透明感あふれるものばかりだった。
また参加者の大半はラダックとインドを中心とする若者たちで、これもまた日本を含む他の国々でぼくが経験した会議と大きく違う点だった。若い世代の意識はしっかりと、脱還元主義、脱グローバル、脱物質主義、脱成長主義の方向を向いていて、かつ生き生きと、楽しそう。
もちろん、ぼくにとって、サティシュと過ごした数日間は宝物のようだった。毎朝、一緒にチャイを飲んだり、すくそこで草を食べてる牛のミルクで作ったヨーグルトに、作りたてのアプリコットジャムを混ぜて食べたり。最近できたラダック女性の組合が作った100%パシミナの毛糸の帽子を買ったサティシュは嬉しそうにそれをずっとかぶってた。ラダックという小さなヒマラヤの地域で起こっていることが、世界に大きなインパクトを与えうるということを彼も実感したようです。
会議の翌日のエクスカーションで行ったシャラー村は、ぼくが10年前から何度か訪れてきた美しい村。そこにサティシュを含む20数名で訪ねることができたのも、ぼくにとっては幸せだった。この10年で大きな変化が起こっていて、そこには辛く悲しいことも少なくない。でも、幼い子どもたち、20名ほどの長老を含む村の女性たちとの交流・対話の場は特に感動的で、ああ、ここにはまだちゃんと古き良きラダックが生きており、ただ人々がそれに気づいて、ここにもう一度立ち戻ってくれば、世界にはまだまだ希望があるんだ、と恐らくはそんな感慨を抱いて、多くの人が涙ぐんでいたっけ。
今回健康上の理由で来られなかったヘレナのビデオによる開会の挨拶が、本当に素晴らしかった。多分、自宅に座っていてリラックスしていたせいか、ヘレナの言葉は優しく、大きく、柔らかいブランケットみたいに、会場に集まった多様な人々の心を丸ごと包んでくれた。そんな感じで、これまでなんども彼女の話を聞き、また文章を読んできたぼくやサティシュも、大感激したものです。いや、ぼくらふたりだけでなく、ぼくが話した人みんながそう言ってた。今回のラダック会議はまさに、「しあわせの経済」や「懐かしい未来」の里帰り、だったんだ、と痛感しました。
会議の間、特にラダックの人たちの発言を聞きながら、何度も、ヘレナがこの地に、そして人々の心に残してきたポジティブなインパクトの大きさを改めて感じた。そしてローカリゼーションという言葉の意味がそこにこそ、明瞭に表現されていると。また、この数年のローカルフューチャーズの活動が着実にこの地に根を張って、そこからいろんな目に見える成果が実を結んでいること。毎年ここに通って活動してきた、アメリカ人のアレックスやオーストラリア人のヘンリーはもうラダック語を操って、人々の中にすっかり溶け込み、深い信頼を得ている。ローカリゼーションのムーブメントのあり方の見本があると思った。
今回の会議の会場は、一昨年の東京での「しあわせの経済」フォーラムにも参加してくれたゲシ・コンチュク師が学長を務める佛教大学で行われた。あの時彼と同行した映画『氷河の羊飼い』の監督、スタンジンは、今回の会議開催の現地主催者として活躍してくれた。
彼の新しい映画も完成し、これをこの冬から来年春にかけて日本で上映するよう、彼やジュレー・ラダックのスカルマと相談してきた。
そのスカルマも現地スタッフとして大活躍だった。ジュレーラダックの日本人スタッフやボランティアが現地の人々と共同で実現しているのが、廃れかけていた重要な伝統穀物ソバの復活と普及。このプロジェクトはとてもうまくいっていて、首都レーには今年からいくつか、そのソバを使ったメニューを持つラダック伝統料理レストランが登場した。このソバの種子をぼくも少し持って帰ってきたので、希望する方には差し上げたい。(そういえば、横田農場のスペルト小麦のタネもいただいてあるので、希望者は手をあげてください)
スタンジンもスカルマも、2年前のあのフォーラムでインスピレーションを受けたことが今回のラダックでの会議につながった、と言ってくれている。うれしいことです。今度はそのラダック会議で受けたインスピレーションを、11月のぼくらのフォーラムの成功へとつなげていこうと、ぼくは心を新たにしているところです。
なんか、あれだけ高くて空に近いところに一昨日までいたせいか、気持ちが今も高ぶってる辻信一でした!
辻信一
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