【残り9日】映画は海を越える
vol. 112 2021-01-07 0
111日目終了。
カウントダウンが始まった初日に伸びないというのは胸が痛い。
けれど、そんなことで落ち込んでいる暇なんかない。
いよいよ残り日数が一桁になったのだから。
まずは次の130人。10人ごとにキリ番報告を重ねていくしかない。
映画「セブンガールズ」のアメリカ・カナダでの配信が始まった。
去年末ぐらいから準備していたことだ。
アメリカ・カナダ在住の日本人に向けた映像配信サービスなのだと思うけど。
英語字幕も送ってあるから、日本人以外も楽しめるはずだ。
実はこの配信は120分ヴァージョンでの配信。
映画「セブンガールズ」を海外映画祭にエントリーした際に編集した2時間版。
あの時は海外映画祭にノミネートまであと一歩まで迫ったのだけれど。
数年越しで、ようやく海外の皆様に届けられることになった。
ちなみにこの2時間ヴァージョンはほとんど誰も観ていない。
さらに言えば、字幕付きバージョンを観ている人は数えるほどしかいない。
そもそも字幕製作の過程はほぼ一人だったということもある。
海外映画祭や海外配信の担当さんと、僕しかいないんじゃないだろうか。
実は英語字幕は148分の頃に作成した。
その後、映画祭へのエントリーの中で2時間のものが欲しいと言われて字幕も削った。
ちなみに、日本国内で公開したものは144分。
最初に完成したものから更に4分削っている。
だから手元にある字幕データは148分のものしかなかったから、改めて年末にデータを創った。
数日間かけてタイムコードをわりだして、再度書き出してという孤独な作業の繰り返しだった。
正確には海外に持っていくのは初めてではない。
カンヌやヴェネチアのマーケットには出展している。
マーケットというのは世界中のバイヤーが集まって映画を探す。
バイヤーは作品を探して、それぞれの映画館やケーブルテレビでの配信などを目指す。
海外の面白い作品を掘り出して、上映権を誰よりも早く交渉するそういう場所。
だから一般公開とは違う。
ようやく海外で配信だけでも出来るというのは悲願でもあった。
僕がはじめ「シモキタから世界へ」と言い出したとき。
本当に僕の目の前で何人もの人に笑われた。
近しい人で言えば、親戚にだって笑われた。
出演する仲間たちだって、ほとんど信じてなかった。
そんな笑い声を聞きながら、僕も一緒に笑った。
馬鹿みたいでしょ?って笑った。
一緒に笑いながら、でも本気だぜ、今に見てろよって思ってた。
だから本当にあと一歩のところまで行った時は心臓が爆発するんじゃないかと思った。
行けるかもしれないというあの瞬間は多分、忘れることが出来ない。
でもアメリカ・カナダには行ったよ。
ほら、笑うようなことじゃなかったよ。
映画は国境を越えていくのだ。
今回の映画「演者」も世界を目指す。
もうすでに、何人かに笑われている。
そして僕はもう一度一緒になって笑ってる。
ベルリンかカンヌだなぁなんて言いながら。
映画「セブンガールズ」で僕は多くのものを得た。
企画段階から公開、配給までの全ての経験、出会ってきた全ての人たち、お客様。
そして何よりも、劇団でありながら映画製作を見事にやり遂げた仲間たち。
きっと僕たちにとっては大きな大きな成功体験なのかもしれない。
でも僕個人にとっては、敗北の体験でもある。
海外映画祭にノミネートされなかったこと。
全国での上映にはまだまだハードルが高かったこと。
無名というだけで突き破ることが出来ない壁があったこと。
あれだけ動員で健闘しても、出演者の誰にも声すらかからない現実。
「やっぱり演劇だね」という感想の数々。
そこから次に向かうビジョンを持てずに、そこで満足しようとしている何かを感じたこと。
嬉しかったこと、幸せだったことの、何倍も悔しかったことがある。
けれど僕のような生き方をしていることには一つだけ良いことがある。
負けることを恐れていないことだ。
僕の人生など、敗北の人生だと言ってもいい。
そのぐらい何度も負けて、何度も何度も悔しい思いをしてきた。
負け癖がついて、けっ!なんだよってなっちゃう奴もいるだろうし。
そもそも勝負してないもん、負けてないもんと、そっぽを向く人もいるだろう。
でも、僕の歩いてきた道はそうじゃない。
負けっぱなしでは絶対に終わらない。
負けたのなら負けた理由を考えて、反省して、次に生かす。
それを繰り返すこと、トライ&エラーこそ、続けることだった。
だから敗北は教科書でもある。
僕は映画「セブンガールズ」の敗北体験から反省点を抽出するべきだと思っている。
僕は確かに多くのものを得た。
それを得ただけですますわけにもいかない。
僕は確かにたくさんの悔しい思いをした。
それをそのままうっちゃっておくわけにもいかない。
そこから逃げるなら、やめちまえってことだ。
別になんにもわるいことじゃない。
今も作品を愛してくれるお客様がいること。
こうして、海外での配信が決まったこと。
劇団製作の映画がその後いくつも生まれたこと。
上映してくださった映画館さんたちにとても喜んでもらえたこと。
その全てはもちろん大成功だと胸を張るよ。
僕がやりたかったことのほとんどは達成していたのだから。
映画には想いがそのまま映るのだということを確信できたのだから。
ただ見逃したくないし、そこで逃げるのはもう自分の生き方じゃないってことだ。
今、参加してくださっている皆様も、拡散の協力をしてくれる皆様も。
笑ってくれて構わない。
僕も一緒に笑う。
夢みたいなこと言ってるぞ、この人!
そうやって後ろ指をさしてもらっても全然問題ない。
112日目が始まる。
ついに残り日数が一桁になった。
なんとか届いて欲しい。
どうか伝わって欲しい。
冗談じゃないんだ、本気なんだということが。
誰だって笑っちゃうようなことに本気になろうとしてるんだってことが。
願うしかない。
祈るしかない。
届け届けと。
そしていつか一緒に何百倍の大声で一緒に笑うんだ。
あの野郎、やりやがった!!って一緒に笑うんだ。
だって映画には想いがそのまま映るんだって僕は知ったのだから。
一緒に世界を目指そう。
あと一人、あと一人ずつの思いを映画に。作品に。
映画は海を越えるのだから。
小野寺隆一