花が太陽の方向を向くように
vol. 32 2020-10-19 0
思った通りだ。
一週間なんてあっという間に過ぎていった。
劇団の解散公演からもう一週間も経っている。
信じられないほど日常は侵食してくる。
観劇してくださった皆様へのプレゼント用のメッセージ動画の撮影をする。
撮影と同時にインタビュアーもした。
事前に用意した質問の答えから、ほんの1、2歩だけ心の中に進む。
そこから出てきた言葉や、一瞬の迷いの表情に全てがあった。
それはきっと届くだろうなぁと思った。
速めに編集して、皆とお客様に届けたい。
解散についての話。
22年間も続けていれば、一言で解散なんて出来ない。
この舞台の収支決算だって年末近くまで続く。
ただ皆で集まる予定はもう来週だけになった。
22年間、毎週日曜は稽古という生活が終わろうとしている。
それぞれがどんな区切りにするのかはわからないけれど。
本人たちだってまだ不確かなはずだ。
新しい日常がやってきた時に、もう一度何かを感じるのかもしれない。
僕は今も自分のペース、スピードを落とすつもりがない。
それはともすれば、皆を置き去りにしてしまうようなことだ。
けれどそれを気にしてペースを遅くするようなことだけはしてはいけない。
これまでだってずっとそうだった。
一歩も二歩も先に進んでいく。
影も踏ませないつもりで進んでいく。
皆が皆を気にしていたら、結局、どこにも進むことはできないのだから。
世界を目指すのだというのであればなおさらだ。
初稿のリアクションをキャストから様々にもらって。
とんでもない映画が出来るんじゃないかという言葉が数人から届いた。
イメージの共有がすでに出来ていた。
ト書きにどこまで伝わるかわからないけれど必死に書いた言葉が伝わっていることが嬉しかった。
そのシーンで狙っていることまで共有できていた。
見たこともない映画が出来ると思ったなんて言葉もあった。
もちろん、まだ読めていないキャストもいるし、全てではないけれど。
今はその言葉だけで充分だし、第二稿にむかうための言葉を浴びるほどもらった。
一番驚いたのは、色のイメージまで二人のキャストから言われたこと。
これって、こういう色なんじゃない?と。
一人だけならまだしも、二人というのは強烈だった。
シナリオから映像までイメージしているということだ。
22年間も切磋琢磨してきたからこその通じ方なのだと思う。
インスピレーションは時に、出会ったばかりでも通じ合うことがある。
感覚的なものだ。
けれど、積み重ねてきた年を重ねた夫婦のような通じ方は、軽くそれを凌駕する。
こういうものを財産であり、宝なのだと思えなかったとしたら、自分の否定でしかない。
話をしていると作品至上で進むことに躊躇しそうになる。
ああ、こんなに考えてくれるなら、もっと何か他のシーンも、、、と。
でも、それすらも先読みして言ってくる。
作品をつきつめればいいのだと。
ツーカー、阿吽、なんでもいいけれど、優しさを出す前に叱咤が来る。
解散について話した日。
様々な過去の思い出を振り返った日。
その日に未来の話もしようぜと強く言う奴らもいた。
それは光だ。
花が太陽の方向を向くように。
僕たちは光の方を向く準備をしなくてはいけない。
いやそうじゃない。
前に進むことこそ、きっと本当の解散になるのだと思う。
小野寺隆一