制作日記 13「サイコリザード」CD2-8
vol. 25 2024-05-11 0
BAKI (vocal & blues harp) and "D runkard Ball" (guitar & kazoo 澄田健 / bass "Crazy" Cool-JOE / drums 湊雅史)
遅くなりまして申し訳ありません。今回は一月以上前のレコーディングの模様を制作担当イトハルがお届けします。(本当は現在、岡野さんと小西さんによるミックス作業が進行中。制作チームはアルバムジャケット、特典グッズの制作などでてんやわんやの日々を送っております)
4月9日(火) 雨、強風
前日まで花見日和と言われた東京に冷たい雨が降ったこの日、いつも電動自転車でスタジオに来る岡野さんだがこの日はSOSが出て車で送迎。強風で横殴りの雨の中、途中で追い抜いたポンチョを着て自転車を走らせる人が大変そうだ。
11時に岡野さんと一緒にスタジオ入りすると、すでにドラムセットが組まれ、マイキングも完了している。今日はコニヤンがLJ仕事にてお休み、エンジニアはこちらサウンドダリのチーフエンジニア橋本さん、アシスタントはいつもの荻原さん(このレコーディングに関わる全ての人の中での最年少)です。
デルジとも僕とも30年以上の仲になる澄田健さんが今日はバンマスで、既にコントロールルームにビンテージのHIWATTのヘッドを置き、隣のブースにはスピーカーキャビネットをセット完了している。澄田、JOE、湊の3人は3年ほど前から"D runkard Ball"というトリオで解散やら再結成を度々繰り返す、愉快な?仲間たち。2日前のライブでまた解散したらしい(どういう事?)。
コントロールルームで作業が進む内、喫煙所でおしゃべりしてるうちにJOEさんがずぶ濡れでスタジオ入り。タクシーで来ても最後に濡れてしまう今日のお天気。
実はJOEさんと仕事で絡んだ事はないので「初めまして」のご挨拶。ISSAYはJOEさん主催のイベントにたびたび呼んでもらっていて、澄田さんも一昨年の神戸でのJOEさんイベント帰りに新幹線で帰るISSAYを見送ったのが最後になったと悔やむ。
ロビーでサンドイッチをみんなでつまんでいると、サウンドチェックのお声がけがあり、早速3人は持ち場に。湊さん前回(マンモスの夜)はご自分の24インチBDのLudwigのセットを運んできてくれましたが、この日は手ぶらで来たようで、スタジオ秘蔵の18インチのバスドラとスネア(ともにグレッチ)、16インチのフロアタム、ハイハットとシンバル2枚だけという非常にシンプルなセット。
JOEさんは長年愛用しているというGreco SPACY SOUNDのベース、全身を黒で固めたスタイルに金髪とサンバーストボディーが良く映える。まさに正統派のロッカーそのもののようなお人で風格が違います。
コントロールルームの澄田さんは2週間ほど前に自転車で転んで右手人差し指の靭帯損傷をしてしまい、それでもサムピック(親指につけるピック)でライブをやり続けその腕前を磨いてこの日に臨んでくれました。
はてさて収録開始予定の12時近くなってもBAKIさんが現れずみんなちょっと心配に。澄田さんが電話をしてみるが繋がらない。メッセージアプリで連絡が来たのは12:15頃、なんとこの強風雨の中これからバイクで向かうという。どうかお気をつけてとメッセージを返信して30分後、まさに濡れ鼠になったBAKIさん現る!
体育館裏と呼んでいる喫煙スペースにたむろしていた我々おじさんたちも早速持ち場に。
さあBAKIさんも準備完了、今日のボーカルはピアノブースでの録音、ピアノの上にはブルースハープも置かれました。
13時すぎに早速テイクワン! イントロから踊り出したくなる様なスネアのビートを中心に据えたドラム。そこにファンキーなベースとギターが絡んでくる。そしてBAKIさんはすでに全開モードだ。間奏ではブルースハープとシャウトのハイテンションなインプロビゼーションが始まって、大音量で聴いているから思わずワオ!ってなる。そして最後にBAKIさん「ISSAY!」って叫んだ?
そして早速コントロールルームでみんなでプレイバック。そして岡野さんが一言「もうこれでいいんじゃないの〜!」と言うわけで、ドラム湊さん、ベースJOEさん、そしてボーカルBAKIさんまでも何とワンテイクで終了!(岡野さんがいつもテイクワンにこだわる理由を知りたい方は「岡野ハジメ エンサイクロペディア」という本に詳しく書いてありますので是非そちらもチェックを)
ギターの澄田さんだけ、流石に指のこともあるのでテイクワンをベースにしてところどころをダビングすることに。シーナ&ロケットの鮎川誠さんのブラックレスポールを弾くことが許された唯一のギタリストとも言われている澄田健のR&Rギター、負傷にもめげずサムピックを駆使しながらの演奏は見事でした。
続いてBAKIさんのブルースハープを録って、午後4時前には全ての録りを終了! 今回の全レコーディングセッション中、たぶん最短です。
ほどなく、湊さんJOEさんのDEAD END組は仲良く湊さんの車で早々にスタジオを後に。
コントロールルームでは岡野さんと橋本さんでこの曲にどのリバーブが合うのか色々試して、ガレージパンク風なサウンドの模索が続いている。
澄田さんとBAKIさんにその間にお話を伺うことができました。
澄田健さん
このメンバーで一番デルジべットと付き合いが長いのは俺で、もう参加させてもらっただけで十分というか。やっぱり特にほらこの曲はライブでもしょっちゅう聞いてたし、すごい有名というか代表曲でもあるわけだから。ギンギンのDer Zibetの完成度の高いサウンドにいかにチャレンジするかって(笑)。でも色々考えた末に、普通にやろうと。話もらった時にこの曲浮かんだの正解だったなと思ってます。
〜3 人のこのバンド "D runkard Ball" に関してちょっと説明をおねがいします
JOEが毎年やってたイベントがありまして、そこで湊とJOEと、BAKIさんもいたりとかしましたが。それで音出して、よく飲みに行ってたわけですよ。コロナ中も(イベントなかったけど)まあちょっと会おうかって。コロナの時は割とこう暇だったりとかもあって、ずっと飲んでるばっかりもあれだからちょっとなんかやらないって俺が言い始めて。それでセッション的に始まって、解散と再結成を繰り返し(笑)。まあそういう感じです。2021 年かな? やろうってぜ、いうんじゃなくてただ音を出したいなあっていう。それが最初でございます。
〜澄田さんがデルジと出会ったのはいつ頃でしたっけ?
最初に会ったのは「思春期」だっけ。『4 D ビジョン螺旋階段』の TD をやってて、そこにこせやん(小関純匡〜今回「マンモスの夜」に湊さんとツインドラムで参加)とスタジオに遊びに行ったんですが、それが最初ですね。でもライブを見たのはそのもうちょっと前かな。小関が岡野さんとやってたFLESHのデビューライブかな?Egg-manのオールナイト。そこにデルジがトップに出て、こんなバンドがあるんだったら日本も捨てたもんじゃないなと本当に思ったのよ。この人たちと友達になりたいと思いまして。そこから長い付き合いが始まったわけですね。たまたま住んでたとこが近かったし。HALさんとかMAYUMIさんとか、DIEちゃんもその辺りにいたし、よく遊びに行ったし旅行にも一緒に行った。
対バンとかあったかもしれないけど。まあイベントで一緒にっていうのは何回か。デルジがやってたパワステ(日清パワーステーション)のイベントでメンバー各々のバンドが出るっていう機会があって、PUGS(ヒカルや岡野さんのバンド)にHALさんもベースで出たりとか。俺はMAYUMIさんと麝香猫のデビルとパッセンジャーズのミキちゃんと4 人で。ビバビバハバロフスクっていう三瓶真弓(MAYUMIの本名)の命名ですけど。あとはLOOPUS(澄田、宙也など)以前くらいにチッタで宙也名義イベントみたいなのをやって、そこでジュネさんとISSAYさんと入れ替わり立ち替わりでやったのを覚えてる。一緒にやったのは3曲くらいかな?カバーを。あとはJOEのイベントで。一昨年の夏前だったかな? それが最後になっちゃった結局。「じゃあお疲れ様」ってISSAYさん先に帰るって新神戸で握手して。それが最後だったね。
デルジベットが一度解散する前は、樋口沙絵子、さえちゃんのバンドやってて俺が、ヒカルさんがプロデューサーとして現場に来るわけね、ちょっと怖かったよ(笑)。93〜94年ぐらいですね。佐久間学(同じくヒカルがプロデュースしていた)なんかともよくパワステ行ったりとかしてて。3 回に 2 回はデルジ絡みみたいな。打ち上げ行って最後は三瓶家で朝までとか。
ISSAYさんとはセッションの時ぐらいかな。デルジの曲をやるっていうのは初めて。多分みんなそうなんだよね。初めて演ったけど難しいね。独特です。まあバンドですよね、当たり前だけどね。おいそれとできるものではないっていう。
BAKIさん
〜ISSAYともっと話がしたかった、と以前お聞ききしましたが
GASTUNKとデルジベットは対バンとかもしたことなかったけど、何故かヒカル君の顔知ってたんだよね。そういうので一応デルジベットっていうのは知ってたけど。写真とか見るとさ、もうまさに日本のDavid Bowieみたいな感じでかっこいい人だなと思ってたけどね、単純に。同時代でいつも雑誌とかで見るような。向こうにしてもそういうのがあったかもしれないけど、お互い同じ時代をこう長くやってきた人っていうのは、全然会ったことなくてもなんか会うと嬉しかったりして。ISSAYも同い年だし。だから元気にやってるなー、みたいにお互いそう思う。David Bowie大好きだし自分。ちょっと羨ましかったね、かっこいいなと思ってたわけ。自分にはないものだから。
歳とってもね、なんか雰囲気あってさ。特別な人なんだろうなって、そういう印象かな、俺からすると。話したことないから余計ファンの人が思うみたいなISSAY像を持ってるだけかもしれないけど。ただ偶然一回ちょっと会ったことあるね「あ、どうも』なんて言って。なんかすごい感じが良かった。
〜BAKIさんもカリスマ的ボーカリストと言われる人であって、ISSAYもある種のカリスマであったと思うんですけど
そういうのは自分が思うことじゃないけど。じゃあ言われない人と何が違うのか?俺はよくわかんない。若い時からそう言われ続けてるから、俺とかだって。別に俺言って欲しいわけでもなんでもない。ISSAYだってそうだったと思うけど、でもやっぱりそれだけ個性的な存在なんじゃないかなって。もし自分が ISSAYと共通するところがあるなら、それはそれで嬉しいしね。何か上手い、下手も超えた何かがあるんだろうなって、みんなが感じるものがあるんだろうな。表現する人としてISSAYみたいな力を自分も持ってるなら、そういうのは本当に嬉しいしね。
〜今回この曲を歌ってみていかがでしょうか?
別に何の違和感もなくできたし、普通にスッとね。すごく激しさも持った人だなあと思った。自分と遠くないってね。シャウトする感じとかも全然自分と遠くないし、歌詞がロックっぽいというか、一番はそこなのかもしれない。YouTube でライブのやつあれ?かっこよかったもんね。ストレートでね。
自分は今回「ISSAY追悼」と言うか、参加した一番の理由は、「お疲れさん」という気持ちかなあ〜 . . . . ですね。
〜ありがとうございます
かくしてこの日は早々に終了. . . でも続きがありました。4月30日、澄田さんが今度はアコースティックギターを持って再びスタジオに参上。早速アコースティックギターを前回録ったバンドサウンドに合わせてダビング、. . . してみましたが「これ要るかな〜?」と岡野さんからダメ出しが。
それならもう一つアイデアが、といって澄田さんがポケットから取り出したのがカズー。早速試してみることに。カントリー音楽などで面白みのあるサウンドをもたらすことがあるカズーですが、な、な、なんと!
まるでバリトンサックスのような響きをもたらしているではありませんか!
これに一番驚いたのが岡野さん。「俺カズー練習しようっと。バリトンサックス呼ばなくてよくなるもんね。マスターしたら誰かレコーディングに呼んでくれるかなあ?」と大いに盛り上がってこの日のレコーディングも終了。さあ、ミックスをお楽しみに!
この日カズーの写真を撮るのを忘れたので、後で澄田さんに家で撮って送ってもらいました。
text: イトハル