制作日記 5「深海魚」CD2-7 完全版
vol. 17 2024-03-18 0
3/29更新:メンバー・写真・本文の追加
Vo. Ken-ichi (Valentine D.C.) / Gt. Yukino (krishnablue) / Ba & Cho. JUN (Valentine D.C.) / Dr. & Cho.梅田一哉 (from DER ZIBET) / Arr. & Key. DIE (Ra:IN) / Cho. 岡野ハジメ / G. Solo 広瀬"Jimmy"さとし (44 MUGNUM / ex. Φ)
3月17日(木)快晴+強風
東京にいよいよ春がやって来ました。かなり強い風が吹いているというのに、もはや寒くはありません。こんなにも陽気の良い日に昼から地下スタジオにこもってしまう、というのは少しもったいないような気もしつつ…今日はDER ZIBETの6thアルバム『HOMO DEMENS』(1990年リリース)に収録されていた、ライヴでの鉄板チューン「深海魚」のレコーディングです。
今回、「深海魚」のアレンジを手掛けてくださるのはこのチームのバンマスでもあるDIEさん (Ra:IN / hide with Spread Beaver) 。ちなみに、DIEさんは『HOMO DEMENS』のレコーディングに参加されていたうえ、当時のツアーにもサポートキーボーディストとして帯同されていました。
「僕にとって、DER ZIBETとの出会いは限りなく大きいものでしたね。最初にツアーに参加させてもらうようになったのは『CARNIVAL』(1989年発売の5thアルバム)の頃で、自分の本格的なミュージシャン人生はそこから始まったって言ってもいいくらいです。ある意味、DER ZIBETは自分にとって生まれ故郷みたいなものなんですよ」(DIE)
そんなDIEさんは、今回のトリビュートで「マンモスの夜」も手掛けていらっしゃいますが、いずれの曲についてもアレンジをしていく際に心がけていらっしゃるのは以下のようなことだそう。
「音楽的な面で俺がDER ZIBETに影響を受けてきたところに関しては、ほんとにカッコいいと思ってるところなんで、曲自体やリフは敢えて変えないようにしてます。何よりも大事にしてるのは、参加してくれてるアーティストたちの中にあるISSAYさんへの想いですね。それぞれにとっての好きなフレーズとかを、ISSAYさんに捧げるみたいな。そんな風に演奏してくれたら、その時点でもうちゃんと成立するんですよ。だから、部分的に変えたりしてるところはあったとしても、アレンジの中に自分のエゴを入れるとか?そういうことは考えてません」(DIE)
もちろん、この曲でもプロデューサー・岡野ハジメさんは現場で総合監督的な仕事をしてくださっていましたが、この日のレコーディングではDIEさんがアレンジャーとして、いわば現場監督的な役割を果たしてくださっていたと言えるでしょう。
「うん、かっこいい!」(岡野)
「いいですね。じゃあ、基本これでいきましょう!」(DIE)
肩慣らしのニュアンスもあったはずのファーストテイクが、いきなりのまとまり具合をみたので、ここからはファーストテイクを土台にして各人がひとりずつ録りを重ねていく作業へと移行します。1番手はドラマー・梅田さんで、彼がfrom DER ZIBETの一員でもあるプレイヤーだということは皆さんも良くご存知のはず。なおかつ、ISSAYにとって最後のライヴステージとなった昨年7月の目黒LIVE STATION公演では、梅田さんはdieSのドラマーとしてDER ZIBETとタイバンされており、アンコールでは「マンモスの夜」をISSAY&HIKARUとセッションしていたのです。
「実は僕、もともと“ただのファン”だったんですよ。渋公ライヴのレーザーディスク(1988年発売『DER ZIBET IN CONCERT YO-YO-YO』)とかも持ってます。でも、直接DER ZIBETと出会ったのはわりと近年になってからですね。僕がこの10年くらいサポートとしているdieSが、DER ZIBETとツーマンをやったことがありまして。その時にはまさにそのレーザーディスクを持っていって、メンバー全員にサインをもらったうえ、ライヴを観ながら感動して号泣しちゃいました。HIKARUさんには“オマエ、なんで泣いてんだよ!”って笑われちゃいましたけど(笑)、それ以降DER ZIBETのみなさんには本当にとても可愛がっていただいてます。MAYUMIさんのドラムテックとして、ツアーにも一緒に連れていっていただいたりしましたし。だから、今回のトリビュートに参加させていただくことについても凄く光栄なんです」(梅田)
そして、from DER ZIBETと言えば今回の「深海魚」にはValentine D.C.のベーシストであると同時に、from DER ZIBETのベーシストでもあるJUNさんが参加してくださっているところも大きなポイントとなります。
「Valentine D.C.はデビューアルバムの『PARODY』をHALさんにプロデュースしていただきましたし、2ndアルバムの『炎と宝石』ではHIKARUさんにもプロデュースしていただいているので、めちゃめちゃお世話になってきてるんですよ。だから、from DER ZIBETに参加することになった時も、今回トリビュートのお話をいただいた時も、とにかく何か自分に“返せる”ことがあるのであれば最大限のことをしたいな、という気持ちでしたね。今日のレコーディングでも、やっぱり感謝の気持ちを音で表わしていきたいという意識がずっとありました。こうして世の中に残る音としてレコーディングに参加できたことは、個人的にもとても喜ばしいです」(JUN)
そんなJUNさんからは、ISSAYとの衣装にまつわる微笑ましい逸話もうかがうことが出来たのでここにご紹介しておきましょう。
「僕も衣装でフリルのついたのを着ることが多いんですけど、ISSAYさんってfrom DER ZIBETで僕が入っている時は必ず“JUNくん、今日は何色の着るの?”って訊いてくれるんですよ。多分、僕と被らないように気を遣っていただいてたんだと思うんです。フリル好きの僕としては、そういうところでも先輩にお世話になってました(笑)」(JUN)
いっぽう、ギタリストのYukinoさんはISSAYと音楽仲間であるだけでなく、長らく“呑み友だち”しての親交も深めてこられていた方で、先日の[Flowers for ISSAY ~ISSAY追悼 献花の会]においては、ISSAYがずっと好んでいた“GITANE”(今や日本国内では発売されていない超貴重品!)を特別に取り寄せてくださり、写真の前にお供えしてくださいました。今回のレコーディングでのプレイからも、そうしたYukinoさんからの熱く深い気持ちがひしひしと伝わってきたのは言うまでもありません。
「この「深海魚」という曲は、僕が得意としてやってきたような音楽とはちょっとジャンルが違うので、当初は“大丈夫かな”っていう不安も少しあったんです。でも、これはDER ZIBETのライヴでもずっと定番の曲でしたし、僕としてはISSAYさんのことを思い浮かべながら弾かせていただきましたね。しかも、こんな素晴らしいメンツと一緒にやらせていただけたので、けっこう気合は入れました(笑)」(Yukino)
さて、ドラム、ベース、ギターと進み、オケがここまでしっかり固まったということは。最後はやはりヴォーカリスト・Ken-ichiさんの出番です。
「ISSAYさんって、昔の自分にとっては“雑誌で見かける遠い別世界の人”だったんですよね。ところが、Valentine D.C.のデビューアルバムがHALさんプロデュースだったという縁から「ペンキ爆弾」っていう曲でコーラス参加してもらうことになって、当時は正直なことを言うと“うわー、本物が登場しちゃった!!”って思って(笑)。要は“俺が食われちゃうだろうな”って感じてたわけです。なんなら、録った後にあまりにもISSAYさんが圧勝してたらコーラスの音量を下げてもらおう、とか思ってましたもん。でも、実際のところはきっとあれはISSAYさんが僕らのことを考えてくれてたんでしょうね。ISSAYさんらしさは残しつつも、DER ZIBETでの歌とはまた違う感じで、あの「ペンキ爆弾」に合ったロック色の強いコーラスをしてくれたんですよ。その経験もあるので、今回の「深海魚」では俺も普段の歌い方とは違う歌い方を意識的にしてます」(Ken-ichi)
なんでも、Valentine D.C.では先だってのワンマンライヴで「深海魚」を追悼の意味でカバーしてくださっていたそうで、そのことも今回のレコーディングには活かされたのだとか。
「あの時点では、まだトリビュートに自分が参加することは決まってなかったんですよね。むしろ、俺としては“そういうアルバムが出るんなら参加したいなぁ”って思ってたんです。いやほんと、あの時ライヴで歌っといてよかった。あそこでつかめた感覚はかなり大きかったと思います」
結果的に、今回の「深海魚」はKen-ichiさんらしいハスキーでワイルドなヴォーカリゼイションに仕上がった印象です。曲の後半部分を盛り上げる〈Slap-Bang Wild Child〉というコーラスについては、JUNさん、梅田さん、さらに岡野さんも加勢してくださいました。
かくして、この日のレコーディングもかなり順調で実に17時50分には終了。ギターソロのパートだけは未レコーディングですが、その部分については後日と・あ・るギタリストが弾いてくださることになっております。それがどなたなのかは、また後日に明かさせていただくとしましょう。
明日は別楽曲のレコーディングです!
Text:DZTP(S) Photo:DZTP、辻砂織
ここから追記です。
冒頭クレジットにも記載しましたが、この曲のリードギターにはΦでISSAY、HALと活動を共にした44 MUGNUMのJIMMYことSATOSHI HIROSEさんのリモート参加が当初より決定しておりました。
3/17のスタジオ・ダリでのレコーディングセッションをベースにDIEちゃんが自宅で時間をかけてポストプロダクション/キーボードダビングをしてくれましたが、流石この曲をステージではデルジベットの一員として幾度となく演奏してきたDIEちゃん(その後HIDEやGLAYのサポートをしながらHIKARUプロデュースでソロメジャーデビューも果たした日本を代表するロックキーボーディストの一人)、リフなどの決め事は踏襲しながらも新しいアイデアを随所にぶち込んできてくれました。
そしてその音源が4月にJIMMYさんの元へ送られました。
JIMMYさんは大阪在住、44 MUGNUMのライブやレコーディングの合間を縫ってご自宅でレコーディングしてくれたのは4月30日のこと。その当日ご本人がXに投稿してくれたのがこちら!
本日俺はDer Zibetトリビュート、一曲分ギターソロのオンライン・レコーディングを終えました。がんばった。 Issay「うん、ジミーらしくてイイとおもうよw」くらいは絶対言ったと思う。w
JIMMYさんのギターソロにみんな大喜びでしたし、きっとISSAYも喜んでくれていると思います。
そしてKoni-yougの自宅でのミックス作業が始まったのが5月7日、岡野さん、DIEちゃんとのやり取りが始まり、最終版が完成したのが17日。実に11日間かけて完成したのがCDに収録した9つ目のMIXです。
「普段とは違う」とおっしゃっていたKen-ichiさんのパンキッシュなボーカルがグイグイ曲を引っ張っていく、破壊力のあるロックナンバーとなりました。是非大音量で聴いて頂きたい曲です。
JIMMYさん以外の収録メンバー + HIKARUという編成でお披露目予定の8/4のトリビュートライブでの演奏もとても楽しみです!
追記:DZTP イトハル