吉岡和弘弁護士からメッセージが届きました。
vol. 2 2021-07-06 0
吉岡和弘弁護士©paonetwork
津波は全てを流し失わせる。しかし、裁判では「要件事実」とか「挙証責任」などという裁判独自のルールが存在する。遺族は夜を徹して「何時何分に誰がどこにいた」、「津波は何分に学校に到達したのか」と議論を繰り返し、市教委らが開催する保護者説明会では理性的な発問を繰り返し「事実」を精緻に把握し、全て流された現場に臨んで手作りの木杭を打ち、荷造ひもを張って道路や家並みを再現し、自ら子供達に代わって校庭から裏山に駆け上がる様子をビデオに収めるなど、まさに、親たちが亡くなった子供達の「代理人弁護士」となって「事実」と「証拠」を集め、子供達と親の無念さを法廷で意見陳述し続けた。
仙台高裁は、地震が起きる遅くとも1年前の「平時」の時点で、校長や教育委員会ら子供の安全を守る職務上の義務を負担する校長や教育委員会らが、「平時から組織としてなすべき義務を懈怠した過失があった」(組織的過失)と判示し、最高裁もこれを是認した。画期的勝訴判決を手にした原告ら遺族は、「この判決は亡くなった子供達が勝ち取った判決です」と声を震わせた。
同判決報告会で講演された東大・米村滋人教授(民法)は、ハネルディスカッションの終盤で、「大川小の高裁判決がなかったら1万7000人の津波犠牲者を生んだ東日本大震災は日本社会に何も教訓を残さなかったと思います。この判決は、大川小の子供たちと1万7000人の方々を救うと共に日本社会が変われる重要な第一歩になる判決だと思います」と述べた。
我が子を失った遺族は、「走れば1分弱で駆け上れる裏山があるというのに、学校はどうして裏山に逃げるという選択ができなかったのか」と悔やみ続ける。他方で「天災なんだ。裁判すべきではない」、「我慢するのが日本人だ」などと心ない陰口が今なお原告らに投げかけられる現状がある。
寺田和弘監督は、原告ら遺族のありのままの姿を映像化する中で、地震国日本の学校防災のあり方、最愛の子を失った遺族の苦悩、心ない発言に至る日本人の法意識を問う一方、それでも原告ら遺族が「子供のために」毅然と歩み始める姿を追い続けている。そして、映画を観る私達の方が、逆に、「人間として生きる意味を教え考えさせられる」、そんな映画が出来ようとしている。
低迷する映画界で久々に期待できる映画になりそうだ。率直に言わせてもらうならばアカデミー賞を受賞した「ノマドランド」より良い映画になると私は主観的にそう確信している。そんな映画作りに皆さんのお力をお借りしたいと思います。ご協力、是非ともどうぞ宜しくお願い致します。
大川小津波被災国家賠償請求訴訟原告ら代理人弁護士吉岡和弘