わたしは「ひとり新聞社」 著・菊池由貴子
vol. 5 2022-12-03 0
わたしは「ひとり新聞社」(亜紀書房)
大槌で生まれ育ち、震災後にひとりで新聞を作りつづけた菊池由貴子さんの想いが、1冊になりました。
世間話をするように耳を傾けて取材する大槌新聞の菊池由貴子さん
震災でおよそ10人にひとりが犠牲になった大槌町。町長をはじめ40名の役場職員も亡なったこともあり、震災直後は町民たちに必要な情報が届きませんでした。
ラジオやテレビニュース、ネットや新聞など、全メディアが被災地の現状を発信していましたが、大槌の情報を知ることは困難で、被災者に必要な情報は限られていたそうです。私自身も、被災者の声を伝えることはあっても避難者に必要な情報を届けるという視点は欠けていました。
情報がなく町民の不安が募るなかで、震災翌年から「大槌新聞」が創刊されました。
取材の経験もない菊池さんが、ひとりで歩いて情報を集め、町民の話に耳を傾けて記事を書き、他紙を真似て紙面レイアウトを作り、印刷し、発行する。
そこまでひとりで行うことも大変ですが、彼女のすごい所は、その後です。
自分で歩き続けて新聞を町民に無料配布し、タブロイド版を町内全戸約5100世帯に配っていたのです。震災から10年間に、なんと385号も発行し、ボランティアなどの助けを借りながら、仮設住宅や復興住宅などに配り続けていたのです。
震災前は、生まれ育った町に何の関心も持たず、病気や離婚を繰り返した、本人曰く「負け組の人生」だったそうです。そんな菊池さんの奮闘記です。
『わたしは「ひとり新聞社」』
https://www.akishobo.com/book/detail.html?id=1080
一般社団法人大槌新聞社