ヤマケイ社員による「山小屋の思い出vol.16」を紹介します!
vol. 41 2020-08-10 0
写真=福田 諭
小社社員はさまざまなかたちで山小屋でお世話になっています。
そんな社員による、山小屋での思い出話をご紹介します。
第16回目は、1992年入社、現在、山岳図書編集部に在籍の大畑が担当します。
雑誌の企画で山小屋のお仕事を体験したというお話、どうぞお付き合いください。
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帰りたい場所
人生初めての山小屋取材は、北アルプスのスゴ乗越小屋。『山と溪谷』の新人編集者として、山小屋の仕事を体験する、というものでした。スゴの小屋は、薬師岳と五色ヶ原を結ぶ縦走路の中程にあります。折立、室堂、どちらから入山しても、(よほどの健脚でないかぎり)スゴ乗越に届くのは2日目になるため、山慣れした人が多いのが特徴です。
1996年『山と溪谷』7月号の特集は「編集部現地発 テーマ別北アルプス」
当時の取材メモ(25年前!)が出てきました。初日、キャベツ一玉を千切りするミッションを請け負って、初っぱな指を切ったこと(山小屋の包丁はよく切れる)。やっと一玉切り終わったら、「これ、お好み焼き用!?」と総ツッコミを受けたこと(山小屋で学んだ教訓は、“料理は男性に任せるにかぎる”です。みなさん本当に器用でした)。
そんな失敗談はさておき、取材メモでいちばん驚いたのは、自分は売店で接客をしながら、立ち寄る登山者に「どちらから来て、どちらに向かうのか」を聞きまくり、それを細かく記録していたことでした。これは(記事の素になるかもという)編集的な興味だった気もしますが、当時、小屋番さんが夕方になると無線で周辺の山小屋(スゴ乗越小屋は太郎平小屋のグループです)と連絡を取り合っていたので、登山者の動向を把握しておくよう言付かっていたのかもしれません。
薬師岳の北、稜線上の樹林帯にひっそり建つスゴの小屋(赤い屋根が見えますか?)
現在では多くの山域で通信が可能になり、一般的に、山小屋が登山者の動向把握をする必要性は減っているようにも思います。とはいえ、山小屋が物言わずそっと登山者を見守ってくれている姿勢は変わらず、その存在には感謝しかありません。山小屋があるから安心して歩けるし、小屋の人の顔が思い浮かぶから、ここで事故だけは絶対に起こしちゃいけない、とよい意味での緊張感をもらいます。
2019年8月、再訪したスゴ乗越小屋。現在は、はためくタルチョが迎えてくれます
昨年、ふと思い立って、五色ヶ原から折立までを縦走しました。懐かしのスゴの小屋は25年前と同じく、いくつものピークを越えた先の樹林帯のなかにポツンと建っていました。「帰ってきた!」そんなふうに思える山小屋の存在は、本当にありがたいものです。
山岳図書編集部 大畑貴美子
『山と溪谷』『ヤマケイJOY』などを経て、現在は『ROCK&SNOW』を担当。山登りの「や」の字も知らない新人を、いきなりスゴ乗越に送り込んだ当時の編集長には頭が下がる。おかげで、以降ずっと静かな山が好み。上の写真は2019年のイタリア・アルプス。小屋泊まり縦走でしたが、山小屋で「どこから来てどこへ行くか」を聞かれることは一切なかった。お国柄の違いですかね。
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今日は山の日!山小屋エイド基金も残りあと4日です!
「より多くの山小屋に、より多くの支援と応援の声が届くように」という思いで、残りの活動を行ってまいります。今日の山の日では、改めて登山や山小屋について考える日になればと思います。引き続きの応援と拡散をよろしくお願いいたします!
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