山口洋さん(HEATWAVE)のライブ、7月に決定しました!
vol. 15 2026-03-23 0
複合文化施設、裏小樽モンパルナスについて広く、深く知っていただくためのアップデート。今回は今年7月に裏小樽モンパルナスで二度目のライブを行っていただくことが決定したHEATWAVEの山口洋さんについてです。
vol.9の鈴木惣一朗さんに関するアップデートでもご紹介しましたが、山口さんも昨年7月、私たちが開催した小樽出身の音楽評論家、長谷川博一さんの回顧展の一環として行われた音楽フェスティバル「Little Otaru」にご出演いただきました。1979年福岡で結成されたHEATWAVEは1990年、アルバム『柱』でメジャーデビュー。バンドの目論見とは異なり業界からほとんど評価されなかった(山口さん談)このアルバムを、音楽雑誌「ミュージックマガジン」の年間ベストアルバム1位に選び激賞したのが、当時気鋭の音楽ライターとしてキャリアをスタートさせたばかりの長谷川博一さんでした。長谷川さんは1991年に初の著書『Mr. OUTSIDE わたしがロックをえがく時』を出版。忌野清志郎、佐野元春、友部正人など9人のソングライターの創作の根源に迫るインタビュー集でしたが、山口さんもTHE BOOMの宮沢和史、ニューエスト・モデル(のちソウル・フラワー・ユニオン)の中川敬と並び期待の若手として紹介されています。2つ年上の長谷川さんは、山口さんにとって兄のような存在として、音楽、本、映画などの芸術や「生きること」について語り合う存在となっていきました。
2019年7月に長谷川さんが癌のため58歳という若さで亡くなった翌年、その遺志を継ぐために山口さんは親交が深かった友人たちと「ミスター・アウトサイド」というトークイベントを立ち上げましたが、コロナ禍によりやむなく中断の憂き目に。そんな強い思いを持っていらっしゃる山口さんだからこそ、七回忌を迎える2025年夏に回顧展を開催するにあたっては、ぜひとも小樽に来ていただき、長谷川さんとの思い出を語り、長谷川さんが愛した音楽をかき鳴らしてほしいと考えました。出演依頼のメールを送ったところ、即、ご快諾の返信が届きました。
2025年3月。回顧展の打合せをかねて長谷川さんの奥様を東京に訪ねました。著書や編集者として携わった本の数々、愛聴したレコードや愛読書、2本のギター、生前の写真、闘病中に残した手書きのノート、そして大量のカセットテープを見せていただきました。私は長谷川さんとは仕事を通じて20年ほどお付き合いがありましたが、ギターを弾いていたこと、曲を作っていたことは初めて知りました。80本以上あったデモテープからとりあえず十数本を小樽に持ち帰り、デジタル化した音源を参考までにと山口さんにお送りしました。
そのうちの4曲は90年代半ばに長谷川さんと山口さんが共同制作した楽曲で、山口さん自身も1曲だけしか手元に持っていませんでした。タイムカプセルのように、30年近い時を経て還ってきた音楽。ちょうどHEATWAVEが7年ぶりとなるオリジナルアルバムを制作している時期で、長谷川さんの曲をバンドでレコーディングすることで「長谷川博一のスピリットを伝える」というアイデアが動き出します。
ライブ出演で小樽に滞在した7月の二日間で、山口さんは「長谷川博一の故郷、小樽」を濃密に感じ取ってくれたようです。アルバム発売直前の12月のブログには次のように書いていらっしゃいます。
「Mr. OUTSIDE」は僕のアイ・オープナーであった音楽文筆業の故・長谷川博一さんが91年に出版した本のタイトルです。佐野元春さんにも同名の曲があります。おそらく無関係ではないと思います。
このアルバムの曲のほとんどは午前4〜7時の間に書かれました。世界が一番静かな時間です。ある時期から、その時間に、長谷川さんと会話をするようになりました。もちろん架空だけれど、僕にとってはリアルな会話。曲のことだったり、世界のことだったり。僕らは兄弟みたいにいつもボーイズチックにそんな話をしていたからです。
深刻な病に冒されてなお、彼は善きものを世界に放つことを考えていました。そのスピリットを受け継ぐ者として、彼の曲を僕が録音して歌えば、いいってことに気づいたのです。もともと、彼なきあと「Mr. OUTSIDE」というイベントを開催して、彼のスピリットを伝えていくことを考えていました。けれど、それはコロナで叶わなかったのです。ほんとうにコロナの馬鹿野郎!でも、オレはしつこい。笑。諦めない。
彼がこの世を去って7年。今年の夏、生まれ故郷の小樽で開催された彼の回顧展に呼んでもらいました。その経験が素晴らしすぎたのです。彼の功績(あんまり好きな言葉じゃないけど)が故郷の人たちに、こんな風に伝わっていたこと。知らなかった彼の故郷への想い。豊かな故郷での人間関係、エトセトラ、エトセトラ。
長谷川さんの曲が3曲、日本屈指の強靭な3ピースバンドによって新しい命を吹き込まれました。アルバムタイトルは『Mr. OUTSIDE』。ロックンロールのエッセンスが凝縮された全12曲。先人からの偉大な贈り物としての音楽に、善きものを少しでもプラスして、また次の世代へ手渡す…。そんな山口さんの真摯で誠実なメッセージが詰まっているアルバムです。そのスピリットは、築100年の建物を改修して街並み保存に寄与しながら新しい文化発信の拠点にしたいという、裏小樽モンパルナスのコンセプトと確実に共鳴するものだと思っています。だからこそ、アルバムのSpecial Thanksに裏小樽モンパルナスもクレジットしていただいたことは、本当に特別なことでした。
山口さんは今回のアルバムのために自らダイジェスト映像制作も手掛けています。ぜひご覧ください。
去年の小樽でのライブの翌日、山口さんはブログに次のように綴っています。
7月13日 日曜日 晴れ
何から書けばいいんだろう?今回、小樽に来ることは特別な経験になるとは思っていたけれど。マブダチで兄貴分の長谷川博一さんの回顧展をやるって、書けばそれだけのことだけれど、開催に至るまでにはどえらい道のりだったと思うし、オレは遠隔地からメールで参加していただけのこと。だからこそ、バイクで来るって道を選んで正解だった。旅はプロセスだから。
鈴木惣一郎さんは80年代と亡くなる直前の長谷川さんを。オレは90年代からの長谷川さんを。でも小樽の人たちは幼少の長谷川さんを知っている。小樽には藤森茂男さんという偉人がいて、その人物は長谷川さんの叔父にあたる。その一家にまつわるストーリーをここに書くことができるほどオレはまだ良く知ってはいないのだけれど、街にまつわる絵巻物を読んでいるような気持ちになった。これはドえらいことだな。1日で映画を見たような気分。そしてその偉大なスピリットがきちんと子供たちにまで受け継がれていること。
長谷川さんは生前、オレに小樽のことを語らなかった。でも七回忌にあたって、彼の胸の中にはこれだけの想いが詰まっていたんだってことを知らされた。
ずっと流れてきたけれど、オレもこれからどこに行こう。深く考えさせられた素晴らしい旅だった。終わってないけど。台風も来てるけど。でも、なるようにしかならんよ。それがいい。
頼まれてないけど、小樽にはまた来たい。真冬に人々がどんな感じで暮らしているのか体験したい。そしてなによりも、「おたる潮まつり」を体験してみたい。去年のねぷた並みのインパクトあると思うな。。。。。
なんだか、人生は素晴らしい。
それもこれも、結局は長谷川さんが繋いでくれたのだった。
関わってくれたすべての人たちにありがとう。オレは長谷川さんの曲を完成させて、また届けにきます。鈴木さんウィットがこれまた素晴らしかったのです。
山口さんは去年の約束を果たしてくれるために、また小樽に来てくれるのです。さすが、有言実行の九州男児。
※ライブの詳細は5月には発表できると思います。どうぞご期待ください。
