2023.10.16 ReguRegu個展「アナタニサマのいる街」開催中。
vol. 15 2023-10-16 0
改修後「レンタルアートスペース」としてオープンする裏小樽モンパルナスのスペースで、札幌の美術ユニット、ReguReguの個展「アナタニサマのいる街」が開催されています。
「アナタニサマ」とは、北海道のとある街に伝わる話。真冬の深夜、一人で歩いていると、街灯の下で、毛むくじゃらの小人が「アナタニ」と、一冊の本を差し出してくる。受け取ると、読むのが止まらなくなり、そのまま其所で凍死してしまう。身を守る為には、差し出された時に、「もう読みました」と答えること。すると、たちどころに消えてしまう。しかし、助かった人の多くは、生涯、嘘をついたことを後悔するという。
ReguReguの小磯卓也さんは以前からちょっとだけ知り合いだったのですが、ジーンズショップロッキも毎年参加している「おたるBookArtWeek」の中心メンバーである「洋食台処なまらや」にReguReguが作品を出展していることから再びご縁をいただきました。
昨年札幌で開催された個展「アナタニサマ」を見に行ったところ、作品の元になった短編小説の舞台が小樽だったとお聞きし「アナタニサマに小樽に帰ってきてほしい」という思いから今回の小樽での初個展が実現しました。
小説では「アナタニサマ」が真冬の小樽に出現したのは大正末期から昭和初期で、ちょうど裏小樽モンパルナスが建てられた頃。その時代の雰囲気を再現しようと小樽市総合博物館から大正14年の小樽市内地図を入手、目撃証言から出現場所を地図に特定しました。また市立小樽文学館の協力を得て当時の新聞をお借りして掲示しています。
またチラシには、総合博物館が所蔵している貴重な「兵庫コレクション」(写真家、兵庫勝人さんが1970年代に撮影した、今は消えてしまった小樽の街並みの写真群)からの写真をデザインし、当時の雰囲気の再現を試みています。
裏小樽モンパルナスには11人の「文学の妖精」が集まっています。ReguReguが制作した音楽とともに、この建物が作られた100年前にタイムスリップしたかのような感覚に捉われます。
今回の個展のチラシにはこんな言葉が書かれています。
「寒さも忘れ没頭するあまり、遂には命を落としてしまう程、面白い本はあるのです。アナタニサマに出会いながらも助かった者は皆、文学の果てしない魅力に取りつかれたのでした。」
「文学の果てしない魅力」、それは「今、ここ、自分」という枠を超えていく力そのものなのではないでしょうか。
今回の小樽での個展から、どんな「アナタニサマの物語」が始まっていくのか、楽しみでなりません。裏小樽モンパルナスでの開催は10月20日(金)、21日(土)、22日(日)の3日間。午前10時から午後6時までです。なまらや、小樽文学館でもそれぞれ一人のアナタニサマが展示されています。