バリアフリー上映実現への道(5)【最終回】
vol. 25 2022-01-19 0
「視覚障害、聴覚障害の方にも映画館でダンスを体感して欲しい」という熱い思いを、クラウドファンディングで皆様からのご支援を賜りながら始動しました。
その模様を数回に分けレポートして参りましたが、今回で最終回となります。
音声ガイド完成試写会 2022.1.12
クラウドファンディングで、皆様から多くのご支援を賜り、ありがとうございました。
犬童監督の「視覚障害、聴覚障害の方にも映画館でダンスを体感してほしい」という思いから制作に取り掛かったバリアフリー映画が完成しました。
島本須美さんの音声ガイドが入った完成した映画を、モニター会でもご協力いただいた加藤さん、杢代さんにご鑑賞いただき、感想をお聞きしました。
手前からモニターの杢代さん、加藤さん、犬童監督 音声ガイド試写の様子
■完成した映画をご覧になっての感想をお聞かせください
加藤さん:泯さんがどんな思いでダンスをしてきたのか、いろんな場所でいろんなことを考えながらダンスをしているということを感じました。
杢代さん:すごくいい映画で、映画の世界に没入できました。
■島本さんのナレーションの印象はいかがでしたか
加藤さん:ナレーションに感情の押し付けがなく、泯さんの動きに合わせて力強く読まれたり、緩急があって、場面によっては「神秘的」に感じました。
杢代さん:島本さんの落ち着いた声で、ナレーションが突出せずに映画の世界観を支えてくれているようで、自然で、とても聞きやすかったです。
■どのような方に映画を見ていただきたいですか?
加藤さん:視覚障害がある者にとってダンスはとっつきにくいですが、泯さんの動きの音も聞こえるし、音声ガイドのおかげで泯さんのダンスがわかるので、私と同じような人にも見て欲しいです。
杢代さん:ダンスだけではなく、田中泯さんの生き様、人生ドラマを見るような鑑賞の仕方もあるので、視覚障害の方にも見て欲しいと思います。
■島本さんは、ご自身も色々なロケ地に一緒に旅をしたようだと仰っていましたが、いかがでしたか?
加藤さん:フランス語が聞こえてきたり、教会の鐘の音が聞こえてきたり、特に大聖堂の反響があったり、自分もいろんなところに行けたような気分になりました。
■特に印象に残ったシーンをお聞かせください
加藤さん:泯さんがゆっくり動いて、立ち上がるオイルプールのシーンは、「神秘的」でとても印象的でした。
杢代さん:「音のないシーン」での島本さんの音声ガイドが自然で心地よくて、風景が目に浮かぶようでした。
インタビューに応じてくださった、杢代(もくだい)さん 加藤さん
バリアフリー映画完成にあたり、犬童監督にもお話を伺いました。
■完成した作品をご覧になっていかがでしたか
島本さんの音声ガイドは、クールに映像を説明するだけではなくて、島本さんの人間味やプロフェッショナリズムが伝わってきて、感情のほどよいニュアンスが配分されていて、立体的に内容を伝えることに寄与してくれました。目を閉じて音に集中して観ることで、今までとは違う体験をしたという印象です。
■島本さんを起用した理由をお聞かせください
田中泯さんのモノローグが入っている2時間の映画で横に誰がいるのがいいのか、考えました。山梨で一人で農作業をしている泯さんを客観的に見ていて、宮崎駿監督作品の登場人物にいる人のような気がしました。自然と本気で触れ合っている泯さんの姿が印象的で、泯さんの隣で音声ガイドをする声は、自然の世界を取り戻すために戦っているナウシカの声がいいと感じて、島本さんにお願いしました。
■バリアフリー映画の制作についてお聞かせください
田中泯さんがやっていることは、今の時代にとって支えであり、参考になるので、多くの方に見て欲しいと思いました。ダンスをどう伝えていくか、視覚障害のある方には難しいこともあるのですが、諦めずにちゃんとアプローチすべきだと思いました。完成したバリアフリー映画には、違う面白さが出たと思います。映画制作で、ダビング(映像に音楽や効果音、台詞を合わせる作業)作業があるのですが、映像を見ないで「音」に集中して余分なところ、やりすぎなところを確認するべきだという発見もありました。バリアフリー映画をみなさんにも是非体感して欲しいです。
インタビュー中の犬童監督
「名付けようのない踊り」バリアフリー上映に関する情報は、公式HPの劇場情報欄に掲載されます。ご確認の上、是非、劇場でご鑑賞ください。
UDCastアプリでは今週末の山梨先行公開に向け、データのダウンロードが可能となっています。アプリをインストール頂き、イヤホンを劇場へお持ちになり、音声ガイド付きでの鑑賞もお楽しみください。
【UDCast作品情報】には犬童監督のコメントも掲載中です。
UDCastアプリ画面 左)メインメニュー 中)「音声ガイド」選択時の画面 右)本作を選択した後の画面
協力:パラブラ株式会社/株式会社アウラ
取材・記事:佐藤啓(共同プロデューサー/クラウドファンディングスタッフ)