残り2日!デザイナーからのご挨拶。
vol. 4 2020-09-02 0
8月9日から9月3日まで行われていた、こちらのクラウドファンディングが間もなく終了するにあたり、ご支援いただいた皆様、そして見守ってくださった皆様に、ご挨拶を申し上げます。
今回、愛媛の重要文化財である芝居小屋・内子座がプロデゥースする服 ”uchicoza” のデザイナーを努めさせていただきました、中村理彩子です。商品をご購入いただいた皆様には心より感謝申し上げます。
また、遠く離れた東京にいる私と、愛媛県の内子町とではどんな所縁があるのかと、思われる方もいると思うので、関わらせていただいた経緯を、お話しさせていただきます。
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デザイナーとしては、衣装の素材に漆や木材を使ったり、和柄や工芸を作品に取り入れることが多く、そういった背景から岡山さんにこの企画にお誘いいただきました。
企画の岡山さんとは、共通の友人である画家の團上氏を通じて、昨年2019年の夏に、愛媛の大洲で知り合い、そうして岡山さんを通じて内子座と、内子座の「のぼり旗」と出会いました。
もともと、日本の和柄や紋様で洋服を彩ることも多い、わたしの作品の着想は、大学生時代に行った「外国人に日本の紋様や漢字で柄を作らせ、これをあしらった服」を作っていた頃だけでなく、
幼少期まで遡って、実家で祖母が茶道を教えていた頃から、着物や骨董品にみる柄が好きだったころまで、辿ることができるかもしれません。その絵柄や、紋様には、眺めていると見えてくる、物語を感じました。
外国人と漢字や和柄を使って模様を作り、これを刺繍して作ったトップス(risakonakamura, 2017)
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「これで作品を作ってほしい」と送られてきた、内子座で使われてきた「のぼり旗」を初めて見た時、4メートル近い、その長い布に描かれた、舞台上の人の躍動感、大胆な字と色彩の動きから、舞台をめぐる人の体と、感情、に思いを馳せずにはいられませんでした。わたしの背の倍以上もあるこの旗には、舞台を囲む人々の興奮を象徴するような、大きな文字と紋様が刷られています。人はどうして、舞台上の人の言葉と、その身体に魅せられるのでしょうか。そんなことを、考えさせられました。
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乾漆で作ったボディース(risakonakamura,身体展望,2018)
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舞台に上がるということは、つくづく途方もないことだな、と思います。
例えば、人は大衆を前に話すことに死よりも絶大な恐怖を感じる、という記事を読んだとき、不思議と納得がいきました。舞台で繰り広げられる演技が、そういう極限状態から発される人の感情や身体の異常な姿を、非日常として、楽しむものだとすると、その行為に魅せられる理由がわかります。
突然ですが、世間には「舞台」に立ちたいけれど、立てないと感じる人がいて、その気持ちと紙一重のところに、服をまとって別人になりたいという勇気の切望、がある気がしてなりません。服が持つ不思議な力は、普段立てない舞台に、人を引っ張り上げる力のようなものだと、少なくとも自身の日常では感じます。
同時に、わたしたちはそんな演技に尊敬と憧れの眼差しを、舞台に立つ人々に向けるとき、わたしたちは日々ひたすらに「観客」であることに疲れて、飽きて、虚しくなっている中で、この舞台の上の、役者の言葉と動きに、
言えたらどんなにか素敵であろう台詞や、
踊れたらどんなに気持ちの良いであろうかと夢見る動きを、
見せられているそのつかの間は、そに自分自身の姿や心を重ね合わせて、魂を揺すぶられているのかもしれないと、思ってしまいました。
日々、唯一、自分が主人公であるはずの、自分の日常の中でさえも「わたしはただの脇役にすぎないのかもしれない」と、そう、錯覚しないために、人は自分による、自分のための、自分自身のたつ舞台が、常に、必要なのかもしれません。幕開けが必要であり、転換が必要であり、そのためには少しだけ勇気が必要である。内子座の「のぼり旗」はまさにその大胆さと勇気を象徴し発信するものなのかもしれません。
洋服は勇気をくれる。新しい場所に踏み出す自信と、舞台で踊るような大胆さを、内子座の伝統と精神とともに、日々の生活に少しだけ、とりいれてもらえることを願って、今回は服をデザインさていただきました。
中村理彩子