【役者紹介】畑中 良太
vol. 9 2020-09-04 0
畑中 良太
1996年京都生まれ。旧・京都造形芸術大学 舞台芸術学科卒業。舞踏への興味がきっかけで、在学中にダンスを始める。在学中は主に寺田みさこ、ヤザキタケシ、山下残、余越保子らにダンスを学びながら、身体作りのために太極拳を習う。カイテイ舎、デツ禎稀、山下残等の作品に出演。
ー普段はどんな活動をしているんですか?
関西を中心に、身体を使って喋ったり動いたりする事で表現する活動をしています。要は演劇やダンスなどをしているという事なんですけど、自分はどこにもそぐわない感じがしていて、私は俳優です、ダンサーですとは言いたくないですね。強いて言うなればダンサーです。やってるジャンルはコンテンポラリーダンス、と言われているけど、その呼び方は好きじゃないです。身体の事は信じてます。
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ーそれはどういうものなんですか?
こういうのがコンテンポラリーダンスだ!という風に一言では説明しづらいですね。ただ一つ言えるのはダンスのジャンルではないという事ですね。例えばバレエだと、バーレッスンという訓練法があるし、ストリートダンスだとアイソレーションとかのような訓練法がある。ダンスのジャンルごとに、それを踊るのに最適化された訓練法があって、それによって現れる身体的特徴を、バレエっぽいとかストリートダンスっぽいとか言われるんですよね。訓練法という共通言語に対して、このダンスのジャンルはこうだと言われる傾向があると思うんです。コンテンポラリーダンスというのはそういった訓練法のような共通言語だけを前提とせずに、今この場で一から立ち上げるんです、ほとんどの場合。だから「コンテンポラリーダンスやってます」と言う振付家・ダンサーを100人集めると、ある人はバレエを踊り出し、ある人は腰を落としすり足で動き、ある人はクネクネし、ある人はひたすら喋る、というような事が起こってしまうんです。ダンスの可能性を色んな人が様々な方向に広げた結果、ジャンル分けするのが困難になったんで、とりあえずコンテンポラリーダンスという名前を付けちゃったという感じですかね。本当にちゃんと説明するには、バレエがあって、モダンダンスがあって、ポストモダンダンスがあって、という風に舞踊史を一から解説しないといけないですね…説明の仕方や内容も人によって変わってくると思います。
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ー舞台との出会いについて教えてください
高校生になって、とりあえず部活に入ろうと思って。運動部はなんか違うし、文化系の部活にしようと思いました。だけど、絵も書けないし、楽器も苦手意識あるし、という感じで消去法で選んだのが演劇部でした。演劇部の卒業生の方が書いた戯曲を演じる機会があって、その時に京都造形大出身の方や色んな人が演技を教えに来てくれはって、それがきっかけで、舞台に興味が湧いてきて、京都造形大の舞台芸術学科に入学しました。入学したばかりの時に、ある有名な舞踏家の作品を春秋座で観たんですけど、それにすごい感動しまして。ダンスとかやった事ないし全然知らないけど、なんか言葉にならなくて心臓を鷲掴みにされる感じがあって、泣いてしまって、それがきっかけでダンスに興味を持ち始めました。
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ー畑中さんはどんな想いで踊っているんですか?
難しい質問ですね。楽しいからとかやりがいを感じるとかいう感情はあまりなくて、そこに身体があるからやらざるをえないですね。僕は身体について、私の意識について何も知らないんです。現実とは何か、夢とは何か、死とは何か、自由とは何か。とにかく知らない事が多くて、それらを観念的な言葉ではなく、身体を通して了解したいんです。その後じゃないと、僕は人間として生きていけない感じがするんですよ。それをしてからでないと、僕が年とって亡くなっても、それは全部無かった事になるんですよ。身体について語ろうとするほど、言葉って分裂的で意味わかんない方向に行きますね。そういう事について光を当てる時間を望んでいます。
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ー演劇作品にはどのように取り組んでいるんですか?
演じるという事はフィクションであるという事を意識していますね。ダンスやっていると、日常生活の中にいる自分と舞台上で踊っている自分をつなげたいという衝動が出てしまうんですよ、僕は。その回路のままで、演劇やりますね。当然戯曲の時代背景とかは情報として無視しないですけど、ダンスするときの感覚で舞台に上がって、相手や観客と向かい合って、生まれてきた生の感覚を大事にして、その感触を声に乗せようとします。滑舌やイントネーションも、戯曲をもらった時になるだけ違和感なく届くよう練習しますが、そういうのは僕はかなり下手な自覚があります。なので、どれだけライブ感を強く観せられるか、身体の強度で勝負できるか、という事を考えて舞台に立ちます。アンケートとかで声がキモいとか言われる事ありますが、演技は下手だけどとてもリアルだった、と言われる事もあります。んまぁ、演劇に出た時に僕が目指してる事は、ダンス以上に手付かずのまま放置されてます、何一つできてないです。演劇に俳優として出演したい、自分なりの演技を追求してみたいという気持ちも多少ありますね。最近全然演劇してへんわ。
ー今回の公演への意気込みをお願いします。
ページ観てくださり、ありがとうございます。コロナという制約に追い詰められて出てくる特別な物があると思います。コロナで劇場閉まってて全然舞台立ててない身体、zoomを使ったオンラインの稽古、慣れない事不安な事色々ありますが、その中で凝縮されていったエッセンスが、人間座スタジオに充満するでしょう。コロナで鬱屈とした気持ちと共に、ささやかな希望の花が咲くよう頑張ります。