作品制作⑦美術(今子)
vol. 25 2023-10-13 0
みなさま
こんにちは。
三人之会美術担当の今子青佳です。
今回は本公演で美術がやりたいことをお伝えしたいと思います。
美術を含め、本公演で大事にしていることは、一言でいうと「アナログで作る」ということです。演出の奥田を始め、映像担当の田の三人、そしてスタッフたちと、このことを大事にしてきました。
できるだけ手で作る。現代でこれはなかなか難しいことではありますが、可能な限り本公演は人力で制作しています。例えば、このページの頭にある映像は映像というデジタルではありますが、CGではなく、水中に落ちていく文字をただカメラで撮影したものです。
アナログでありたいことの理由は各人違うと思いますが、私は芸術においてノイズがあることの面白さを信じているからです。これは、芸術大学に行ったものの、私が書にこだわっていることに共通します。
アナログで作ると、見た目が綺麗なものにはなりにくい。統制されていないし、ぎこちなさもある。見る人が違和感を感じる部分も出てくると思います。そして、自然と恣意的な部分が入るし、それらの重なりによって、あるいはこちらの意図に反して偶然も起きます。だからこそ、作者の意図を越えて、幅の広い作品ができると考えています。
削ぎ落としていったものには限界があると思います。どこまでなくせばそのもの足りうるのか。紙に墨で文字が書かれたものを果たして「書」と言っていいのか、とか。この定義のためにこれまでの書道家は苦しめられてきました。現代に生きる私たちがすべきなのは、今その定義を考えるよりも、それを一旦置いておいて、どこまで跳べるかだと思います。そこで私は、先人たちが削ぎ落としたもの、純化したものに、ノイズが付加した作品を制作したいと思っています。
このことだって、ジョン・ケージがやり終えたことかもしれない。かつて隆盛した前衛書道家たちが行き詰まったことの繰り返しなのかもしれない。それを一歩だけでも違うかたちで、今、展開していきたいと思っています。