中国文学・演劇との関わり③(奥田)
vol. 7 2023-08-15 0
こんばんは。
三人之会主宰の奥田です。
台風が近づいていますが皆さんご無事でしょうか。
私が住んでいる京都では不気味な雨雲が立ち込めていますが、雨足は強まったり、弱まったり気分屋です。
さて、今日は前々回のアップデートでお話しした中国・北京の国立の演劇学校(大学)、中央戯劇学院について引き続きお話します。
聞いたことがない方が大多数の学校だと思いますが、実はこの学校、日本のとある「種」の演劇と密接な関わりがあります。
一つは劇団四季。
中国や韓国出身の俳優・ダンサーが多数活躍していますが、劇団四季の創設者であった浅利慶太は中国公演にも熱心に取り組んでいました。現在の状況は分かりませんが、コロナ前は劇団の北京事務所もありました。(http://www.peoplechina.com.cn/zlk/zfwhr/202301/t20230103_800317516.html)
実は、浅利は中央戯劇学院と深いつながりを持ち、中央戯劇学院の受験に際しては、浅利が外部試験官として招かれ選考に関わっていたというぐらいですから、中国側からも名演出家・名教育者として信頼されていたのでしょう。
真相は不明ですが、中央戯劇学院と浅利とで生徒の取り合いになり、それ依頼受験に浅利を呼ぶ事はなくなった、という話を留学中に在学生・OBから聞きました。中央戯劇学院にはミュージカル専攻があり、そこの卒業生で四季に所属した人も多いのですが、四季に入る前、中央戯劇学院を受験したが結局劇団四季を選んだ人もいたとのこと(四季のファンでこの話を知っていた人もいたので、案外有名な話かもしれません)。
中央戯劇学院と縁の深いもう一つの劇団は、SCOT(Suzuki Company of Toga)。劇団四季に比べれば日本での知名度は演劇界に限られ、一般への浸透はそこまでかもしれませんが、おそらく中国(特に北京)で演劇活動をしている人間は全員聞いたことがあるのでしょう。浅利慶太との関係が薄くなってからも、鈴木忠志とは密接な関係性を築いており、実はわたしも留学中に、日本人なんだからお前はスズキメソッドについて書け!とスズハラ(スズキメソッド・ハラスメント)を受け、無理やり報告レポートを書かされました。
お読みになりたい奇特な方もいられるとおもうので、当時の文章を置いておきます。https://sites.google.com/view/sannninnkai/essay/%E5%8C%97%E4%BA%AC%E3%81%AB%E7%95%99%E5%AD%A6%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%9F%E6%99%82%E3%81%AB%E6%9B%B8%E3%81%84%E3%81%9F%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88?authuser=0
日本人全員がスズキ信者と思うなよ!と声を大にして言いたかったのですが、私が日本から来たと知った多くの学生がまず聞くひと言目は、「君は鈴木忠志を知っているか?」、二言目が「君は能を知っているか?」だったのです。
やっと大事なところまで辿り着きました!!
スタニスラフスキーシステムに基づいた演出を学ぶため中国に留学していたはずの私が、なぜ正反対に思える「前衛」や「実験」のアプローチに関心を持つようになったのか、全ての元凶が彼らのこの質問だったのです。
スズキメソッドについて聞いた事はあったものの、もちろん目にした事はなく、日本にいたときは関心を持つ事はありませんでした。ながらく田園都市線沿いに住んでいたこともあり(田園都市線のとある駅に、劇団四季の本拠地があります。私が地元で演劇を教わった先生も、実は四季のご出身でした)、身体へのアプローチよりむしろいかに戯曲を解釈し、それをどうセリフへと反映させるか、ということに重きを置いていました。その対極にあるのが、下半身を徹底的に鍛えるスズキメソッドと呼ばれる訓練法です。
まさか中国に来て、中国におけるリアリズムの聖地とも呼ぶべき学校で、そのリアリズムを打破することに生涯を捧げた演出家の名前を聞くことになるとは…!
夢にも思いませんでした。
そんな思わぬ状況に呆然とする中、もう一つの出会いが私を待っていました。
さあ、やっと師匠の(ポスター)との馴れ初めについてお話しできるところまで辿り着けました…!
続きは次回のアップデートにて。
奥田知叡