「ノーマル・ハート」からのメッセージ:2
vol. 24 2019-04-22 0
みなさま
今回の企画ですが、4年前から動いていたというのは、メールにてお伝えしたかと思います。
当初から私は、ゲイの男性――しかもできれば、若い方にご意見をいただきたいと考えていました。といいますのも、私は女であり、年齢も50近いものですから、若い人や男性の好み、日々何を感じているのかわからない。若いころ、ゲイ小説をかなり読んだとはいえ、いまの若者がまったく違う視点から『ノーマル・ハート』を見ているだろうとは容易に想像がついたからです。
そこで、白羽の矢がたったのが、ゲイのためのウェブマガジンの最大手ジェンクシーの担当の方でした。『ノーマル・ハート』のファンだという、それだけを頼りに、喫茶店で待ち合わせをし、ご多忙の彼にじっくりお話を聞かせていただきました。
お若いだけでなく、端整な美貌の持ち主で、お会いして一瞬驚いたほどです。そしていまどきの方らしく、パソコンを卓上に置き、外でも仕事をしていらっしゃいます。
彼の好み、思考、考え方、『ノーマル・ハート』への想いなどを念入りにうかがいましたが、いまも胸に深く刺さって、抜けない言葉があります。
「みんなは、ゲイをきれいごとにしたがる。でも、ゲイは善人ではないのです。ゲイは男性が好きだという部分だけが共通で、悪人から善人までいる。おたくのゲイもいれば、腐男子もいれば、リア充もいる。犯罪者から聖人から、芸術家から一介の凡人までいる。そのすべてがゲイだということをわかってほしい。そして最終的にゲイとは、男性と生きることを選択するという生き方そのものなのです」と、仰ったんですね。
もちろんそれは、言われるまでもないことです。
当たり前のことですけれど、私たちは――とりわけ私のように、ある程度年を取った人間は、どうしても「ゲイだからこうなのではないか」「ゲイだから芸術家が多い」「ゲイだからセンシティブ」「○○だから~」と決めつけがちです。
世の中にはいろいろな人がいて、その些細な差や先入観のせいで、憧れもし、嫌悪を感じもし、いがみ合ったりもします――そのいがみ合いが、ときに相手を抹殺することにも繋がっていく。ゲイ差別やナチスのユダヤ収容所もしかり。
かといって、そうやって嫌悪を感じる人々に対して(嫌悪を感じるのは自由だと仰る)、どうすればいいか、私には未だ解決していません。そして誰よりもこの私こそが、何かに嫌悪し、何かを決めつけているのだろうとも――彼の言葉でつきつけられた気がしました。
泥のなかにしか真珠はできないように、一見、自分と違う、異質の世界の一つ一つに、それぞれのなかに素晴らしいものが隠されているというのに……。
ツイッターをやっていても、リツイートしてくださる方にさまざまな方がいらっしゃるのをひしひしと感じます。洋画ファンの方を筆頭に、LGBTの方、BLファンの方、おむすび屋の店員さんまで。一概にLGBTの方と言っても、それこそ詩人から、編集者から、引きこもりから、政治家から、風俗関係の方々まで。
これだけ幅の広い方々に、私のツイッターがフォローされていることに、この『ノーマル・ハート』という作品の懐の深さというものを痛感しています。
人生の転換期になると、必ず『ノーマル・ハート』を見返すという若者――ジェンクシーさんが、執筆してくださった『ノーマル・ハート』の記事は、こちら↓になります。
【特集】10年に1度の傑作ゲイ映画『ノーマル・ハート』とは?
ぜひ、この機会を見逃さずに、みなさまにも読んでいただきたいと思います。
『ノーマル・ハート』普及委員会