シュナ鬱日記 by 岩壁男
vol. 11 2023-08-30 0
こんばんは。
映画『シュナイドマンの憂鬱』です。
本日は監督・出演の古本恭一日記をお届けします。
お話の中心となる、岩壁から飛び降りたい男(岩壁男)日記です。
…味がある直筆ですが、読みにくいかもしれませんので、普通に入力してお届けします。
ちなみに古本監督が書く台本はいつもこの手書きです。
(時々「これ何て読むんですか?」と俳優に聞かれたりしています。)
前回の日記 の続きです。
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…そして、散々ケイコしたにも関わらず、ほとんど演技プランを持てないまま、山に向かう事になった。
現地は、電車で行くには不便な場所なので、車組と電車組に分かれる事になって、車組は早朝から数カットの撮影と、危険な箇所のチェック、命綱の設置、仮設トイレの設置などの準備に追われた。
実際ガケの淵に立って、下を見下ろすと、ちょっと足がすくむ感じがしたが、「落ちてみようかな…」とも思った。
旧知の頼れる男、小林康雄(ホームレス役で出演)が、ボクのベルトに命綱を仕掛けてくれていたので、ちょっと身を投げてみた。
足元がすべって、綱をつかんだ時、康雄が息を止めて必死に綱をつかんでいるのが見えた。
何だかわからないが「あぶねぇな!」と康雄に叫ぶと、彼は泣きそうな顔をして、必死に綱をたぐり寄せようとしていた。
―その顔を見て、「やれるな…」と思った。
この役、やれる、と。
ここ数ヶ月、不機嫌に過ごし、やせて行き、悩んでいたが、この一瞬で決めた。
「芝居だよ、芝居」と声をかけたら、
「もうホント、やめてくださいよ。ホントに死ぬかと思った…」と康雄は言った。
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前々作『不完全世界』の時の古本恭一・小林康雄です。(2018年1月)