シオコレ×フリーヘルプ(中編)
vol. 33 2021-08-17 0
シオヤコレクションが今熱い方々にお話を聞く対談企画第3弾!【「チャリティーショップ」がよくわかる】シオコレ憧れの大先輩、新長田のチャリティーショップ・フリーヘルプについて「NPO法人フリーヘルプ」代表、西本精五さんにお話をうかがいました!(中編)
西本さん:フリーヘルプは12年目に入っているけど、悪いところがないんです。服を持ってきてくれる人も「ありがとう」と言ってくれて、買った人も「ご苦労さま、また買いに来るわ」とお礼を言ってくれる。それに、引きこもりの人や精神障害者までがゆっくり働けるところなんです。だから増えて欲しい。
シオコレ:精神障害者の方はどうやってフリーヘルプと出会っておられるのですか。
西本さん:フリーヘルプが関連している団体からの紹介ですね。今は主にWACCAさんから、DVなどで大きな精神的ダメージを受けてしまった方に就労準備研修として来ていただいています。部屋から出られず郵便屋さんの音に怯えておられたような、社会から孤立してしまっていた方がフリーヘルプで働いて、お客さんと話をしたり「ありがとう」と言われたりして人とかかわることで、1か月もしないうちにどんどん表情が出てきてきれいになって、それはもうびっくりするほど変わるんです。
シオコレ:それを何度も目の当たりにされてきたということですね。
西本さん:そうです。
加古川でお店をしていた時は、施設に依頼して施設外就労として知的障害の方にアイロンがけに来ていただいていました。
シオコレ:フリーヘルプのコミュニティクローゼットについても、うかがいたいです。
西本さん:困っている方に衣類を直接お渡しするためのスペースです。念願でした。2020年にコミュニティクローゼットを作るまでの11年間は、各福祉団体さんから希望をきいて、こちらで選んだお洋服をお渡ししていたのですが、どうしてもミスマッチが多すぎました。例えば身体障害者の方に選ぶとき、話だけではサイズが合わないこともあります。お洋服についた洗剤にアレルギーがある方もいます。やっぱりできることなら必要とする方に選んでいただくのが一番です。利用されるのは、WACCAさんの他に、引きこもり、精神障害者、身体障害者、ホームレスなどを支援する福祉団体、社会福祉協議会(社協)、また病院などからの紹介で来られる、シングル家庭や生活困窮者、留学生といった方々です。
シオコレ:フリーヘルプの実績と信用があるので、私たちはフリーヘルプのことをあげてチャリティーショップについて説明できますし、すでにフリーヘルプを知っている人がいることで、相当楽をさせていただいていますが、フリーヘルプを始められた時、西本さんはひとりだったわけでしょう。周りはチャリティーショップを知らないし、西本さんがやろうとしていることを本当のところ誰も何もわからない状況だった。草分けです。そんな中で地域に定着していくには最初どう工夫されたんですか?
西本さん:イギリスのモデルを完全にコピーしようと思っていたので、やろうと思ってから始めるまでに2年ぐらいかかりました。というのも古着を動かすノウハウはあったんですが、ペアレンツ団体(支援先)を探すのに、とても苦労したんです。最初の店が加古川だったので加古川の社協にも協力を得て、寄付金やお洋服提供をしたいと色んな福祉団体をまわったのですが、よくわからないところからお金を受け取れないと気持ち悪がってどこもお願いしますと言ってくれなかった(笑)。そこで大阪の西成の福祉活動団体を訪ねて行ったらようやく喜んでいただけて、立ち上げを手伝ってくれる人たちと、その団体の活動を勉強に行き前に進むことができました。開店してからは、お客さんに買っていただくたびに、これだけの額をこの団体に寄付します、という用紙にサインをしていただき、チャリティーに対しての周知を進めてリピートにつなげていきましたね。ペアレント団体がよいところだったので、どういう店かわかっていただくのもとても早く、それ以上に日本は古着が余っているので、凄くスムーズに品物が集まりました。
シオコレ:今も西成支援されていますね。西成にウエス工場(傷みや黄ばみのあるお洋服を工業用の雑巾に加工している)を作って雇用も生んでおられて。また見学に行かせてください!
それからWACCAさんと繋がって新長田にお店を出されて、この12年間で変わってきたこと変えてきたことは何ですか?
西本さん:始めた頃は寄付いただく量が少なくても、面白い服が豊富にあったので何も苦労しなかったんですが、だんだんとファッション性のある古着が減ってきたので、お客さんへのお洋服の見せ方は工夫を重ねてきましたね。それ以外、運営のノウハウなんかはそんなに変えていません。むしろ原点に立ち返る方が正しいと思っています。困っている人や障害のある人、誰にでも店を使ってほしいと思っていること。少しでも違うんじゃないかと思うことはやめてきましたね。できるだけ地球に優しいようにと、宅配の古着受付などもやめました。遠くから送っていただくのにはエネルギーが余分にかかるから。本来は各町にチャリティーショップがあってほしい。カードもお客さんに借金させることになると思うからウチの店では使えない(笑)。コロナ禍になって一昨年から去年に4割ぐらい売上がダウンしたときには、ネット販売なんかもさすがに考えたんですが、やっぱり踏みとどまりました。
シオコレ:なるほど、原点。肝に銘じます。
西本さん:そうしているうちに今年は売上も9割くらいまで回復してきています。特に今の50代60代の若い頃におしゃれを楽しんだ人たちなんかに、今のファストファッションを着る気になれなくて困っている人がたくさんいてね、デザインの凝ったものをウチで喜んで買って行かれるんです。持ち込まれる古着もどんどん増えているし、古着の流れに関しては、ここ10年ぐらいはまたブームが来ると思っています。
(後編に続く)