<製作ノート⑮>企画決定【2019年12月4日】
vol. 35 2021-11-15 0
『ブラックホールに願いを!』監督の渡邉です。
クラウドファンディングも残り30時間を切りました。正直、ここまでのご支援をいただけるとは思っておりませんでした。開始前には、もし誰も支援者がいなかったら自分で50000円くらい支援しようかと考えておりました。改めて、ご支援いただいた皆さまに感謝いたします。
製作ノートの更新も、予告公開などでだいぶ滞ってしまいました。今回ついに企画が決定します。
2020年5月に執筆した、本作で最初に描いたイメージボード。
2019年11月、『新 感染 ファイナル・エクスプレス』を見たことで企画の目指すべき方向がついに見えました。
当時、僕がなんとなく考えていたことは以下のような内容でした。
・米澤成美さんを主人公に、他人と触れ合うのが怖くて仕方ないのに他人と仲良くなりたくて仕方ない女性を魅力的に描いてみたい
・自分の原体験であると同時に、自分の強みでもある、空想特撮映画を作りたい。同時に、懐古趣味的な特撮映画ではなく、特撮映画の新しい未来を提示できるような作品を目指したい
・自主映画の予算のなかで実現しうる企画にしたい。予算がなくても面白いと感じる仕掛けを考えたい
・国際的な評価を得るために、国籍や文化に関係なく理解されうる人間の感情の機微を描きたい
・自己言及的な要素を可能な限り避け(これは最終的に破ってしまいましたが...)、何らかの素養や知識を必要とするような内容は避けたい
・星野之宣の漫画のような、作り込まれた空想科学的仕掛けと人間のドラマによる、奇を衒わない・ヘタウマでない・チープさを売りにしない物語を目指す
これらを実現しようと考えると、必然的に内容は「時間による人間の断絶」になると考えました。
そんなことを考えていた2019年12月4日、ぼんやりとお風呂に入っていると(いつもアイデアはお風呂で浮かびます。星野之宣の『レインマン』にその理由が書かれていて驚きました笑)、
ブラックホール隕石が落ちてきて、ある研究室の部屋の時間の進行が片側だけ遅くなる、というものでした。
イメージの一部にはX-メンのクイックシルバーがあったように思います。
お風呂から出て大急ぎでプロットを一気に最後まで書き上げ、現在の脚本とほとんど変わらないラストシーンまで書き上げました。伊勢田という人物もすでに登場しています。その時の仮タイトルは『輝ける者たち』でした。
当時執筆した企画書のタイトル画面
しかしなんとなく当初目指していたものとズレている気がして、五カ年計画始まって以来はじめて「ボツ案」と記しました。ですがこのまま闇に葬るのももったいないので、STUDIO MOVESの友人たちに一応見てもらいました。その後もなぜかその企画のことが気になって気になって仕方がなく、改めて読み返したところ、一部を修正すればめちゃくちゃ面白くなることに気づきました。
隕石によって街が破壊される...というのはビジュアルイメージとしてありふれていると感じたので、当時熱中していた星野之宣の『未来からのホットライン』に着想を得て、時間遅延を起こす原因は「人工ブラックホール研究所の事故」としました。
こうして、なんとも地味に企画が決まりました。企画が決まらず長いこと引っ張りまくった挙句がこんなオチで大変申し訳ないのですが、世の無数の映画たちもこのようにして企画が決まったのではないかと思います。
次回は11月1日に問題意識を感じた「日本映画界の現状」に対して、本作で自分が取り組んだ内容を紹介させていただきます。