<製作ノート⑧>『カメラを止めるな!』の衝撃【2018年8月】
vol. 21 2021-10-14 0
『ブラックホールに願いを!』監督の渡邉です。
第二次軍艦島等での撮影まで2週間を切り、個人的にかなりバタバタしていたため、ずいぶん更新が滞ってしまいました。
今回は『カメラを止めるな!』の衝撃について記そうと思います。
2018年8月、相変わらず企画は決まらず個人的につらい日々が続いておりました。映像業界への失望、映像を作ることへの忌避感も高まっておりました。もう映画なんか好きじゃないかもなあと感じ始めていました。
2018年9月3日、東京の渡邉宅にて。角洋介らと企画会議中の様子。
そんな折、インディーズ映画でありながら全国公開され絶賛されまくっていると話題の『カメラを止めるな!』を見ました。
そのときの気分はドラ12を振り込まれた鷲巣巌みたいな感じでした。
駆け巡る脳内物質っ………!
β-エンドルフィン……!
チロシン……!
エンケファリン……!
バリン…!
リジン ロイシン イソロイシン……!
衝撃としか言いようがありませんでした。
「映画のおもしろさ」を思い出させてくれました。
個人的にもっともおもしろさを感じたのは、主人公・日暮隆之の再生のドラマの面白さ、押さえつけていた映像への情熱の回復、娘との関係性の再構築、でした。
多くの人が『カメラを止めるな!』について語るとき、その奇抜な構成によって生じる、いわゆる”伏線回収”ばかりを取り沙汰する気がしますが、それは本作を歴史的傑作たらしめた最大の要因ではないと僕は考えています。
日暮隆之の力強いドラマと、それを表現するためのきめ細やかなカメラワークとカット割り、目薬や肩車などを通じて変化を描く脚本のしかけ、それらが緻密に重なり合ってはじめてできた傑作であると僕は思います。
2019年3月、池袋シネマ・ロサにて。映画『センターライン』のビラ配布時に吉見茉莉奈さんと。
そんなわけで、自分が映画を撮るときには絶対に日暮隆之、つまり濱津隆之さんにご出演いただきたいと思い、本作『ブラックホールに願いを!』へのご出演をオファーいたしました。
ご本人が本作の脚本を気に入ったことが出演を決める要因だったと聞いており、嬉しく感じております。
また『カメラを止めるな!』で僕がもっとも好きなシーンである、日暮隆之と”番組か作品か”を議論するシーンに登場した古沢真一郎、つまり大沢真一郎さんにも本作にご出演いただきました。
「作品の前に、番組なんです」のあたりは、5回劇場で見て5回とも号泣しました。
さらには主演の米澤成美さんのご紹介のもと、『カメラを止めるな!』で音楽を担当されていた永井カイルさんにも、本作の音楽をお願いすることになりました。
2021年7月22日、本作の劇中歌の収録風景。
「ゾンビに止めさせろ!」のセリフあたりは、音楽が見事に緊張感と笑いを場面にもたらしていたと感じます。
いま、本作の膨大な量の楽曲を永井さんに制作いただいております。とんでもない作業量だと思いますが、最後まで何卒よろしくお願いいたします。
『カメラを止めるな!』との出会いは、僕にインディーズ映画という界隈を認知させることになりました。インディーズ映画界隈で上映されている作品の多様さ、役者の質の高さ、何よりそれらを支持するファンたちの熱狂に、徐々に僕ものみこまれていきました。
まだまだ本作の企画は決まりませんが、次回は福岡インディペンデント映画祭での出会いや韓国・釜山での映画祭での出会いについて記したいと思います。