ビハインドストーリー その3
vol. 13 2023-11-08 0
この日は、米軍によって建てられた近代的な小屋で夜を明かした。一日の移動で腹はペコペコ、体は冷えきっていた。ガブリエルがソリに積んでいた最後の白熊肉を分けてもらい、塩茹でにしていただいた。白熊の肉は体を温めると言われ、狩りに出るときに一部の猟師たちは習慣的にその肉を食べる。深夜になってから一人小屋の外へ。白夜のはじまりかけていた極地で、色づきはじめたグラデーションに浸りながら、ソリのトレースを眺めた。先住民の狩猟にフォーカスしていた自分がこの時の遠征を始めてから、何も獲れないまま1ヶ月が経っていた。どんなに腕の立つ猟師でも、自然相手の狩猟は計画通りには進まない。でも、それでいい。