【ペルーでの贈呈報告】朝市で薬草を売るおばさんたち向け
vol. 10 2021-01-18 0
私たちが住むアンカシュ県ワラスには、朝市が2つあります。
木曜日メインのものと、土曜日メインのものです。
野菜、薬草、果物、花卉、穀物、粉類、パン、調味料、日用雑貨、
肉、魚、家畜などなんでも売っていて、地元の人でとても賑わいます。
薬草を売るおばさんたちが大勢来るのは、木曜日の市。
ワラスはワイラス渓谷に位置していますが、その渓谷周辺にある村々から、
薬草を目一杯詰め込んだ風呂敷(アンデス布)を背負って集まってきます。
ただ、こうしたおばさんたちは現金収入が少ないため、
市場内に自分専用の区画を持っていません。
そのため、早めに来て、空いているスペースに座って販売スペースを確保します。
いわゆる「もぐり」という行為ですが、
市場の警備員や、ちゃんと区画を持っている人たちは黙認しています。
主な座り込み場所はだいたい、通路脇や大きな通路の真ん中あたり(川の中洲みたい)と
なるのですが、陣取り合戦は早い者勝ち。ちょっとでも離れようなら、
他の人に奪われる危険性もあるので必死です。
村の仲間と協力して場所取りをしたりもします。
コロナ禍の緊急事態宣言下で元ある場所を追い出されても、
別の場所に移動してまた売り始めます。めげないド根性!
さて、ここでクエスチョン。
陣取りのために、彼女たちは何時に市場に来ると思いますか?
正解は、早い人で朝4時。
ワラス近くの村だと、3時30分頃には出発するようです。
5時過ぎには大体みんな、持ってきた薬草とともにどっしり座ってスタンバっています。
朝5時から6時くらいの時間帯には、マヨリスタと呼ばれる大量買いの人たちが見に来ます。
6時以降くらいからは、一般のお客さんがやってきます。
私たちはこのようなおばさんたちにフィールドガイドを贈呈するため、
朝4時30分から活動を開始しました。
田舎のおばさんたちの中には、スペイン語を理解せず、
ペルーアンデスに古来よりあるケチュア語しか話さない人たちが普通にいるので、
ケチュア語を話す友人のベロニカとディアナに協力を要請しました。
単に贈呈するだけでは意味がないので、こちらの意図を説明してから手渡しするのですが、
ひと区画ごとにまとめて話すことくらいはできるだろうという私たちの目論見は大きく外れ、
結局、ちゃんと向き合うには一人一人(多くても3人)と
直接話をしなければなりませんでした。
私(井上)は説明の補助をしながら、彼女たちに嫌がられない範囲で、ビデオ撮影をします。
さやかとベロニカ、ディアナは根気よく、聞いてくれる人たちに話を進めていきます。
『この地球上からなくなろうとしているペルー固有種がある
(おばさんたちは、薬草に関する知識を相当持っているが、
絶滅に瀕している種があることや固有種を知らない)。
多様性でバランスを保つ自然は、一種が絶滅するだけでも
環境が大きく変わる可能性をはらんでいる。
採るなとは言わないが、自然のため、自分のため、次世代のためにも
根こそぎ採らず、少し残しておいてもらえたら嬉しい』
説明ができる時間帯は、5時から6時の間。
6時以降は一般のお客さんが来て商売のやりとりが始まり
話を続けられる雰囲気ではなくなるからです。
5時から5時半くらいまではまだ相当暗く、
ライトをつけながら説明します(街灯はほとんどない)。
この日は、48部のフィールドガイドを手渡しすることができました。
薬草おばさん全員にはとても渡しきれませんでしたが、これからは市場に行くたびに、
数部程度、説明しながら渡していくことを続けていこうと思っています。
活動の様子を動画にまとめました。よろしければご覧ください。