刑務所は社会の「外側」にあるわけではない-藤井光さんからの応援コメント
vol. 12 2025-05-01 0
「第3回刑務所アート展」クラウドファンディングへ、アーティストの藤井光さんから応援コメントをいただきました。
藤井光 アーティスト
<プロフィール>
インスタレーション、映像、ワークショップなど多様なメディアを用いて、芸術、歴史、社会の間で展開する作品制作を行なう。その実践は、特定の歴史的瞬間や社会問題を出発点とし、リサーチやフィールドワークに基づいている。作品を通じて、現代および歴史上の危機や構造的暴力を考察し、それらが人間および人間以外の存在に与える影響と意味を探求する。主な展覧会歴には、東京国立近代美術館、東京都現代美術館、M+、韓国国立現代美術館(MMCA)、ポンピドゥ・センター(メッス)、Kadist(パリ)、HKW(ベルリン)などの他に、アジア・パシフィック・トリエンナーレ(2021)、アルル国際写真フェスティバル(2024)などの国際芸術祭に多数参加する。Tokyo Contemporary Art Award 2020–2022を受賞。
<応援コメント>
SNSに反戦メッセージを投稿しただけで、5年を超える禁錮刑を科される国があります。刑務所に、どのような人が、なぜ、どのようにして収容されているのかを知ることは、その社会を理解するうえで不可欠です。
半世紀も前のことですが、ミシェル・フーコーは、ジル・ドゥルーズらとともに、刑務所情報グループGIPを立ち上げました。このグループの活動によって、社会から見えなくされている受刑者たちが声をあげ、フランス国内の刑務所の実態が明らかにされていきました。
GIPの活動はさまざなな芸術実践と交差し発展していきましたが、私が尊敬していたフランスの美術大学の教師は、パリの刑務所で映画制作に取り組んでいました。受刑者たちが自らカメラを回し、塀の向こうにいる家族や恋人に「ビデオレーター」を届けるというプロジェクトです。私たち美大生に、受刑者たちの親密な「作品」を観せることは一度もありませんでしたが、私は彼の活動を通じて、芸術実践の意味を問い直すことになったのをよく覚えています。
刑務所は閉ざされた場所です。しかし、社会の「外側」にあるわけではありません。日本の受刑者の中には、家族や友人とのつながりを持たない人も多く、人間としても幾重にも閉ざされた存在となっています。「刑務所アート展」は、そうした人々の声やまなざしを知る数少ない機会です。
作品を通して表現されるのは、制度によって歪みを「整えられた」矯正の成果ではありません。思考し、感じ、迷い、そして願う一人の人間の存在です。この展覧会が、観る者と刑務所のなかの表現者にとって新たな関係の契機となり、社会の「外側」とされてきた場所について考えるきっかけとなることを願っています。
藤井さん、応援コメントありがとうございます。
5月26日まで、第3回「刑務所アート展」展示会の開催資金を集めるため、目標250万円のクラウドファンディングを実施しています。ぜひ、プロジェクトページをご覧になって、ご支援いただければ幸いです。