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カナダの離島にある野生オルカ(シャチ)研究施設「オルカラボ」のドキュメンタリーをクラウドファンディングで実現!

カナダの離島にある野生オルカ(シャチ)研究施設「オルカラボ」のドキュメンタリーを制作したい

カナダのジョンストン海峡には毎年夏サケを追ってオルカ(シャチ)が集まります。野生オルカの調査のため毎年夏に各国からボランティアがやってきます。大自然に囲まれた研究所オルカラボのドキュメンタリーを制作します

FUNDED

このプロジェクトは、2016年6月30日23:59に終了しました。

コレクター
34
現在までに集まった金額
607,200
118200円 このプロジェクトはindiegogo連動プロジェクトです。
現在までに集まった金額の内、この金額が、indiegogo経由で集まっています。
(2016年06月30日時点の為替レートにて換算)
残り日数
0

FUNDED

このプロジェクトは、2016年6月30日23:59に終了しました。

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オルカラボ・ジャパン(旧オルカラボサポートソサエティ/OSS)は、ポール・スポング博士の活動を支援する非営利の市民組織です。毎年夏、カナダ・BC州の離島を拠点に野生オルカ(シャチ)の調査ボランティアをしています。

アメリカで見つかった迷子の赤ちゃんシャチ。身元を調べ研究者はビックリ!それは…

vol. 1 2016-06-24 0

【2002年のはじめ、アメリカ・シアトル近くの海で1頭の赤ちゃんシャチが発見されました。身元を調べようとして水中マイクを沈めた研究者は腰を抜かすほどびっくりしました。それは…】


皆様、特にはじめて私たちのプロジェクトページを訪れたかたへ。


こんにちは!カナダの野生シャチ研究所「オルカラボ」ボランティア歴17年のトモコです(今年行くことができれば、18年目です)。

オルカラボ

これからお話するのはある実話です。このページを訪れる皆さまの中には


「シャチって怖そう…」
「調査って何のためにするの?」
「なぜそんなボランティアを何年も続けなくてはいけないの?1回行けば十分じゃないの?」
「そんな場所のドキュメンタリーって、おもしろいの?」

って、思われる方もいらっしゃると思います。


なので、はじめての皆さまには「スプリンガー」の話をさせていただいています。

今までにも何度も語らせていただいていますが、これほど野生のシャチの生態を知っていただける実話はありません。私たちが野生シャチの訪れる島のドキュメンタリーを撮りたい理由を、この文章で知っていただければ幸いです。



ーーーーーーーーーーーーーーー



2002年のはじめ。

アメリカ(シアトル近く)の海で1頭の幼いシャチがひとりぼっちでいるところを発見されました。



野生シャチの生態を知っている人間たちはとても心配しました。シャチは家族の絆がとても強い動物。子どもがひとりぼっちでいるなんて異常事態です。


野生のシャチは数が少ないため沿岸にすむもののほとんどが個体識別されており、研究の盛んなところでは研究者用に群れの家系図まで作られています。


研究者はいったいどこの子シャチなのか調べようとしましたが、いくら家系図をたどっても現地の群れに該当する個体は見つかりませんでした。


困り果てた研究者は水中マイクを沈めてびっくりしました。その子はアメリカではなく、遠く離れたカナダのシャチの方言をはっきり使っていたからです。


水中マイク?方言?

そうなんです。シャチは家族ごとに方言があります。



比較的海の中が静かなカナダ西海岸の北部では、シャチの鳴き声の分析がさかんに行われています。オルカラボもその調査・研究をしている場所のひとつです。



「オルカラボ」の協力も得て鳴き声を分析したところ、すぐに子シャチの身元は判明しました。



それが「スプリンガー」です。カナダ北部に住む2歳のメスでした。母親を亡くし、迷子になってアメリカまで迷い込んだものと思われました。

(野生のシャチのメスは寿命が長く、平均60歳くらいまで生きます。最長では100歳以上まで生きるものもおり、シャチの2歳も人間の2~3歳とあまり変わらない幼さであると考えられます。)



身元は判明したものの、これからどうするか人間たちはいろいろ話し合わなくてはなりませんでした。

仲間のもとに戻すとしても、果たして1年以上行方不明になっていた幼児を仲間は憶えているのだろうか。母親がいなくても、誰かが受け入れてくれるだろうか。

とても難しいプロジェクトに見えましたが、人々の気持ちは一致しました。



「せっかく身元が判明しているのだから、仲間のシャチを信じてカナダの海に連れ戻そう」



たくさんの人々がこの1頭のシャチのために固く手を結び、2002年夏、カナダとアメリカ2カ国間にわたる壮大なプロジェクトがスタートしたのです。





ひとえにシャチといってもさまざまな種類があり、その中の2種がメジャーで研究も進んでいます。

ひとつはテレビや映画の恐ろしい映像でおなじみ、アシカやほかのクジラなどのほ乳類を食べる群れ(トランジェント)です。

相手がほ乳類なので、狩りをするのも大変です。

獲物に自分たちの存在を知られないよう呼吸すら静かに移動し、とても無口です。




もうひとつが魚を食べる群れ(レジデント)です。

えさが魚なので余裕があります。年がら年中ぺちゃくちゃしゃべりながら、仲間と遊んでばかりいます。

この群れにとって仲間とコミュニケーションをとることはとても大事なため、家族ごとに多彩な方言を持つようになりました。水中マイクを沈めれば、人間にも方言が聞き分け可能です。


そんな面白い特徴を持っているレジデントですが、彼らは穏やかに泳ぎ、トランジェントがほ乳類を狩る姿のように迫力ある絵づらは見せてくれません。音まで研究すれば面白いのですが、要するにあまりテレビ映えしないのです。

あまり紹介されないのでその存在を知らない人もいると思います。



レジデントとトランジェントは見た目も少し違います。

別々の種類になってから1万年とも言われており、野生ではたとえ同じエリアを通過したとしてもお互い避けていて交流はありません。


スプリンガーは魚を食べ、よくしゃべるレジデントの群れでした。

冬の間は食べ物を求めて広い海のどこかに家族ごとに散り散りになっているレジデントの群れですが、夏になると川を上る大量のサケを食べるため、狭い海峡にたくさんのシャチがいっせいに集まってきます。

2002年7月。仲間が海峡に戻ってくるシーズンを待って、スプリンガー帰還プロジェクト開始!

現地時間7月13日午前5時。

テレビ番組の生中継、上空にはヘリという大層な環境のなかでスプリンガーは箱詰めにされて高速船に乗せられ、アメリカを出発しました。

カナダ側では、わたしたちの研究所「オルカラボ」の隣の入り江にいけすを作って到着を待ちました。


午後6時半、スプリンガー到着。

いけすに入れられ、仲間が来るのを待つ事になりました。




スプリンガーが入っていたいけす




そしてその夜、さっそく仲間がやってきました…。




スプリンガーと迎えに来た仲間が交わしたこの時の鳴き声を、わたしは忘れることができません。

迎えに来たのは、たまたまいけすの近くを通った、とても近い親戚の群れでした。

彼らはいけすのほうに近づき、スプリンガーと共通の、いちばんわかりやすい群れの方言を全員で大合唱しはじめました。Wee a wu、Wee a wuと…。



そしておそらく1年以上ぶりに身内の声を聞いたスプリンガーのほうは、同じ方言を返すかと思いきや…

普段、完璧に使える方言がまったく使えなくなってまったのです。

ただただ、相手に向かって「オウッ、オウッ、オウウッ」と何度も何度も、ほんとうに何度も…叫び続けるだけでした。




音を聞きながら待機していた私たちは、すぐにいけすの網をおろしたい衝動にかられましたが、真夜中の出来事であったためプロジェクト指揮官の判断のもと、解放は翌日に持ち越しになりました。




翌日、7月14日。

明るくなっていけすのある入り江は研究者と報道のボートでいっぱいでした。

しかしそんな中、親戚のシャチたちは再び入り江にやってきたのです。

彼らは野生のシャチで力も強いので、いけすまわりの人間を襲う事も、いけす自体を破壊しようとすることも、もしやろうと思えばできたかもしれません。

しかしこのとき、迎えに来た親戚家族…完全なる野生のシャチたちがとった行動は

「入り江の半ばまで進んで静かに止まり、全員で横一列に並んで浮かび、そのまま静止して人間の出方を待つ」

というものでした。




興奮していけすの中で跳ねるスプリンガー、静かに水面で待つ親戚たち。

このプロジェクトの指揮官である研究者がゴーサインを出し、網がおろされてスプリンガーはいけすから飛び出ました。

親族のもとへ一直線に泳いでゆくスプリンガーの姿!



わたしたちは感動で号泣しながら、仲間のもとへ消え行く小さな背びれを見送りました。

ところが…。




スプリンガーは親戚の前までくると、突然、ぴたっと止まりました。

親戚家族はスプリンガーが解放されたのを確認すると、ゆっくり方向を変え、入り江から出てゆきました。

あっち、こっちと方向を迷うそぶりを見せていたスプリンガーは、なんと親戚家族とは逆方向に進んでいってしまいました。




わたしには何が起こったのかさっぱりわからず、感動の涙も止まり大混乱しました。

スプリンガーはどうして群れの中に飛び込まなかったのだろう?




知っている海に帰って来たスプリンガー。

おそらく1年以上ぶりに聞いた、たくさんの仲間たちの声。

しかし勢い良く飛び出て親族のもとにかけつけてみれば、そこにはお母さんがいなかったのです。






シャチは人間の脳の4倍もある大きな脳みそを持っています。

大きいだけでなくしわも複雑に入り組んでおり、脳を活発に使う動物であることがわかります。

本能のみで動く動物ではなく、生きる中でこの複雑な脳を使う必要があるいうことです。

しかしその複雑な脳があったとしても、たった2歳のスプリンガーは母親がいない=死んだことを理解していなかったのかもしれません。




故郷の海に帰ったスプリンガーでしたが、その後しばらくは他のシャチに関わらないまま、シャチたちが他の群れが来そうなときに聞き耳をたてる場所「リスニングスポット」でぼつんと浮かぶ姿が目撃されました。



しかし、故郷に帰って来た以上、スプリンガーは本当のひとりぼっちにはなりませんでした。




7月15日。

ジョンストン海峡の生態保護区にすべすべした丸い石がたくさんあるビーチがあります。

Rubbing beachと呼ばれ、ジョンストン海峡のシャチたちはここの石で身体をこすり、リラックスした鳴き声をあげます。

A55という若い個体がスプリンガーに近づき、ラビングビーチに連れていきました。

そこではじめてスプリンガーはジョンストン海峡のシャチと再び交流しました。

しかし、少し時間をともにしてまた離れる、という行動を繰り返しました。




7月17日。

A36sという大きな三兄弟が、リスニングスポットで浮いていたスプリンガーと少し鳴き声を交わしました。

するとスプリンガーは彼らとともに泳ぎ始めました。

三兄弟は小さなスプリンガーを真ん中に囲って泳ぎ、他のシャチたちが集っている場所へ連れて行きました。




そのシャチたちが集っている場で出会ったのが、子供をなくしたばかりのあるメスです。

A51という個体で、魚をとってあげたり、危ないボートに近づかないようガードしたり、何も知らない人間から見るとまるで実の親子のように世話をしていました。

そうやって2週間ほど行動を共にしましたが、このメスとスプリンガーとは方言が違ったのです。





最終的にスプリンガーが行動を共にする事にした家族は、同じ方言を話す親戚の群れ、A11sという家族でした。

スプリンガー(奥)と、一緒に泳ぐ親戚のオス(手前)




スプリンガーはこの家族をとても気に入り、家族のほうもスプリンガーを迎え入れ、たくさん鮭を分け与えている様子でした。




それから月日が流れましたが、A11sの家族とスプリンガーはずっと一緒でした。




人間の手で野生に戻したけれど、現在のスプリンガーは人間に全く興味を示しません。

大自然のサイクルの中で暮らす単なる野生のシャチの1頭です。

だけどそれこそが、わたしたちが心から望んでいた事だったのです。




2013年。13歳のスプリンガーは、母になりました。

(ちなみに、平均よりほんのちょっと早いです。笑)

故郷に帰ったあの日、入り江の中まで迎えに来た親戚の群れのなかで、赤ちゃんと一緒に泳いでいます。




昨シーズン2015年、オルカラボから撮影したスプリンガー(右・背びれ)と2013年生まれのスプリンガーの子供(左からあがってきている頭)





カナダとアメリカが手を結んで、研究者、漁業局、マスコミ、先住民族、野次馬、みんなが一丸となって救ったのはたった1頭のシャチの命のはずだったけれど、これからまた1頭、また1頭と子供が生まれ、その子がまたお母さんになって子供を産んだら、わたしたちが救ったのはたった1頭じゃないかもしれない。


わたしたちは野生のシャチを研究しているけれど、野生のシャチだけを自然から切り離して研究しているわけではありません。


シャチの住む美しい海があって、シャチが食べるサケがいて、シャチに食べられなかったサケは川をのぼってクマやハクトウワシに食べられて、食べかすが木々の養分となり、木々は空気を浄化してきれいな空気の中で雨が降って…自然は全て繋がっています。


わたしはたまたまシャチだったけれど、魚の研究者だったり、鳥の研究者だったり、杉の学者だったり、いろんな専門家が手をつないで自然のことを人々に伝える架け橋になれたらいいと思います。



興味のない人から見れば、シャチの鳴き声の分析なんてものは生きる上でなんの役にもたたないもののように見えるでしょう。

しかしこの研究がなければスプリンガーの身元は判明しませんでした。



何かを救いたいと思ったとき、もしたくさんのお金があったとしても、相手のことを知らなければ救う事はできません。



同じ研究を継続し、データを取り続けるのはすごく地味だけどすごく大事なこと。



だからこそ、わたしたちが味わった感動を皆さんと共有したいのです。




電気も水道もない小さな島の研究所から、ものすごく純粋な生命の感動を届けます。

どうかこのプロジェクトにご協力お願いいたします。

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