凡天劇画会『猪の鹿お蝶』プロジェクト担当から応援コメントです
vol. 14 2022-01-27 0
今回のプロジェクトの統括を担当した國澤と申します。
締め切りまで残り5日と迫りました。150%を超えれば支援者全員への特典追加となりますので、追い風になればと筆をとった次第です。
『猪の鹿お蝶』単行本は凡天劇画会の「もし当時出ていたら」シリーズの4冊目にあたります。
このシリーズはリリース作品とモチーフとなるレーベルの組み合わせに違和感がないようこちらで決めてからデザイナーに依頼します。
2014年発行『美しき復讐』と2018年発行『おんな刺青師ルリ』が芳文社コミックスモチーフだったのは、集英社発行「明星」連載だった真樹日佐夫・影丸穣也『夜のジャガー』が芳文社コミックスで単行本化されたというケースを参考にしました。少し強引だったのは『忍法無惨伝』。年齢層高めで時代劇の新書判という部分でゴールデンコミックスモチーフでお願いしたら、抜群に良いデザインが来たのでハマり具合で押し切った感じです。
今回の『お蝶』単行本化は総集編が芸文社発行だったのでシンプルに「芸文コミックス」一択。
このコンセプトの1冊目『ブラックプロファイター・タケル』が「週刊少年ジャンプ」連載だったのでジャンプコミックスモチーフというくらいスムーズだったのですが、今回の応援コメントVol.1で植地さんも指摘しているように芸文コミックスはおおまかなフォーマットがあるだけで、カラーリングの統一感の無さも含めレーベルカラーになっている特殊な仕様です。いくつかのサンプルは提示しましたが、ほぼ丸投げに近い形でお任せすることに……。結果めちゃくちゃ芸文なカバーが出来てきて、やっぱりこの一連のシリーズは植地さんあってこそだなと確信しました(毎回、思ってます)。
とはいえ、植地さんに依頼する前に「らしさ」をどこに求めるかを自分の中で固める作業は行っています。
その試案の中には、黒田みのる『呪いの家』、平田弘史『愛憎父子挽歌』、原作:石堂淑朗/画:ミッキー・レッド『まくり狂瀾』の3タイトルだけに採用されたペーパーバック仕様にして、『愛憎父子挽歌』『まくり狂瀾』のように同デザインのカバーを巻くということも考えてました。これは数あるコミックスの中でも芸文でしか採用されていない仕様です。ボツにした理由はコスト面やマニアックに走りすぎているという理由ではなく、初期の芸文のペーパーバック仕様を『お蝶』のページ数で再現すると違和感があると感じたからです。一応そんなことも考えて紙の単行本と向き合ったので、手に持った時の感触も「中期~後期芸文」に近いものを提供できるのではないかと思っています。
芸文コミックスには一際思い入れがあります。
太田出版のQJマンガ選書『悪魔くん』(だったと思う)に挟み込まれている月報の「売ります買います」欄に、「『まくり狂瀾』3000円で売ってください」という私の投稿が載っています。インターネット普及以前ってコレクターにひっかからないものは本当に探せなかったので、言い値で買うしかありませんでした。
今では駿河屋で100円買取。カバー無しならまんだらけでも似たような感じです。
1990年初頭の絶版マンガブームの頃は、インターネット普及前でどんなコミックスが発売されているのかもはっきりしていなかったし、ヤフオクはもちろんないので古書価格は古書店主導、本当にお金を溶かすための沼でしたが、掘れば掘るだけ誰も知らないものが出てくるのではないかという空気がありました。
でもその反面、コレクターが集めているものや価値感は現在よりも画一的だったように思います。
10代でお金もなかったので既存のコレクターが買わないもので勝負するしかないと開き直って特価コーナーを漁りながら試行錯誤の末にたどり着いたのが「芸文コミックス」でした。
如何わしい色使い、知らない作品ばかりの刊行案内に痺れ、当時のパッケージも含めた「劇画」というものに惹かれました。旭丘光志『仮想敵機を撃て』読みながらこれが自分のコレクションスタイルになるかもしれないとリスト作りをはじめたころに『マンガ地獄変』の発売で確信に変わり、コレクション熱に一気に火が付きました。
それからホームページを作ったり、古本の仕事に就いたりと、現在まで本との付き合い方は変わりましたがコレクションスタイルは変わっていません。
20代前半を1960~80年代の劇画雑誌の調査に充てたおかげで自分なりにパースペクティブを掴めていたから、凡天太郎作品と深く関われたと思っていますし、そのあたりもすべて「芸文コミックス」が入り口になったおかげです。
そんな経緯もあり『マンガ地獄変』中心人物の植地さんと芸文リスペクトカバーで凡天太郎のコミックスを作るというのは感慨深いものがあります。
渾身の一冊に仕上げますので、皆様ご支援よろしくお願いいたします。