良い日本人の覚悟
vol. 64 2015-09-06 0
昨日、津森さんと本読みを兼ねて、
事務所でおはなしをしました。
津森さんは、大手印刷会社に今もお勤めで、
今回は、仕事の合間に、お休みを取って、
『ゲーテ診療所』に出演されます。
若かりし頃、といっても、もう数十年前でしょうけど、
津森さんはオーストラリアで今の会社に入社され、
その後、アメリカを中心に海外暮らしを長くされ、
最近、日本に帰って来られました。
カフエ マメヒコをマンハッタンに出店したいとボクは考えていて、
それで現地にmamehico.incを作った縁で、
同じ印刷会社の田淵くんと知り合い、
その田淵くんに、社の先輩として津森さんを紹介してもらいました。
この津森さん。
なんとも言えずに「良いヒト」なんです。
(良いなんて、失礼な言い方ですけど、ほかになんか言い様がない)
間合いとか、物腰とか、甘すぎず、辛すぎず、ちょうど良い。
たぶん、田淵くん(はボクラと似た世代)は、
津森さんが「良いヒト」なので、
ボクに紹介してくれたのだと思います。
それだけだと思います。
(ついでに言うと田淵くんもとても良い)
この津森さん、今回の『ゲーテ診療所』で、
『ツモリ製薬 社長』という大事な役を演じます。
津森「覚悟は決めました。いや、覚悟は決めましたんです」
昨日、ずっと笑いながらそうおっしゃってました。
映画に出るという非日常を受け入れることの覚悟、
恥をかいても演りきろうという覚悟、
他の人に比べると劣っているのは判っているけど演る、という覚悟。
とにかく覚悟を決めたと、何度も言うんですね。
なんかそう言う津森さんを見て、
本読みなんかどうでもよくなって止めました。
だって、もう津森さんは、いるだけで良んだもの。
「良いヒト」。
こういうのは、うまい役者の小手先芸ではできないものです。
プロの役者というのは、できることより、
できない役のほうがずっとずっと多いものです。
それはだって、役者としてしか世界を見てないんだから。
映画を見るお客は役者が見たいんじゃない。
スクリーンの向こうに広がる世界と、
自分の世界がつながっているところを確認したいわけでしょ。
そして、ボクはそういう映画やカフエを作っているわけです。
いま世界は 嫌な時代へと進んでる。
アメリカも、アジアも、ヨーロッパも、中東も、ロシアも。
もしかしたら、大きな戦争と大きな戦争の、
幕間の中休みに、ボクラはカフエを開き、映画を作り、
同時代に生きている多くのみなさんは、
ぼんやりマメヒコで珈琲を飲みながら、何かを待っているのかもしれない。
ボクはそう思うのです。
人間とは親しいヒトを傷つけても、
いくらだって正当化できる愚かなものです。
そういうときに、良い日本人の覚悟、というものに触れると、
それでも前を向いて歩こうという気になるものです。
ご本人は、そんなそんなとおっしゃるでしょうけど、
ボクは津森さんを、そう見ているのです。