認知症の母と戦争
vol. 41 2017-08-25 0
8月下旬、残暑がとっても厳しい東京です。
今年は冷夏なのかな、、、と油断していたら、酷暑が待っていました…。
さて、毎年8月は戦争の話題が多くなります。来月87歳となる宏子さんは戦争体験者です。
戦後70年以上をを経てもなお、当時の記憶は宏子さんの「記憶の壺」にしっかりと留められています。特に昨年8月はTV番組の戦争特集がきっかけとなり、宏子さんをパニックが襲いました。真っ暗な場所が「防空壕」のように感じられ、就寝時に部屋の電気が消せなくなり、不安から昼夜問わずトイレ通いもが頻繁になりました。
そんな昨年の宏子さんの様子を目の当たりにしていた関口監督は、不安と好奇心の入り混じった気持ちで今年の8月を迎えたのですが、拍子抜けするほどに、今年はパニックが全く起きませんでした。
今年の宏子さんもTVをそれなりに見ていたそうですが、1年でどうしてこんなに違うのか?
はっきりとした答えはありませんが、関口監督は「毎アル ザ・ファイナル」の撮影時に、イギリスのヒューゴ先生から「昨年、戦争の記憶に苦しんだとしても、今年も苦しむとは限らない」と言わたそうです。それを受け、関口監督は「今年苦しまなかったからといって、来年も大丈夫とは限らない」と気持ちは早くも来年に向かったようです(笑)。
また、関口監督によると、8月のパニックとは別に、宏子さんとの日々の暮らしの中で「戦争」を意識することがあるそうです。それが、宏子さんが長年苦しんでいる「便秘」です。
幼少期から思春期にかけ、いつ空襲警報が発令して、防空壕に行くことになるかわからない状況にあった宏子さんは、意識的に水分補給を控えていたと言います。そのことが宏子さんの便秘症のきっかけの大きな一つでは、と関口監督は考えています。
長年の便秘が直腸脱を引き起こし、今、宏子さんは尿意や便意が感じにくくなっています。プライドの高い宏子さんにとって、排泄に関するケアを受け入れるにはまだまだ抵抗があるようですが、最近少しずつ、関口監督に直腸脱の手当てを任せてくれています。その度に、関口監督は直腸に向かって「ごめんね、こんなになるまで気がつかないで」と話しかけながら、綺麗にしているそうです。「ケアする側が自らも楽しんだり、当たり前のこととして接する」ことが大事なんですね。
なお、宏子さんの戦争体験については動画も撮影しているようですので、いつかみなさんにご紹介できればと思います。こちらもお楽しみに!