メッセージの紹介 vol.2
vol. 8 2021-02-18 0
先日こんな質問をいただき、回答いたしました!
質問:島にはマゲシカ(馬毛鹿)が生息しているそうですが、現在の頭数とか、その保護はどうなっているのでしょうか?
お返事:自分は専門家ではないですが、自分が知る情報から回答いたします。
環境省によるレッドでデータブックでは、マゲシカが「ニホンジカ馬毛島地域個体群」として、「絶滅の恐れのある地域個体群(LP)」に登録されています。
そして、その概要は、「孤立した地域個体群で、絶滅のおそれが高いもの」ということになります。(参照:http://jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=01080020157
推定生息頭数については、僕(貴志)が参加した2007年の調査で約390頭、2011年7月に行われた最後の調査では約280頭ということです。2000年ごろからの10年で、約半数に減ったということでした。(参照 https://www.mageshima.net/2011/08/20110728.html#li...
しかし、保護や管理における対策事業については、全くなされておりません。基本的に、絶滅危惧種であれば、保護の対象となります。しかし、残念ながらマゲシカの場合は、過去の地権者が島への立ち入りを許さず、正確な頭数調査ができなかった為、「絶滅のおそれが高い」のまま、絶滅危惧種に認定されない状態にあります。マゲシカが絶滅の恐れが高い、非常に貴重な個体群であることが判っていながら、それ以上のアクションを起こせずにいると言えるでしょう。
防衛省による住民向けの説明会で、市民よりマゲシカに関する質問もなされました。防衛省の回答によると、今後は島のほとんどの土地を軍事施設化し、森林は一部(広さは不明)を残して伐採されるとのことです。滑走路建設の為、唯一の低山も削り取られるとのことでした。防衛省は、一部の森を残すことで、島の環境保全を図るとしています。しかし、馬毛島は、たった8平方キロメートルの小さな島でありながら、そこに複雑かつ多様な生態系が展開されていました。その生態系の全てが、残存する森林に集中するのです。現存するシカも密集し、食圧も異常に高まることから、その森林の維持すら危ぶまれます。それでなくとも、元がユニークかつデリケートな環境にあった以上、環境の縮小による保全など、元より不可能な話でしょう。そもそも、過去にしっかりとした調査がなされていないことから、保全をしようにも基準となるデータが不足しています。
また、戦闘機を使用しての演習が行われるのですから、各施設間にはシカの侵入防止対策がなされます。特に滑走路への侵入は事故に直結する為、当然ながら、長いフェンスが張られることになります。それでなくとも乱開発で餌が不足しているところに、移動や往来ができなくなる為、マゲシカの生存には大きなダメージとなるでしょう。
更に、演習は夜中の3時まで行われ、戦闘機の離発着は昼夜を問わない状態に陥ります。爆音と衝撃波により、シカがパニックを起こすことは容易に予測され、骨折などによる致命傷を負うことは避けられません。基地化がなされたなら、マゲシカの未来は限りなく暗いと言えるでしょう。
また、マゲシカのみならず、これから基地にしようとしている土地には、他にも貴重な動植物が生息しているとされます。しかし、違法な乱開発が行われたことから、現在も残存しているかどうかが危ぶまれます。そこに追い打ちをかけるように、全面的な基地化がなされるわけですから、これ以上ないダメージを与えることになるでしょう。
馬毛島に暮らすマゲシカをモチーフにしたデザイン