【ルンタWEB通信014】娼婦街から逃げ出したカビタ(23歳)
vol. 17 2018-06-08 0
ルンタプロジェクト代表:中原一博
今週初め、ルンタプロジェクトの人身売買被害者レスキュー・職業訓練プログラムの成果として、最近インド から救出されたという4人にインタビューすることができた。今回は その中から私も潜入したことのあるデリーの有名な娼婦街「GB Road」から自力で脱出することに成功した女性の話を紹介しようと思う。他の3人もそれぞれ囚われの身を味わっており、運良く外部と連絡することができ、ルンタのカウンターパートであるシャクティ・サムハの介入により、無事ネパールまで帰ることができたという女性たちである。みんな再び自由となった喜びを語ってくれた。
カビタ・タマン(仮名)23歳
現在カビタさんはシャクティ・ミランのシンドパルチョーク支部でカウンセリングの仕事を行なっている。体格もよく言葉もはっきりしていてしっかりとした女性に見える。彼女はヌアコット郡というシンドパルチョーク郡の次に人身売買被害の多い地域の出身である。また、この二つの郡は3年前の大地震でもっとも大きな被害を被った地域もある。
家族は山間部の貧しい村で農業を営むタマン族であった。父母と兄弟3人、自分を含め姉妹2人の7人家族。貧しくとも勉強の好きな彼女は12クラス(高校3年生)まで学校に通うことができていたという。しかし、カビタが12クラスの時、父親が病気で亡くなって生活は苦しくなり、彼女も学校をやめ、村や周辺で雇われ仕事をするようになった。
家にテレビはなく、ラジオがカビタの唯一の楽しみだった。21歳になったころ、いつも聞いているラジオの 交流サイトに彼女も電話番号を知らせていた。そしてある知らない男性から電話がかかってくるようになった。しつこくかかってきた。最初は疑いもあり、いやだったが、そのうち心を開き、恋情さえ感じるようになっていったという。
彼氏はダージリンの出身だといい、ヒンディー語もよく話せた。ある時「インドへ遊びに行こう」と誘われた。戸惑ったものの、母親には嘘を言い、家を出て彼氏とインドへ行くことを決心した。しかし、途中から最初、東にあるダージリンに行くと言っていたのに、どうも道が違うと思い始めていた。「妹がいるデリーに最初行くんだよ」と言われ、到着したところはデリーだった。妹夫婦の家というところに泊まった。外は危ないからと言われ、勝手な外出はさせてもらえなかった。ガードマンがいる家だった。
しばらくして、ネパールから来た妹だと紹介された1人の少女が家に来た。そして、その少女から驚くべきことを聞かされた。「 自分は娼婦街で娼婦として働かされている。奴隷のように客を取らされる。殴られる。あんたもきっとそうなる。早く逃げた方がいい。自分は今、店に警察の手入れがあるだろうということでここに隠されているのよ」というのだ。カビタはそれを聞いて驚き、最初は信じられなかったが、彼氏や家族の様子もおかしいと思い始めていたところだったので、あり得ると思い、不安になり、泣いた。
どうしようかと迷っているうちに数日後、外出しようと言われ、連れて行かれたところはもう逃げられない店の中だった。店のオーナーであるネパール人女性から「お前は売られた。もう逃げられない。言われる通りにするしかない」と告げられた。
逆らえば殴られるとわかり、カビタは辛さを我慢しできるだけ言われるままに動いた。最初から「絶対に逃げてやる」と決めていたという。1階以外ビル全体がそのための店ばかりだった。その店は最上階の5階にあった。下に行く階段は一つしかなく、いつも見張りがいた。夜は重い鉄格子のドアに大きな鍵がかけられていた。
その店には10人のインド人女性と5人のネパール人女性が同じような境遇の元で働かされていた。そのうちの1人のネパール人と親しくなった。彼女も騙されて売られたのだった。彼女も逃げることを考えており、「できる」というのだった。その店のマネージャーはネパール人の男だったが、彼が外へ通じるドアの鍵を持っており、彼はその彼女に好意的で、鍵を渡すことにより逃してもいいと思っているというのだ。
カビタは自分も一緒に逃げたいと申し出た。それから2人で客からのチップを集め800ルピーほどを隠した。そのころ、ネパール人で優しそうな客がいた。「逃げたい」と話すと、彼は「助けてもいい」と応じてくれた。彼に頼んで合鍵を作ってもらった。
店に囚われ2週間後、みんなが寝ている早朝5時に実行した。暗い階段を下まで降りる間、心臓が張り裂けそうに緊張したという。1階の鉄のドアは用意していた鍵で確かに開けることができた。外に出ると申し合わせていた彼が待っていてくれた。車であるホテルに着いた。逃げることができた、助かったのだ、という思いが沸き起こり、喜び安堵することができた。
彼が友人からシャクティ・サムハのことを聞いていたらしく、ホテルからネパールのシャクティ・サムハに連絡した。サムハの助けでネパールに無事帰ることができ、自分を売った男を警察に訴えることもできたという。
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ルンタプロジェクトの開催イベント「涙を力に!」
6月22日(吉祥寺、まめ蔵)23日(曙橋、タシデレレストラン)、24日(大阪、スノーライオン)
ネパールの人身売買被害者やHIV/AIDS女性と子供のシェルター「ルンタナーサリー」を建設中のNPO法人「ルンタプロジェクト」。協力を募るクラウドファンディングの期間も、残りわずかとなりました。そこで代表の中原一博が緊急帰国、現地の様子を報告します。 またヒマラヤに自生する天然の草木で染めたパシュミナストールやふんどし、被害女性たちが手作りしたイラクサマフラーなどの即売会も開催。ルンタWEBショップでも販売中の商品は、自立支援の柱なのです。 クラウドで協力してくれた方も、これから応援したい方も、ルンタプロジェクトのイベント「涙をチカラに!」に参加し、一緒に盛り上げてください。
6月22日(金)19:00~21:00
場所:まめ蔵(吉祥寺のカレーの名店)
会費:2,000円(まめ蔵カレー + 1ドリンク付き)
予約先着順25名
トーク:中原一博+作家の渡辺一枝さん
まめ蔵 (吉祥寺駅北口 徒歩6分)
クラウドファンディングのリターン商品「椌椌風おとぼけ観音」を提供してくださった作家の南椌椌さんのお店です。
→予約はこちら
https://www.lung-ta.com/events/leiwochikarani-runtanoibento-6-22-ji-xiang-si
6月23日(土) 18:00~20:00
場所:タシデレ(東京唯一のチベット料理専門店)
参加費 2,000円(チベット料理+ソフトドリンク付き)
予約先着順(28名)
タシデレ(都営新宿線曙橋駅から徒歩3分)
チベットやネパール好きが集まる話題のチベット料理レストラン
→予約はこちら
https://www.lung-ta.com/events/leiwochikarani-runtanoibento-6-23-shu-qiao
6月24日(日)14:30~16:30
場所:スノーライオンレストラン
会費:¥1000(ワンドリンク付)
予約の必要はありません(定員30名)
受付開始 14:00
トーク 14:30~16:30
料金 ¥1000(ワンドリンク付)
スノーライオンレストラン(大阪のチベット・ネパール料理といえばココ)
四つ橋線「四ツ橋駅」より 徒歩5分