Convertible Lens Systemの歴史
vol. 18 2017-06-08 0
先日追加した新しいフロントレンズ15mmのワイドアングルレンズNaiadも大好評をいただいているNeptune Lensのプロジェクト。いよいよプロジェクトも佳境です。
今回はNeptune Lensにも採用されているConvertible Lens Systemの技術と歴史についてご紹介します。
Convertible Lens Systemの歴史
今日は発明家でありパイオニアであったチャールズ・シュヴァリエが考案し、写真界に革命を与えた輝かしいアイディア 「Convertible Lens System(可変焦点レンズシステム)」 の歴史をご案内致します!
可変焦点レンズとは?
可変焦点レンズは2つ以上のガラスエレメントを交換することで、複数の焦点距離を利用可能なレンズのことでこのアイディアは19世紀後半に出現しました。これらのレンズは主にアマチュアカメラマンが折りたたみ式カメラで撮影する際に、より汎用性を広げるために利用していました。当時の可変焦点レンズには様々なバリエーションがあり、一番人気が高かったのは一組のレンズチューブで構成されたもので、チューブの一方は背面の絞り/シャッターユニットに、もう一方は前方に繋がっていて、それらを組み合わせカメラの蛇腹を拡張して使うものでした。
では、どのようにしてそのような機材が誕生したのでしょうか?その挑戦はレンズに情熱を捧げた一人の男、Charles Chevalierによってはじまりました。
Charles Chevalier:可変焦点レンズの発案者
可変焦点レンズのコンセプトは19世紀に行われた、とあるコンテストのなかで誕生しました。1840年の春、フランスでは Société d'Encouragements pour l'Industrie Nationale(国民産業奨励協会) によって「写真芸術における有意義な発展を奨励する」コンペティションが開かれました。最優秀賞に選ばれた発明・アイディアには賞金とメダルが贈られ、その受賞者は「芸術写真の有意義な発展のために挑戦する勇敢な者である」とされました。コンテストの募集はその年の終わりまで続きました。
フランスのレンズ職人であり眼科医であった Charles Chevalier はコンテストに出場するためのレンズの開発に取り掛かり始めました。彼は2つの無色とセメントのダブレットをそれぞれ前面の固定式絞りに取り付けられるレンズに挑戦していました。絞り値はf/10で、彼がオリジナルで作った風景撮影用レンズのf/14よりも大きい値でした。これが彼が最初にコンテストに応募したレンズです。
2度目の応募作品では彼はレンズをさらに改良しました。交換可能な鏡筒部分を追加して、セメントのダブレットの間の距離を長くしたのです。絞り値はf/5.2に改善され、焦点距離はポートレート写真に適した距離まで短くなりました。鏡筒を交換するだけで風景撮影用レンズをポートレート撮影用レンズに変換できるこのレンズの性質は、写真界における始めての可変焦点レンズの誕生であり、 "Photographe à Verres Combinés" と名づけられました。もしくは、「二重のレンズ、組み合わせたガラス」を意味する "L'Objectif Double ou à Verres Combinés" としても知られています。
Chevalierはこのレンズを1840年の1月1日に協会に発表し、ライバルであったPetzvalレンズのVoigtländerを制し最優秀賞とプラチナメダルを獲得しました。
Chevalierから引き継がれた可変焦点レンズシステムの伝統
コンテストにおいて最優秀賞を獲得後、Chevalierの可変焦点アートレンズシステムはさらに改良され始めました。19世紀の終わりには、多くのレンズ職人がChevalierのシステムを探求し挑戦を重ねていました。そのなかには、1855年3月7日に Objectif Double à Cône Centralisateur (円錐型二重レンズ) で特許を取得した Jean Theodor Jamin もいました。JaminはChevalierの可変焦点レンズのアイディアを応用し、Petzvalの光学設計と組み合わせたのです。
職人のなかにはZeiss ProtarシリーズVIIや Ross Combinable、Goerz Pantarのようにそれぞれレンズの半分を独立して使用するような対称型レンズをデザインする者もいました。1950年代には35㎜一眼レフカメラ用に可変焦点レンズシステムを採用したContaflexが誕生し、さらに1970年代になるとCanon EXEEやEX Autoなどが登場しました。現代の可変焦点レンズは3~4以上のエレメントで構成されるものが多く、単焦点もしくはズームレンズの代わりに二重焦点レンズを利用するものもあります。
レンズを写真に利用した例でいえば、可変焦点レンズシステムを使ったもっとも有名な写真家はAnsel Adamsでしょう。彼の 『Moonrise』、『Clearing Winter Storm』、『Aspens』、『Mount Williamson』 等の作品はすべてCookeシリーズXVの三段階可変焦点レンズを使って撮影されました。 当時も現在も、多くの写真家は古い可変焦点レンズは密着プリント用のネガを作る際に互換性があると考えています。
いかがだったでしょうか。
Neptune Lensに隠された歴史と、それをNeptune Lensに落とし込もうとした職人の葛藤が少しは伝わったでしょうか。
実際にNeptune Lensをお試しいただける撮影会も、まだ参加者を募集中。
撮影会の詳細や、参加方法はこちらから確認できます。
-日時:2017年6月12日(月) 19:00-21:00
-場所: Arts Chiyoda 3331 ラウンジ内
-募集人数:15名程度
-参加費:無料
プロジェクト終了まであと6日。最後までみなさまの熱い支援をお待ちしております !
ロモグラフィージャパン
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