言葉の宇宙船—わたしたちの本のつくり方「小さな発信基地をつくろう」レポート
vol. 3 2016-07-18 0
7月8日(金)19:00〜21:30
スクリーンに投影されたのは名刺サイズの 四枚のカード。その裏には、今回のテーマである「小さな発信基地をつくろう」について、議論を深めるために設定されたキーワードがそれぞれこっそりと記されていました。
芹沢と港は、一枚また一枚とカードをひっくり返しながら、言葉を積み重ねていきます。偶然性。はたまたチャンスオペレーション。カードがめくられ、「分配」「リーディンググループ」「読者」「組織」という言葉が現れるたびに、少しずつ、わたしたちの発信基地の輪郭が浮かび上がってきました。
4つのキーワードは、どれも直接的に本のつくり方に関連するものではありませんが、私たちのプロジェクトでは本の「外縁」と呼ばれ、内容と同じく大事にしている観点です。本プロジェクトで私たちがつくるのは、一冊の本です。ただその一冊の届く先や読まれ方、本を介した人々のつながり、また本をつくる人々の生き方など、本やつくり手が生息する「生態系」にも、同時に関わっていきたいと思い、選ばれたキーワードです。
「分配」では、流通などの「配」ることと同時に「分」けること、一冊の本を共に読むことの可能性、一冊の本を共有する身体性やそこで生まれる関係性など、「社会的なツール」としての本の側面が浮かび上がってきました。
「リーディンググループ」とは読書会ですが、海外のキュレーターやプロデューサーたちは知識を共有するだけでなく、その上で何か新たなものや活動を生み出すためのプラットフォームとして、積極的に取り組んでいるようです。
「読者」では、不特定多数の読者ではなく、一冊の本が、いつ、どのような場所で読まれているのかについて話が交わされました。内容が同じでも、読まれる環境によって、読書の体験は異なる。100冊あれば、100種類の本になる可能性を秘めています。
「組織」では、映画のプロジェクトチームやパンクバンド、多様な職能をもった人々が集うコレクティブなど、生産のためにこれまで発明された様々な組織形態を参照しながら、私たちの理想とする小型の流動的な組織形態について語り合いました。
「本」が社会的な物質であるからこそ、本を巡る対話は、たびたび社会的な話題に飛びます。たとえば、直近の選挙でイギリスの離脱が決まったEUの話題。同じように、本を巡る組織論や方法論は、福祉やケアの現場や小商いの現場など、別の分野に転用できるツールとなるのではないかなど。こうして、本という形態を通じて、一つの社会的なツールをつくって行こうという、最終目標がうっすらと見えてきました。
カードをめくりながらの対話は予想しなかった場所に辿り着き、互いの言葉に触発されて「いま、こここ」で何かが生成していくような感覚がありました。
次は非公開ですが、具体的にどのような本をつくるか、編集会議を開催します。この内容もプロジェクトブックに収録します。
今回は、多くの方にお会いできてよかったです。本プロジェクトに対する期待を感じました。しかし、まだまだ多くの方の協力が必要です。みなさんのまわりにご興味を持ちそうな方がいらっしゃいましたら、ぜひお声がけをお願いいたします!
坂田太郎(P3 art and environment)